活動ニュース

【25周年企画】KnKと私(11) -フィリピン、パレスチナ事業担当 久野 由里子-

国境なき子どもたち設立25周年を記念して、関係者のインタビューを連載します。

KnKと私(11) -フィリピン、パレスチナ事業担当 久野 由里子-

「もう一度学校に行きたい」と話してくれ、笑顔を見せてくれたときに、「ああ、このために仕事をしてるんだな」と思いました。

– 前職とKnK入職のきっかけ、理由を教えてください。

KnKに入職する前は、高齢で路上生活をされている方々が生活するマンションを経営する会社に2年ほど勤めていました。KnKについては、実は入職前は名前も聞いたことがなく、転職活動の中で知りました。ご縁あり、2010年に入職、最初の1年間はフィリピンに駐在、東日本大震災後、岩手県に1年間駐在し、2012年7月からは東京事務局に異動しました。

フィリピン駐在時代、パヤタスのセンターにて(2010)

.

– 通常、どのような業務を行っていますか?

今はフィリピン、パレスチナ事業を担当しています。現地のスタッフや派遣員とコミュニケーションをとりながら、事業の方向性を考えたり、進捗を確認したり、申請書、報告書の作成、予算管理などを担っています。新型ウイルス感染拡大前は年に4~6回ほど出張に行っていました。2020年に入り、しばらく出張には行けませんでしたが、2021年は5ヵ月弱パレスチナに、2022年は4ヵ月半ほどカンボジアに駐在し、先月には約3年ぶりにフィリピンにも出張に行くことができました。
担当国の予算管理に加え、KnK全体の予算・資金管理もしており、安定した団体運営ができるよう、2、3年先までの財政シミュレーションをすることもあります。

.

– 業務をする上で大切にしていることは何ですか?

フィリピンのスタッフ、子ども、保護者を交えた話し合い(2014)

いくつかありますが、一つは「Do No Harm」、我々の活動によって子どもたち、地域の方々に害を及ぼさない、ということです。何らか、子どもの権利が満たされていなかったり、変えなければならない状況があるために活動をしている我々が、逆に我々の活動や発信によって害をもたらすことがあってはいけないと、気を付けています。

また、事業地のスタッフ、パートナー団体など、文化や価値観が違いますし、お互い第一言語ではない英語でコミュニケーションをとっているので、スムーズにいくことばかりではありません。ですが、子どもたちにとって何が一番いいのか、ということを共通の第一優先としながら、誰が正しいか、ということではなく、お互いの意見を理解、尊重しながら意思決定をしていくように心がけています。

.

– これまで最も困難だったエピソードを教えてください。

数年前、団体全体として財政的に困難な時期があり、事業地では活動地を削減、スタッフの契約も終了しなければならなくなりました。事業を届ける対象の子どもたちの人数を減らさなければならなかったこと、また十分なスタッフを確保できなかったことから、無理な勤務体制を強いてしまっていたり、子どもたちをケアするために十分な体制をしくことができなかったことから結果的に子どもが傷つくようなことも発生したときには、KnK事務局での判断が事業地にもたらす影響の大きさ、重さを痛感しました。東京事務局での判断、決断の結果が事業地の子どもたちに影響をもたらすこと、団体として一番優先すべきは子どもの利益だと、そのことを優先して意思決定をしていくということを強く意識するようになったきっかけになりました。

.

– これまで最も嬉しかったエピソードを教えてください。

2010年にフィリピンに駐在していたときに出会った子どもで、出会った当初は笑顔も多く、歌もうまくてイベントごとなどではよく歌を披露してくれていました。私が駐在ではなくなり、日本で勤務を始めてからも出張の際に会いに行くことがあったのですが、会いに行っても全然笑顔を見せてくれなかったり、話しかけているのに私に向き合ってくれない時期もありました。数年、そういう時期を経たのちに、「もう一度学校に行きたい」と話してくれ、笑顔を見せてくれたときに、「ああ、このために仕事をしてるんだな」と思いました。本人とはかつてのころのことをまだ話していませんが、恐らく笑顔を見せてくれなかった時期には、学校をやめていたり、将来に対する不安などもあったのだと思います。今は将来に向けて勉強を続けられていること、またそういった自分自身に対しても自信も持てるようになっているんじゃないかと思います。
人生の中で、いろんな時期があるのはとても自然なことだと思います。立ち止まること、将来を信じることができないようなときがあったとしても、終わりではない。またKnKに戻ってきて、将来に向かって何ができるかを一緒に考えていくことができる、そういうあり方も大事にしていきたいと思っています。

フィリピン、パヤタスの路上。ここではチルドレセンターを運営している(2019)

.

– 休みの日(OR仕事をしていない時)は何をして過ごしていますか?

夜はドラマを見ながら夕食を食べるのがリフレッシュになっています。週末は、以前はスポーツジムに通っていましたが、最近は本を読むことが多いです。事業担当国や仕事に関係する本も読みますし、最近はジェンダー、政治、国内の女性への暴力や貧困、国内での外国人差別、沖縄に関する本などを読んでいました。より多くの人に読んでもらいたいと思う本は家族LINEで共有し、家族に薦め、家族からさらにその先に薦めてもらえるよう宣伝しています。

.

– 今後、KnKの活動を通じてご自身が取り組みたいことを教えてください。

パレスチナのキッズセンターにて(2019)

KnKに入った当初から、個々の子どもたちの人生にどのように関われるか、ということに意識が向いていましたが、最近は社会の意識や構造の問題、そして自分自身がそこにネガティブな形で格差の固定化に寄与してしまっているんじゃないかといったことを考えています。先ほどの、「もう一度学校に行きたい」と話してくれた子どものように、個々の子どもたちの思い、人生にどのように関われるかということは大切にしつつ、自分自身を振り返りながら、構造的な格差や差別の是正にも貢献していければと思っています。

– KnKが各地の苦境にある子どもたちと共にあるためには、新たな仲間が必要です。彼らに向けたメッセージをお願いします。

私が誰かの人生に関わるような仕事につくことを考えるようになったのは、「出会った人に生まれてよかったと思ってほしい」という思いがあったからです。でも、最近それは個々の問題ではなく、「生まれてよかったと思えるような社会」にすることが大切なんだと考えています。私も、団体としても未熟ではありますが、どんな子どもも権利が満たされる、生まれてよかったと思えるような社会の構築をぜひ一緒に担っていただければ心強いです!

認定NPO法人国境なき子どもたち(KnK)
フィリピン、パレスチナ事業担当
久野 由里子

 

新たなマンスリーサポーター25名を募集

これからも教育機会を提供することで、各地の子どもたちが主体的に生き、自己決定ができる人生を歩めますよう、25周年を記念して新たなマンスリーサポーターを25名募集します。
(募集期間:2022/9/1~12/31)

寄付する
寄付する
資料請求

カテゴリー

月別アーカイブ