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【25周年企画】KnKと私(14) -ヨルダン/シリア難民支援 事業総括 松永 晴子-

国境なき子どもたち設立25周年を記念して、関係者のインタビューを連載します。

KnKと私(14) -ヨルダン/シリア難民支援 事業総括 松永 晴子-

日々の暮らしの中での一人ひとりの感じ方、考え方にも、他者とともにより生きやすい社会を作っていく鍵はあると思っています。

– 前職とKnK入職のきっかけ、理由を教えてください。

ヨルダンでプロジェクトを実施していた日本のNGOに勤務していました。フィールドに行くことはほとんどなく、ずっとアドミン(管理)業務をしていました。配車、スタッフや関連業者との契約書作成発行、諸々見積もりなど、アドミンを初めてのNGOでしっかりさせていただいたことは、本当に勉強になりました。アドミンはこの業界ではあまり人気がありませんが、実のところ、アドミンがしっかりしていないと、どれだけ優秀なスタッフが現場にいても事業そのものがしっかり回せないのが現実です。その大切さを学ばせていただく貴重な経験でした。

首都アンマンにあるKnKヨルダン事務所(2019)

もともと教員をしていたこともあり、教育のプロジェクトを実施しているところで働きたい、という希望があったことから、同じくヨルダンで活動しているKnKに応募をして、採用いただきました。
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– 通常、どのような業務を行っていますか?

KnKに入職してからヨルダンで8年間事業実施にかかる会計からプログラム管理、新規案件の申請など、現場でできることはほとんどすべてさせていただきました。今年の3月からは久々に日本に戻ってきて、本部でヨルダン事業を遠隔でモニタリングしつつ、団体の実施事業の方向性について、まとめたり再構成したりする業務もやらせていただいています。

ヨルダンチームの仲間たちと(2019)

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– 業務をする上で大切にしていることは何ですか?

目の前のものごとや状況をできるだけ色々な側面から肯定的に、もしくは学びにつなげられるような視点で見ることかもしれません。腹が立つことも、理不尽なことも、ものすごく落ち込むことなどがあるので、自分の中で常に、多角的な捉え方について考えています。

できればどんな状況でも、愛情や優しさは持っていたいですし、腹立たしいことは特に、面白くできるといい、とも思っています。ずっと怒ったり落ち込んだりしていると、すぐ気付かれてしまって迷惑がかかるし、ただ深刻なだけでは私も周囲も消耗する、と長く現地にいて実感しています。

自分自身は人として至らないところがあまりにも多いので、周囲の人たちや子どもたちから学んだり、教えてもらうことが本当に多いです。

ザアタリ難民キャンプの授業の一コマ(2018)

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– これまで最も困難だったエピソードを教えてください。

一番辛かったのは、過去、難民キャンプのシリア人の先生たちが仕事への意欲をなくして雇用が継続できなくなったときです。シリア人の先生の一人が言った「広島の原爆みたいにキャンプが爆弾で吹き飛びでもしない限り、(閉塞感ばかりで将来に希望が見出せない)この状況もキャンプの人々の気持ちや考え方は変わらない」という言葉はずっと覚えています。あまりに腹が立つし悲しいし、今でも思い出すと胸塞ぐ気持ちになります。

先生がそう言ってしまうのには、本人のせいではなく難民がキャンプに置かれるに至った経緯と現状があります。それでも、丁寧に対話を続ける忍耐を相手が失った時、自分の決断は決していいはずがない、と分かっていながら、契約満了で雇用を終了しました。

先の回答と矛盾するかもしれませんが、あのとき、他にどんな選択肢があったのか、本当は何かできることがあったのではないか、どんな状況に置かれても希望や明るさを持って暮らしていくために、できることは何なのだろう、と、今もまだ考えています。また、周囲の大人の態度や姿が子どもたちに大きく響くことを考えた時、どんなふうに大人が抱えている辛さや投げやりな気持ちの痛みを素直に出せたならば、子どもたちにとっても大人にとっても、いい方向にできるのだろう、ということも考えています。

ヨルダン北部にあるザアタリ難民キャンプ(2019)

