活動ニュース

各地での活動

ヨルダン/(シリア難民)

中東地域にありながらも天然資源に乏しく、外国からの短期的な投資による資本流入や、地域における治安情勢の影響を社会的にも経済的にも大きく受けるヨルダン国。脆弱な経済の中、これまで周辺国から多くの難民を受け入れてきました。特に2011年のシリア危機以降、シリアから多くの人々が流入してきています。

2023年3月時点、ヨルダンには約66万人のシリア難民がUNHCRに難民登録されており、そのうち、8割がキャンプ外のホストコミュニティと呼ばれる都市部や郊外にて避難生活を送っています。

10年を超える長引く紛争やコロナ禍の影響を受け、シリア難民は孤立を深め、生活手段の欠如に直面し、今も危機的な状況におかれています。特にシリア難民の子どもは、児童労働や早期結婚等のリスクに晒されており、学校に通わせることをとおして物理的に子どもを保護する必要があります。

ヨルダン人の子どもにとっては、シリア人を受け入れるために学校が二部制になったことで、授業時間の短縮などの影響から教育の質が落ち、学校から遠ざかっていたシリア人だけでなく、ヨルダン人の学力低下も危ぶまれています。ヨルダンは周辺国から難民、移民を受け入れ続けており、様々な背景を持つ個々人を理解し、受け入れることのできる人材の育成は、より良い社会作りに不可欠です。社会で通用する力を育むには、学校内の教育だけではなく、保護者や地域との協力のもと、学びを深めることが重要ですが、学校と保護者の連携は進んでいません。近年は、コロナ禍の影響により、子どもたちの学習の遅れに加え、基本的な生活習慣や態度が崩れています。学習の遅れを理由として登校しなくなる子どもに対する危惧も広がっている中、ヨルダンの教育省と教育現場は学校と家庭、地域との協力の上で子どもたちの社会的成長を重視していますが、その取り組みは十分ではありません。

活動概要

支援期間 2007年10月~継続中(シリア難民支援:2013年3月~)
活動地 アンマン、マフラック県(ザアタリ難民キャンプ含む)
支援内容 ・首都アンマン、マフラック県及びザアタリ難民キャンプの公立学校にて、子どもたちの社会性育成を目指し、日本式教育の特別活動(学級会、縦割り班活動等)を実施しています。
・特別活動に関する教員対象のインストラクター養成研修や保護者の参加を促す活動にも取り組み、ヨルダンにおける特別活動の普及と継続を可能とする基盤を整備しています。
・ザアタリ難民キャンプでは、アラビア語の基礎学習や随時子どもの相談対応も行っています。
支援対象 ・ザアタリ難民キャンプの公立小中学校4校
・アンマン及びマフラックの公立小中学校28校
・ヨルダン教育省、教育局、学校長、教員(2023年3月現在)
※ ヨルダンにおけるKnKの活動は、JICA 草の根技術協力、日本の皆さまからのご寄付や各種ご支援(宗教法人真如苑)で成り立っています。

 

支援の紹介

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ザアタリ難民キャンプにおける教育支援

2013年より、シリア難民の子どもたちの公教育への継続した就学を確保するため、キャンプ内の公立校の中で、ヨルダン人教員、シリア人教員を雇用し、KnKの活動としてすべての教科の基礎となるアラビア語の学習を提供してきました。学校生活を送る上でのコミュニケーションの習得や生活態度の改善など音楽、演劇、作文の授業を通じて、楽しみながら学べる授業も実施してきました。また、児童労働や早期結婚など難民キャンプに暮らす子どもたちにとって、身近な課題についてディスカッションするといった特別授業も取り入れてきました。

2023年1月からは、ザアタリ難民キャンプの学校もJICA草の根技術協力事業の対象となり、教員研修や各学級での日直当番や学級会の実践、保護者の学校活動への参加促進を進めています。

読み聞かせの授業

冬休みのアクティビティ

ホストコミュニティにおける教育支援

難民が多く暮らす首都アンマンの公立校で、2018年よりJICA草の根技術協力事業として、日本式教育の一つである特別活動(※)の実践や実施体制の構築を支援してきました(2022年1月終了)。日直当番や学級会、異学年で構成される縦割り班活動など、学校や学級の場で、シリア人やヨルダン人など多様な背景の子どもたちが集団活動を通して協力し、生徒たち自らが問題を見つけ、解決していく力を養うなど社会性育成をねらいとしています。このような活動を公立学校で実施していけるようKnKでは、ヨルダンの学校に合わせた特別活動実施のためのガイドライン、教員向け実践ハンドブックを作成し、教員研修の開催など、各校での導入支援や実践状況のモニタリングに取り組んできました。

