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【25周年企画】KnKと私(10) -マネージング・ディレクター/広報 清水 匡-

国境なき子どもたち設立25周年を記念して、関係者のインタビューを連載します。

KnKと私(10) -マネージング・ディレクター/広報 清水 匡-

「あの時楽しかったね」「またプールに連れて行ってね」など、一緒に過ごした時間を思い返してくれるとき“自分は彼らの人生の1ページに加えてもらったんだな”と嬉しくなります。

– 前職とKnK入職のきっかけ、理由を教えてください。

映像制作会社を経て国境なき医師団(MSF)日本の映像班で働くことになりました。MSFではアフリカなどの活動地も取材しましたが、日本の子どもを海外に派遣するレポーターのプロジェクトにカメラマンとして同行したことがKnKに関わるきっかけです。MSFはノーベル平和賞の受賞後、世界的に有名になりましたが、組織が大きくなるほど働いていてワクワク感が薄れていきました。

ちょうどその頃、映像班はKnKと事務所のフロアーをシェアしており、KnKスタッフが現地の子どもたちの話をしているのを耳にして「温かさ」を感じました。医療を必要とする人々に手を差し伸べることも大きなやりがいですが、教育の機会や保護を必要とする子どもたちを家族のようにサポートする方が、より自分らしいと思ったのです。
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– 通常、どのような業務を行っていますか?

東京事務局をベースに、主に広報としてニュースレターやパンフレットなどの制作や写真展やイベントの企画運営に加えて、各国の活動地での取材やモニタリング、友情のレポーター、そしてマネージング・ディレクターとして組織の運営にも携わっています。他にも事務所のPCやネットワーク管理、理事も務めています。
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– 業務をする上で大切にしていることは何ですか?

業務を超えて「伝えること」が自分の使命だと思っています。KnKに携わるきっかけになったのが(友情の)レポーターでした。子どもに人を助ける力はなくても「知ること」はできます。私にも人を助ける力はありませんが「伝えること」はできます。活動の現場では子どもたちの厳しい現状や美しい姿などを目の当たりにして心が動かされることがよくあります。それを自分一人だけの心にしまっておいてはいけない。現地で見てきたことには責任が伴います。現場の目撃者・証言者として、これからも日本の皆さまに「伝えて」いきます。

スマトラの津波で被災したインドの子どもたちと(2005)

ヨルダンとイラク難民の子どもたちを対象にしたビデオワークショップ(2008)

写真展のオープニングレセプションで挨拶する清水(左)と創設者ドミニク・レギュイエ(2018)

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– これまで最も困難だったエピソードを教えてください。

当初「若者の家」は3ヵ国で、他の施設から紹介された15歳以上の青少年を受け入れていました。フィリピンチームは路上で暮らす青少年を直接保護して「若者の家」に受け入れており、さらに幼い子どもも保護すべきと考え、別途「友情の家」も設立しました。しかしある年、KnKの財政が厳しくプロジェクトの縮小を余儀なくされました。まず対象になったのがフィリピンの「若者の家」でした(※)。幼い子どもたちを路上に戻すことはできないため「友情の家」は残すという判断です。「友情の家」もさらに安価な物件に移すため受け入れ人数を減らす必要がありました。現場では、他のNGOや家族の元へ戻すための調整を必死に行いました。過去に家族から見放された経験を持つ子どもがようやく安心できる家ができたのに「また追い出される」と大泣きしました。現地スタッフの必死の訴えも東京事務局ではどうすることもできませんでした。その後も引っ越しをする度に「追い出される!」と子どもたちは泣き叫びました。子どもたちを裏切り傷つけてしまった…。

心を鬼にしながらも必死に子どもたちを守った現地スタッフへの感謝と敬意、日本からお金を送ってあげられなかった悔しさ、そして、子どもたちの悲痛な叫び声は今でも忘れることはありません。

(※: フィリピンの「友情の家」は2004年9月に「若者の家」に統合され、「若者の家」は存続して現在に至ります。)

フィリピンの若手スタッフたちと(2012)

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– これまで最も嬉しかったエピソードを教えてください。

たくさんあって書ききれませんが、子どもたちの結婚式、卒業式、生まれた子どもに会ったりするのはこの仕事の特典かもしれません。ずいぶん昔になりますが、元ストリートチルドレンで犯罪に巻き込まれ刑務所に収監されていたマイケル(仮名)という青年がいました。彼は「若者の家」で保護され学校に通うことができました。才能があり事務所のコンピューターなどを修理することもできました。マイケルはITの専門学校に進学し無事に卒業しました。「僕の卒業式に来て」とマイケルが言いました。彼が卒業証書を手にしたときはとても誇らしかったことを覚えています。

それから数年が経ち、マイケルはたまに「若者の家」に遊びに来てくれます。そのとき「クヤKyo(匡兄さん)はあの時、卒業式に来てくれたよね。本当にうれしかったんだ。ありがとう」と言ってくれました。

「あの時楽しかったね」「またプールに連れて行ってね」など、一緒に過ごした時間を思い返してくれるとき“自分は彼らの人生の1ページに加えてもらったんだな”と嬉しくなります。

カンボジアの若者の家で祝ってもらったサプライズバースデーは、なんとケーキがカメラのデザイン!(2018)

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– 休みの日(OR仕事をしていない時)は何をして過ごしていますか?

独身の頃はよく映画を観に行っていました。今では子どもを遊びに連れて行ったり家事をしたりしています。サザエさんの波平じゃありませんが、庭いじりは貴重な自分の時間です。そうそう、最近、犬が家族の仲間入りをしました。

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– 今後、KnKの活動を通じてご自身が取り組みたいことを教えてください。

先日、元友情のレポ-タ-と会う機会がありました。彼女は現在、日本で青少年の自立支援に携わっていて、話を聞けば聞くほどKnKの「若者の家」が思い浮かびました。「知ってしまった」のです。近い将来、彼女が働く自立支援団体とKnKと協働で何かできないかなぁと考えています。

歴代の友情のレポーターやスタッフたちと(2017)

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– KnKが各地の苦境にある子どもたちと共にあるためには、新たな仲間が必要です。彼らに向けたメッセージをお願いします。

KnKは活動を通じて、長期的に子どもたちと共に時間を過ごしています。彼らの成長の様子を垣間見れるのは、とても楽しいものです。そして子どもたちの生き様から多くを学ぶこともできます。子どもたちと共に成長していきましょう。

認定NPO法人国境なき子どもたち(KnK)
マネージング・ディレクター/広報 清水 匡

新たなマンスリーサポーター25名を募集

これからも教育機会を提供することで、各地の子どもたちが主体的に生き、自己決定ができる人生を歩めますよう、25周年を記念して新たなマンスリーサポーターを25名募集します。
(募集期間:2022/9/1~12/31)

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