報告:フィールドコーディネーター/サイトエンジニア ラシャード・アルゴルビーヤ
翻訳:パレスチナ代表 福神遥
ヨルダン渓谷における若者の社会参画支援および青少年、子ども支援の拡充事業について
KnKは2023年2月、ジェリコ県ヨルダン渓谷において「若者の社会参画支援および青少年、子ども支援の拡充」プロジェクトを開始しました。このプロジェクトの目的のひとつは、研修やワークショップ、また彼らが安全に過ごすための活動拠点の整備を通じて、若者のスキルアップを目指し、彼らが地域で活動することを後押しすることです。コミュニティで活動するための手法と知識を身につけた若者たちが、地域において子ども向け活動を実施し、地域の課題解決に向けてイニシアティブを取り、活動することを目指しています。
KnKはパレスチナにおいて、よりサポートが必要なヨルダン渓谷に焦点を当てており、2025年6月から8月にかけて、今まで使われていなかったり建設途中だったヌウェメとデュークのユースクラブの修繕プロジェクトを行いました。修繕プロジェクトは、パレスチナの建設会社であるEnvirotecと協働し、ユースクラブが地域において安全であり、設備を備えた拠点になることを目指しました。
ヌウェメユースクラブ
ヌウェメユースクラブは、長い間未完成のまま、コミュニティの方たちが使えない状態が続いていました。KnKは、建物の機能性と安全性の確保に重点を置き、以下の修繕を行いました。
• 階段(柱、壁、スラブ)の建設および仕上げ
• 階段とトイレの窓設置
• 損傷しているホールとキッチンのタイル交換
• 部屋のドア修理、交換
• トイレ修理
• 浄化槽の設置、下水道への接続、配管

階段設置前。建設が途中で終わって屋根がない状態

階段上部の設置状況


階段の修繕後。屋上に繋がるドアも設置した

ホールのタイル設置後
夏は気温が40度を超す日も多く暑いジェリコの気候に対応するため、エアコンも設置し、活動中の若者や子どもたちが快適に過ごせる空間を作りました。現在ユースクラブは、トイレ、清潔な部屋、階段やタイルなどが改善されて安全が確保された環境を備え、プロジェクトの活動拠点として、また地域の方たちの拠点として準備が整いました。

修繕後のヌウェメユースクラブにおける子ども向け活動の様子
デュークユースクラブ
デュークユースクラブでは、クラブの建物と施設周辺の安全性と機能性の向上に重点が置かれました。主な修繕内容は以下です。
• 建物入り口ドアの改修
• 入り口ドアへのガラス設置、壁面塗装
• ドアとドア枠の交換、修理
• トイレ、シャワーの修理
• 建物周囲の下水管の修理
• エアコンの修理、設置

建物入り口ドア修理後

修理前の壊れたドア

修理後のドア

修理前の壊れたトイレの水道

修理後のトイレの水道
修繕により、かつてあまり使われていなかったユースクラブは、地域の方たちを受け入れる拠点になり、地域の活動や若者によるイニシアティブ活動が始められるようになりました。

修繕後のデュークユースクラブにおける子ども向け活動の様子
市役所からのサポート
ヌウェメ・デューク市役所は、ユースクラブの修繕事業において、とても重要な役割を積極的に果たしてくださいました。KnKとユースクラブ、地域の方たちとの調整業務だけではなく、修繕工事中はもちろん、工事前から工事後まで、全面的にサポートしてくださいました。KnKが担当する修繕個所には含まれていなかった部屋の床タイルの交換や、外壁の塗装工事を市役所が実施したことで、建物の内部や外観がさらによくなり、また、綺麗になったクラブに椅子や机などの家具を設置したことで、クラブとしての機能もさらに向上しました。
市役所が積極的に関わってくださったことは、今後も市役所が若者をはじめとする地域の方たちのために、ユースクラブを維持・改善してくださる姿勢を体現していると感じました。市役所が入ってくださったことで、工事が滞りなく進んだだけではなく、実際にクラブを使う地域の方たちの主体性が強化されたのではないかと思います。