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– これまで最も嬉しかったエピソードを教えてください。

活動対象の子どもたちがわだかまりなく、のびのびと活動に参加している様子を見ているのが、いつも単純に嬉しいです。

そういう点では比較的いつも嬉しいので、また別の観点から、長く事業ができたからこそ、嬉しかったことを紹介します。

アンマン事業における対象校の校長先生と賞状を持つ松永(2021)

アンマン市内でのシリア難民を含む事業は2015年から、補習授業から始まり、特別活動の試験事業に続いています。

昨年の2021年、補習授業の時から対象校だった学校へ訪問した時、どこか見覚えのある女の子がいました。その子のお兄さんとお姉さんが補習授業に参加していて、6年前、家庭訪問へ行った折、まだ幼稚園生だったその女の子にも会っていました。

あの時、家庭の複雑な事情でなかなか同級生と仲良くできなかったお兄さんはもう高校2年生になっていることを、その女の子から聞くことができました。

また、この再会の後、お兄さんのいる学校も対象校の一つとなり、お兄さんにも会うことができました。

事業のことやスタッフたちのことを覚えていてくれたことも嬉しかったですが、どこか不安げで寂しそうで、いつも上の兄姉たちの後ろをついて回っていた子が、ちゃんと大きくなって元気に学校へ来ている様子を見られた時は、本当に嬉しかったです。

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– 休みの日(OR仕事をしていない時)は何をして過ごしていますか?

本を読むか、音楽を聴いています。

本来仕事に関連する本を読むべきなのだと思うのですが、小説やエッセーが好きです。特に海外の作家の作品が多く、読みながら、さまざまな国の文化背景や知らない社会構造などを知ることもあります。

また、最近いいヘッドホンを購入したので、移動の時も家の中でも、結構な時間、音楽を聴いています。

日本に戻ってきて一番嬉しいのは、いつでも本が手に入ることと、いい音楽が聴けることです。

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– 今後、KnKの活動を通じてご自身が取り組みたいことを教えてください。

例えば、「子どもの生活には見守る大人の存在が大切」、「友だちなど他者と関わる経験が大人になっていく過程で大切」、「人は誰もが平等に生きる権利を持っている」、など、頭や知識では知っていること、もしくは論理的には理解していることがあります。

ただ、どこまでそれらの「知っていること」を心の底から実感したり、腑に落ちたりしていたか、と言ったら、実はそこまで深く理解していなかったことが、たくさんあった気がします。

仕事での人々、子どもたちとの関わりの中で、痛いほど実感することや、あぁ、と深く唸って納得に至る経験をさせていただきました。

ザアタリ難民キャンプの生徒と(2021)

答え合わせのようなものでもあり、同時に、物事の理解の深度を知る作業でもあります。

私は何をするにも鈍くてとろいので、そのような作業にも時間がかかるのですが、腑に落ちた時にやっと、自分の血肉となる気がしています。

活動を通じてこのような、深い理解や腑に落ちる経験を丁寧にしていくこと、また、できた時にはそれらをきちんと近くの、遠くの他者に伝えることをしていきたいと思っています。
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– KnKが各地の苦境にある子どもたちと共にあるためには、新たな仲間が必要です。彼らに向けたメッセージをお願いします。

どの国、どの土地にも、さまざまな背景を持って生きる人々が暮らす社会があります。誰もが自分たちの尊厳や自由を守るためには制度や法律が必要ですが、日々の暮らしの中での一人ひとりの感じ方、考え方にも、他者とともにより生きやすい社会を作っていく鍵はあると思っています。

他者にも自分の内面にも想像を巡らしたり、慮ったりしながら、自分の価値観を常に更新していく勇気、また、大切にしたいと思えるもの、事柄や人を増やしていく心の柔らかさが大切だな、と最近しみじみと感じています。

一人だけでは自分との闘いになってしまいがちなこの作業を、難しさも含めて共有し、一緒にしてくださる方に一人でも多く活動を見守っていただけましたら、とても励みになります。

認定NPO法人国境なき子どもたち(KnK)
ヨルダン/シリア難民支援 事業総括
松永 晴子

新たなマンスリーサポーター25名を募集

これからも教育機会を提供することで、各地の子どもたちが主体的に生き、自己決定ができる人生を歩めますよう、25周年を記念して新たなマンスリーサポーターを25名募集します。
(募集期間:2022/9/1~12/31)

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