報告:パレスチナ現地代表 福神 遥
前回、若者へのTraining of Trainers (ToT)についてお伝えしましたが、今回はToTの他のトピックについてご報告いたします。
前回記事:【パレスチナ・ヨルダン渓谷】地域活動に向けて、研修を実施しました
若者が地域活動に関わる中で必要な、グループでの意思決定や問題解決等の研修と並行して、若者たちが地域で子ども向け活動を実施するために必要な、子どもとの向き合い方、美術、音楽、演劇の研修を実施しました。
今日はそのうち、子どもとの向き合い方に関する研修について、ご報告いたします。
子どもとの向き合い方についての研修は、当初対面での実施を計画していましたが、2023年10月以降のパレスチナの情勢を鑑みて、11月にオンラインにて実施しました。
2023年11月は、事業地であるヨルダン渓谷でもイスラエル人入植者によるパレスチナ人への攻撃やイスラエル軍による町の封鎖があり、また、連日に渡って報道されるガザの状況に、精神的に不安定になってしまう若者もいました。
研修を担当した講師のムハンマド先生は、自身がカウンセラーとして活動している方であり、最初の研修では、まず若者たちの不安な気持ちを取り除くため、全員で近況報告を行い、不安や怒りをシェアする時間が設けられました。
若者たちからは、「例えオンラインでも久しぶりに顔を合わせることが出来て良かった」「不安な気持ちを抱えているのは自分だけではないとわかって、少し安心した」と言った声が挙がりました。
その後、子どもとの向き合い方についての研修では、まず、子どもの成長と発達に伴う基本的な特徴や、それへの対応方法について学びました。小学校低学年の子どもと、思春期の子どもでは、声のかけ方やしつけの仕方が違いますが、そういった基本的なことを、改めて考える機会になったのではと思います。
また、子どもによる暴力、いじめ、嘘など、何か問題が起こった時に、若者としてどうやって子どもに接したら良いのか、どうやって解決すべきか、といったことも学びました。
後半の研修では、ケーススタディとして、若者から、地域で起こりうる子どもを取り巻く問題について問題提起してもらい、みんなで考える時間も設けました。
若者から多く挙がったのは、学校や地域でのいじめについてで、実際にいじめがあった場合、どうやって子どもに声をかけるべきか、何をすべきで何をすべきではないか、各自が意見を出し合いました。
研修後には、若者による子ども向け活動の様子を実際にムハンマド先生がモニタリングし、活動内容が適切か、子どもとの接し方が間違っていないか見ていただき、また、活動をする中で若者たちが困っている悩みを聞いて、ムハンマド先生からアドバイスをいただいたり、よりよい活動を届けるためにはどうしたらいいか、若者とムハンマド先生で話し合う時間が設けられました。
「子どもたちが楽しそうなのはもちろん、若者たちも楽しそうでいい」「もう少し活動の計画をチームでちゃんと練った方が、活動しやすい」「子どもは、数人から様々な指示を受けると困惑してしまうので、指示をするときにはシンプルに、1人から出す」といったコメントやアドバイスがムハンマド先生からありました。
また、モニタリング時には、ムハンマド先生が子どもたちに、友だちとの接し方について話したり、活動に参加する際のルールを子どもたち自らが考えて書き出すアクティビティを行いました。若者たちが「静かにしましょう」「活動している人たちがいるところに自転車で突っ込んでこない」と言っても、元気いっぱいの子どもたちは時に聞いてくれません。
そこで、活動に参加する子どもたちに、「どんな決まりがあれば、もっとみんなが楽しく活動に参加できるかな?」と聞いてみたところ、「ルールの説明をしているときには静かに聞く」「自転車は敷地の外に止めて、中には入ってこない」といった決まりごとのアイディアが子どもたちから出てきました。それらを書き出すことで、子どもたちは、自分や友だちが決めたことだから守らないと、という意識に繋がり、子どもたちがルールを守るようになりました。
研修とモニタリングを通して、私自身も思ったことですが、ムハンマド先生からは、「若者たちは、自分たちの地域に対する意識や責任感が高く、研修には積極的で、子ども向け活動を活発に行っていていいね」とのコメントをいただきました。半年ほどの研修や、地域での活動を通じて、若者たちは地域の一員として、子どもに関わる人として、責任感を感じたり、地域のために何かしたい気持ちを実現させているのだと思うと、私も嬉しくなりました。
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