2023年1月からは、首都アンマンに加え、ザアタリ難民キャンプがあるマフラック地域のホストコミュニティの学校でも、JICA草の根技術協力事業として、新たに教員を特別活動インストラクターとして養成する研修や社会性育成に保護者にも積極的に関わってもらうための保護者参画活動にも取り組んでいます。

※特別活動=学級活動や児童会、クラブ活動、学校行事を通し、子どもたちの社会性の育成、学校生活の充実・改善を図るもの

学級会での発表

アンマンの小学校での日直当番の様子

国情報

ヨルダンという国

中東にあり、地理的にアジア、アフリカ、ヨーロッパの中継地という位置にありました。西側にヨルダン地溝帯が走り、その東方にゆるやかな高原が広がります。東部は砂漠なので耕地はヨルダン渓谷の付近を中心とした地域に集中しています。ヨルダンは、16世紀から400年間オスマン帝国(今のトルコ)に支配されました。ヨルダンのアラブ人の独立を助けるという名目でイギリスとフランスがオスマン帝国と戦い、オスマン帝国が負けました。しかし1919年、勝利したイギリスはヨルダンを独立させず委任統治領にして支配下におきました。第二次大戦後にイギリスが委任統治を放棄し、1946年にアラブ連盟の一員となりヨルダンは独立しました。1967年の第三次中東戦争で、重要な農業地帯であるヨルダン川の西岸はイスラエルに占領されてしまいました。人口は1,114.8万人(2021年世銀)で大半がイスラム教徒です。およそ7割がパレスチナ系住民で、加えて、近隣国の情勢悪化により、イラク人、シリア人がヨルダンに流入しています。 特にシリア人については、ヨルダン政府によるとUNHCRへの未登録者も含めると130万人とも言われています(※)。製造業などが主で衣料品などを輸出しています。経済の基礎がまだ弱く外国の援助に左右されることも多いです。
※UNHCRへのシリア人の難民登録者数は67万人。

 

記事一覧

正式名称 ヨルダン / Jordan
国旗 ヨルダン
面積 8.9万平方キロメートル(日本の約4分の1)
人口 1,114.8万人(2021年、世界銀行)
首都 アンマン(Amman)
言語 アラビア語(英語も通用)
宗教 イスラム教 93%、キリスト教等 7%
時差 日本との時差は7時間。ヨルダンが正午のとき、日本は19:00。
サマータイム期間(4月から10月頃まで)は時差6時間。  【地球の歩き方】
政体 立憲(世襲)君主制、元首は国王
元首 アブドッラー2世・イブン・アル・フセイン国王陛下(1999年即位)
民族 アラブ人(98%)。パレスチナ難民が多い。  【地球の歩き方】
気候 四季があるが、春と秋が非常に短い。冬場は雪が降ることもある。
1年を通して乾燥している。  【地球の歩き方】
主な産業 製造業,運輸・通信業,金融業,観光業
名目GDP 457.4億米ドル(2021年、世界銀行)
一人当たりGDP 4,103.3米ドル(2021年、世界銀行)
通貨と為替レート ヨルダン・ディナール(JOD)
1JOD=約1.41米ドル=約185円(2022年12月)
「こんにちは」 アッサラームアレイコム
「さようなら」 マッサラーマ
「ありがとう」 シュクラン
【出典:外務省/2023年1月30日】

国と子どもに関するデータ

出生数 245千人 2021年
5歳未満児年間死亡人数(1000人当たり) 15人 2021年
若者(15-24歳)の識字率(男子) 99% 2019年
若者(15-24歳)の識字率(女子) 99% 2013-2022年*
初等教育修了率(男子) 96% 2013-2022年*
初等教育修了率(女子) 97% 2013-2022年*
中等教育修了率(男子) 86% 2013-2022年*
中等教育修了率(女子) 88% 2013-2022年*
高等教育修了率(男子) 49% 2013-2022年*
高等教育修了率(女子) 63% 2013-2022年*
児童労働(5-17歳)の比率(男子) 2% 2013-2021年*
児童労働(5-17歳)の比率(女子) 1% 2013-2021年*

*: データが、列の見出しで指定されている期間内に入手できた直近の年次のものであることを示す。

【出典:世界子供白書2023】

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