市役所が設置した椅子と机

市役所が設置した家具
●現場からの声:ラシャード・アルゴルビーヤ(フィールドコーディネーター/サイトエンジニア)
ラシャードは、シビルエンジニアとして、施工管理、上下水道プロジェクト、建設分野における人材育成などで12年以上の経験を持ちます。今回の修繕プロジェクトではKnKの施工管理者として建設会社の入札から、最後にユースクラブに引き渡すまで修繕を担当しました。
Q: このプロジェクトはあなたにとってどのような意味を持ちましたか?
KnKがヨルダン渓谷で修繕プロジェクトを始めると聞いた時は、わくわくしました。KnKの活動の大半は教育と若者のエンパワメントに焦点を当てていますが、この修繕プロジェクトは、保護者や市役所などを含むコミュニティに対して、KnKが子どもたちのためのより良い環境づくりを重視していることを表していると感じたからです。ユースクラブの修繕が終わり、安全で設備の整った空間で活動が行われると知り、保護者の方たちは子どもを活動に参加させやすくなったのではないかと思います。
Q: プロジェクトはコミュニティとの関係をどのように強化しましたか?
このプロジェクトは、市役所をはじめとする自治体とコミュニティとの関係を強化しました。市役所は家具などの資機材の設置と修繕における技術面で常にサポートしてくださいました。KnKが若者向けの活動だけではなく、若者がコミュニティにおいて心地よく、また彼らがプロジェクトの主役として、尊重されていることも、今回の修繕プロジェクトを通して市役所やコミュニティの方たちに理解していただけたのではと思います。KnKの今後の活動に対して、さらなるサポートの道が開けたと思います。
Q:エンジニアとしてどんなことを学びましたか?
KnKが若者と子どもたちのエンパワメントをいかに大切にしているかを身近に見て、学びました。これが私にとって、自分自身もベストな仕事をしようというモチベーションとなりました。また、施工を担当してくださった建設会社であるEnvirotecの皆さんにも、これは単なる修繕プロジェクトではなくて、これから先何年も若者や子どもたちの役に立つプロジェクトであると伝えました。Envirotecの皆さんにとっても、この思いは、高品質な仕事を提供しようとするモチベーションになったと思います。
Q: このプロジェクトは他の団体にも影響を与えましたか?
はい、この修繕プロジェクトは他の団体の関心にも影響を与えたと思います。最近ではワールド・ビジョンが私たちと市役所へ連絡を取り、ユースクラブの外に日よけをつけたり、塗装の塗り直し、外壁タイルの張替えなど、追加の修繕について協議し、いくつかはすでに着手されています。これは、一つのプロジェクトがコミュニティへのさらなる関心や支援を呼び起こすことを示しています。
Q: 今後どのようにユースクラブを活用してもらいたいですか?
KnKの同僚たち、そして将来的にはユースクラブのスタッフたちが、長年使われないままだったユースクラブを再び活気ある場所にするよう、若者や子どもたちを後押しし続けてくれることを願っています。建物は若者たちによって大切に利用され、彼らにとって第二の家のような場所であるべきです。ユースクラブを管理する方々には、KnKの活動に積極的に参加し、復活したユースクラブがコミュニティにどのような影響を与えたかを直接見ていただきたいです。今後、多くの若者や子どもたちがユースクラブで活動し、巣立って、KnKのパレスチナでの活動が終了した後も、コミュニティの一員として活動する精神を受け継ぎ、コミュニティリーダーへと成長していく姿を見ていくことは私の夢のひとつです。
●KnKからの声:ムハンマド・グルーフ(フィールドコーディネーター)
KnKの一員として、ヌウェメユースクラブとデュークユースクラブの修繕により、ふたつの施設が若者や子どもたちにとって、安全で居心地が良く、設備が整った場所へと変わっていく様子を見ることができました。以前は、設備も不十分で屋根がなかったため、特に暑い夏の間は、活動を行うことが難しい場所でした。修繕が終わったユースクラブは、若者たちが難しさを感じることなく集まって、一緒に学び、活動を届けることができる、安全で快適な空間となっています。これらの変化は、若者たちと一緒に活動するファシリテーターとしての自分自身にもよい影響があり、若者や子どもたちによりよいプログラムを実施するための機会と自信を与えてくれました。
今回の修繕プロジェクトは、若者の活動拠点を整備することが、長く続く変化を生み出すことを、コミュニティと私たちのプロジェクトに関わる関係者の方たちに示すことができると信じています。この成功をもとに、さらに多くの若者がプロジェクトに参加することを後押しして、彼らがコミュニティでアクティブに活動するリーダーへ成長することを願っています。

子ども向け活動の様子
●ユースクラブからの声:ムハンマド・イルメルイヤ(デュークユースクラブマネージャー)
この修繕プロジェクトは、私たちデュークユースクラブにとってとても重要なものでした。パレスチナ自治政府や自治体の厳しい財政状況のため、ユースクラブは長年、サポートや資金提供を受けることが出来ていなかったため、今回の修繕事業は、ユースクラブ建設時以降初めて受けたサポートでした。この修繕により、ユースクラブは新たな姿となり、地域の若者たちに希望がよみがえった気がします。
●KnKのプロジェクトに参加する若者からの声:カウサル(デューク在住)
ユースクラブは以前よりもずっと良くなり、今では若者たちがより積極的に活動に参加し、KnKや他の団体と一緒に、今までよりも多くの活動を企画、実施しています。
●KnKのプロジェクトに参加する若者からの声:ファーティマ(デューク在住)
修繕工事によって、ユースクラブは私たちにとって安全で利用しやすい場所になりました。そのため、今までよりも多くの子どもたちが活動に参加するようになり、私たちがユースクラブで実施する活動を楽しんでくれています。
完了と引き渡し
ヌウェメとデュークユースクラブの修繕プロジェクトは、イスラエルとイラン双方による攻撃やイスラエル軍による移動制限などで作業を中断しなければいけないときもありましたが、予定通り期日以内に無事に完了し、市役所とユースクラブへの引き渡しが実施されました。円滑な引き渡しは市役所とユースクラブから高く評価していただき、安全で設備が整ったユースクラブの修繕完了に対し感謝の意が表明されました。

市役所、ユースクラブとの完了検査(ヌウェメユースクラブ)

引き渡し式の様子

市役所、ユースクラブとの完了検査(デュークユースクラブ)
今後の展望
ヌウェメユースクラブとデュークユースクラブの修繕は、インフラの整備と社会的なプログラムが一体となることで若者にパワーを与え、コミュニティの信頼を得て、設備的にも心理的にも安全な空間をつくることができると示しています。2つのユースクラブが復活したことで、ジェリコとヨルダン渓谷の子どもや若者が、学び、成長し、コミュニティをより明るい未来にするための場所を作ることができたと信じています。
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