国境なき子どもたち設立25周年を記念して、関係者のインタビューを連載します。
【25周年企画】KnKと私(1) -創設者 ドミニク・レギュイエ-
私たちの活動の原点は、友情と連帯、これら以外のなにものでもありません。
今から25年前、私は友人数名と一緒に国境なき子どもたち(KnK)を立ちあげました。そのきっかけは、世界の片隅でたった独り、路上暮らしをする子どもや、紛争地で争いに巻き込まれ辛い思いをしている青少年らに、私自身が幼い頃に味わった、子どもとして送った時間を彼らにも過ごしてほしい、そのための機会を、どんなに小さくても届けたいという願いからでした。
私たちは、子どもも周りの大人も、お互いの顔が見えて、子どもたちがそれぞれの名前で呼ばれるような等身大の支援をめざしました。そして、30人くらいの青少年と、彼らの教育に関わるスタッフが過ごす「家」を、カンボジア、フィリピン、そしてベトナムに開設しました。
支援の形はとても家族的ですが、しかし、私たちが彼らの本当の父親や母親の代わりに愛情を注ぐということではなく、子どもも大人も、KnKを通じて出会った人たちが一人の人間として向き合い、お互いを尊重し合える、そういった関係性を築くことを大切にしました。
「時間」もKnKの活動の重要な要素です。私たちが当初から理想としてきた「共に成長するために」という言葉が象徴するように、子どもたちがだんだんと若者、そして大人へと時間をかけゆっくり成長していく傍らで、私たち自身も彼らと一緒に成長すること、さらには、子どもたちの家族や地域コミュニティの人々も一緒に成長し、自身や地域の子どもたちと再び関係を築くことをめざしました。
2000年代に入ると、KnKは緊急支援活動も行うようになりました。スマトラ沖大地震・津波、パキスタン北部大地震、バングラデシュとミャンマーのサイクロン、東日本大震災といった自然災害や、東ティモールやシリアの紛争などの緊急活動にたずさわってきましたが、これら緊急時においても、活動初期にめざした理想の形を支援活動に落としこみました。
この25年間でKnKが成し遂げたことは、私たちの教育活動によって子どもたちが学校に通い、さらには大学に進学した若者もいれば、手に職をつけ自立した人もいることです。また、学校の建設を行い、居住型の自立支援施設で子どもたちの生活を支えてきました。
そしてこれまで、各活動地のパートナーと共に、その人種や信条などの違いを超え、お互いを尊重し一緒に活動を行ってきました。日本の子どもたちがアジア・中東の同世代の子どもたちと出会う機会をつくってきましたし、フォトジャーナリストや写真家には世界中の活動地を訪問し、人間の美しさや寛容な心を、写真を通じて伝えてもらいました。
さらには、私たちと同じように、世界の子どもたちを思ってくださる日本全国の個人、企業、団体の方々が、25年の活動を支えてくださいました。
現在、私たちの世界は、自然環境も国際関係も、めまいがするほど凄まじい速度で変化しようとしています。感染症の世界的な蔓延の中で、それでもKnKは、活動を継続することができました。それはチームと子どもたちの努力によるものだと私は思っています。ただ、ここ数年は活動地を行き来できず、パソコンの前でしか現地とつながることができませんでした。
今こそ、原点と本質に立ち返り、KnKらしく、人間味のある支援活動を再開する時です。私たちの活動の原点は、友情と連帯、これら以外のなにものでもありません。まずは、私たちのパスポートが許せばすぐ、人々に会いに世界中を飛び回らなければなりません。現地の子どもたちやスタッフと再会し、お互いに呼吸していることを確認し、手を握り合い、抱き合い、「遠く離れていても、いつもあなたたちのそばにいて、あなたたちのことを思わない日はなかった」ことを伝えなければなりません。そして、活動地より日本へ戻ってきたら、共に行動してくれる仲間を探し、たとえ苦難に直面しても、這いあがらなければなりません。
私は、私自身も含め、KnKに関わるすべての人が共に成長を続けること、そして、さまざまな変化の中でも生きる希望を失わず、共に生き続けることを心から願っています。
最後になりますが、この25年の間、私たちKnKは、皆さまのおかげで、皆さまを代表し、世界中の子どもたちに教育の機会を届け続けることができました。一緒に築いてきたこれまでに心から感謝を申しあげます。
人間でいえば「25歳」という年令は、生まれてから大人に成長するまでの過程を振り返りながら、これからのふさわしい生き方を考える素晴らしい時期だと思います。
団体は今、岐路に立っています。感染症や環境破壊、そしていくつもの紛争やその火種を世界は抱えています。その中で、「私たちはどうやって共に生きていくか」、そのことを一人ひとりが考えていくタイミングです。
今一度、私たちは夢をひろげ、活動の原点と本質的な価値を見直し、これから数年先歩んでいく道を、自ら作っていくことを願います。そのために一生懸命に働きましょう。
私のすべての友情と共に。
認定NPO法人国境なき子どもたち(KnK)
創設者・専務理事
ドミニク・レギュイエ
新たなマンスリーサポーター25名を募集
スタッフインタビュー
- KnKと私(1) -創設者 ドミニク・レギュイエ-
- KnKと私(2) -ヨルダン プロジェクト・コーディネーター 大竹 菜緒-
- KnKと私(3) -広報・ファンドレイジング/支援者対応 村松 知恵子-
- KnKと私(4) -カンボジア プロジェクト・コーディネーター 倉持 真弓-
- KnKと私(5) -マネージング・ディレクター/FR 松浦 ちはる-
- KnKと私(6) -カンボジア、バングラデシュ事業担当 三喜 一史-
- KnKと私(7) -理事 栗林 まどか-
- KnKと私(8) -広報・ファンドレイジング/支援者対応 岡田 茜-
- KnKと私(9) -ヨルダン事業担当 佐々木 恵子-
- KnKと私(10) -マネージング・ディレクター/広報 清水 匡-
- KnKと私(11) -フィリピン、パレスチナ事業担当 久野 由里子-
- KnKと私(12) -理事 玉村 翔吾-
- KnKと私(13) -マネージング・ディレクター/パキスタン事業担当 大竹 綾子-
- KnKと私(14) -ヨルダン/シリア難民支援 事業総括 松永 晴子-
- KnKと私(15) -カンボジア プロジェクト・コーディネーター 福神 遥-
- KnKと私(16) -会長 寺田 朗子-