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【25周年企画】KnKと私(13) -マネージング・ディレクター/パキスタン事業担当 大竹 綾子-

国境なき子どもたち設立25周年を記念して、関係者のインタビューを連載します。

KnKと私(13) -マネージング・ディレクター/パキスタン事業担当 大竹 綾子-

現地の子どもと彼らに関わる大人や日本の子どもや支援者である私たちみんなが、お互いに共振、変化、成長しあえる、そんな共育を拡げていけたらよいなと思います。

– 前職とKnK入職のきっかけ、理由を教えてください。

KnK入職前は、開発途上国の産業人材の育成を行う団体に勤めていました。管理者向けの日本での研修を企画運営したり、様々な国の研修生と交流するのはとても楽しくやりがいもありました。でも、研修生たちの多くは民間企業のエリート層。彼らの帰国後それぞれの国で何がどう生かされているのか自分の目で見てみたい、そして現地の人たちと一緒に仕事をしながら今度は私が学びたい、と思っていた最中、KnKの派遣員募集の広告が目にとまりました。

面接で訪ねた高田馬場の事務所で「Growing Together(共に成長するために)」という事業申請書のタイトルを見て「これだ!」と思い、カンボジアへの渡航を決めました。

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– 通常、どのような業務を行っていますか?

事務局で様々なバックサポートにあたっています。

パキスタンの事業担当としては、現地スタッフと日々連絡を取り合いながら、事業の進捗を確認したり、課題を協議したり、また苦手な予算や会計の管理(というか格闘)、助成金の申請や報告書を作成したりしています。加えて、海外支援事業の統括として、各事業の方向性や、事業運営に伴うトラブルの解決やアプローチの改善などを事業担当と一緒に考えることも大きなタスクです。また、2017年に前事務局長が退任して以降は清水、松浦と3名共同のトロイカ方式で事務局運営を担いつつ、人事管理も担当しています。

パキスタンの現地代表と河の向こう側にある学校を訪問(2022)

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– 業務をする上で大切にしていることは何ですか?

人の話を聞くとき、チームで議論をするとき、物ごとを観察するとき、活動の在り方を考えるときなど、自分から価値づけをしないよう心がけています。2年前のメタファシリの研修で教わった「虚心坦懐」は、現地でスタッフや子どもと接するときにとりわけ忘れてはいけない言葉だと思っています。ベトナムに駐在していた当時「僕にレッテルを貼るなー!」と刑務所に収監された経験のある青年から怒号を飛ばされたことがあります。偏見を持っていたつもりは全然なかったのですが、支援者然とした私の言動が彼の尊厳を一瞬でも奪ったのかもしれません。一方的な決めつけやあるべき論を押し付けたりしていないか、できる限り内省的でありたいと思います。

ベトナムで友情のレポーターと一緒に路上の子どもを取材(2004)

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– これまで最も困難だったエピソードを教えてください。

一緒に働くスタッフや派遣員がストレスをため込んでしまったりすることがこれまでに幾度かありました。現場の派遣員は、コミュニティや現地スタッフ、関係行政に至るまであらゆる関係者と信頼関係を築くのに大変な努力を重ねていますし、東京事務局の担当は、現場の意向を汲み取りながら、団体の方針とも擦り合せつつ活動の向上に苦心しています。誠心誠意コミットしているスタッフをちゃんと見ていたか、話を聞けていたか、同じスタンスで四苦八苦しながら真摯に対応できたかどうか。自分への問いかけは常に続いています。

パキスタンで建設した新校舎で(2015)

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– これまで最も嬉しかったエピソードを教えてください。

カンボジアで出会った15歳のヴィー(仮名)という少年との関わりは私の中で強く印象に残っています。カンボジアへ派遣されてすぐの頃、ヴィーは「若者の家」から二度も逃げ出し、その度に国境沿いのスラムやNGOを回って探しあてました。その後は私が仕事する間中、傍に座ってお喋りをしたり、好きな女の子の写真を見せにきてくれたりしました。お互い名前を呼ばない日がない位、ヴィーとの日常が当たり前になっていました。

でも半年ほど経った頃から、ベッドの下に隠れて泣いたり、モノを投げてスタッフに暴力を振るうことが多くなるなど、不安定な行動が見られるようになりました。ヴィーの不安の種をどう取り除けばよいかわからず、とにかく毎日顔を覗いて「そばにいる」ことを伝えました。

変化がなくスタッフ皆が心配していたある日、「学校に行くよ」と照れ臭そうに伝えにきてくれたヴィー。入学式の朝、パリッとした制服を着たヴィーと手をつないで歩いた小学校までの道のりは、私にとって何よりも嬉しい10分間でした。生き別れた家族への思いやタイでの過酷な経験を消化できなくとも、今誰かとつながっていると感じることが背中を押すのかもしれない、あらためてそんな風に思い出しています。

カンボジアに駐在していた頃、よく笑っていました(2002)

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– 休みの日(OR仕事をしていない時)は何をして過ごしていますか?

反抗期真っ只中の中3の娘と高2の息子と泣き笑いの時間を過ごすことが多いです。主張をぶつけあったり、真剣に話を聞いたり、互いの不満を言い放ったり、向き合うことから逃避してみたり。「なぜ学校に行くのか?」「安月給のNGOの仕事をするのはどうして?」など、こちらが当然と思うことへの疑問や問いかけは、自分の価値観を紐解く何ともしんどい作業です。これまでの日常の会話から、価値観を擦り合せる対話が必要な時期にきているのかもしれません。この厄介な思春期とやらは一体いつまで続くのでしょうか。

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– 今後、KnKの活動を通じてご自身が取り組みたいことを教えてください。

私が惚れ込んだ「Growing Together」の意味を今後も考え続け実践していきたいと思っています。当初は、日本の私たちが現地の子どもたちから学び成長することの大切さという理解をしていました。今は、仲間のようにワイワイとやれる対等な関係性だったり、ガヤガヤしながらも誰もがそこにいてよいと思える場が「Growing Together」実現のキーになるのではないかと考え始めています。現地の子どもと彼らに関わる大人や日本の子どもや支援者である私たちみんなが、お互いに共振、変化、成長しあえる、そんな共育を拡げていけたらよいなと思います。

パキスタン以外の活動地もモニタリングします。写真はバングラデシュ。(2013)

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– KnKが各地の苦境にある子どもたちと共にあるためには、新たな仲間が必要です。彼らに向けたメッセージをお願いします。

一つの枠に留まってはいられない人生100年時代。自分が変わることもまた子どもたちの成長を後押しすると思えば、人生の折り返し地点にきている私もまだまだ日々変容し続けたい!と思えます。より多くの皆さまと「Growing Together」のプロセスをご一緒できれば嬉しく思います。

認定NPO法人国境なき子どもたち(KnK)
マネージング・ディレクター
パキスタン事業担当
大竹 綾子

新たなマンスリーサポーター25名を募集

これからも教育機会を提供することで、各地の子どもたちが主体的に生き、自己決定ができる人生を歩めますよう、25周年を記念して新たなマンスリーサポーターを25名募集します。
(募集期間:2022/9/1~12/31)

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