活動ニュース

【パレスチナ・ヨルダン渓谷】~青少年向け研修が次の世代を育てる~

報告:パレスチナ現地代表 福神 遥

KnKは、パレスチナのヨルダン渓谷で若者の社会参画と地域活動の実施を目指し、Training of Trainers (ToT)を実施しています。ToT研修を受けた若者は、それぞれの地域で活動を行っているのですが、今日は活動の一つ、青少年向け研修についてご紹介いたします。

青少年向け研修は、11歳から17歳の子どもたちを対象に、次世代の若者の社会参画の準備として、人との関わり方やコミュニケーション、リーダーシップ、チームビルディングなどのライフスキルを学ぶことを目的としています。また、活動しているヨルダン渓谷では、中途退学が多い村もあり、青少年が新たな知識や技術を身に着け、将来について考えることで、学校での勉強を続ける動機のきっかけを作ることも目指しました。

研修を実施した若者たちは、講師として研修を行う際の注意点や、年下の子どもたちとのコミュニケーション方法、研修の組み立て方や準備の仕方などをToTを通して習いました。ただ、今まで講師として活動したことがない彼らが、いきなり人前に立ち、講師として何かを教えるのは少しハードルが高いので、3回目の研修までは、ToTを担当したAl Reef Palestinian Cinemaの講師の方たちと研修の計画や準備をしました。講師の方たちは、実際に若者が研修を実施する様子をモニタリングして、アドバイスをする時間も設けました。

講師の方からアドバイスを受け取る

若者たちは、まずは村ごとにミーティングを開き、研修の計画を立て、SNSや学校での呼びかけで参加者を募り、研修を実施するとともに、研修後にはふりかえりの時間を設けて、次の研修に向けて話し合う時間も作りました。また、研修に参加する子どもたちが、自分自身を知り、友だちと仲を深め、ライフスキルを楽しく学べるよう、そして、一方的ではなく参加型の研修を通して、直接的ではない学びのある場にしようと、様々な工夫をしました。いくつかの例をご紹介します。

●研修の最初に、子どもたちが研修に参加する際のルールを考え、みんなで紙に書く。
⇒子ども向け活動でも実践していることですが、自分たちでルールを考えることで、参加する時の心構えや、ルールを守ろうという意識が生まれる。
●いじめがテーマの際、いじめる人、いじめられる人、先生などに分かれて劇をする。
⇒演じた後、どう感じたか、実際起きたらどうすればよいかを発表することで、当事者意識と客観性を学ぶことができる。
●名前を呼んでボールを投げ合うゲームをする。
⇒思春期の子どもたちにとって、男女が隣同士に並んだり、顔を見て話しかけることを嫌がったり照れてしまうこともあるけれども、ゲームを通してなら自然とできる。
●ペアになり、相手が知らない自分のことを3つ教える。
⇒今まで仲が良かった相手でも、意外と知らないことはあり、友だちの意外な一面や、自分との共通点を知るきっかけになったりする。これは私も実際に参加したのですが、ペアになった同僚オルファットが、小さい頃にガザに行ったことがあることを初めて知り、新たな会話のきっかけになりました。

ジフトリック村

イズビダット村

マルジガザル村

マルジナジェ村

最後に、ジフトリック村の取り組みをご紹介いたします。
ジフトリック村では、アマル、ラーニア、ファーティマの3人がToTに参加し、青少年向け研修では、地元の学校2校と、スポーツ活動を提供するユースクラブで研修を行いました。研修場所を探すにあたり、校長先生やユースクラブのマネージャーと交渉したのですが、自分たちが参加しているKnKの活動や、実施する研修がどんなものであるかを説明し、相手からは、研修を行う際の注意点を確認するなど、彼女たち自身が、地域の一員として学び、成長する機会にもなりました。
また、チームワークが得意な3人は、交渉事が得意なラーニア、アイスブレイキングなどのゲームが得意なアマル、子どもたちに話しかけたり注意して、研修の場をまとめるのが得意なファーティマと、それぞれの長所を活かし、役割分担もしっかりしていました。現在も、継続して積極的に研修を行っているジフトリック村の、アマルとファーティマからの報告をご紹介いたします。

ラーニア(手前)

アマル(左)

ファーティマ(左)

私たちは、Al Reef Palestinian CinemaとKnKの研修を受けた後、今までに20回ほど、中学校2校とスポーツクラブで11歳から14歳の子どもたちに、青少年向けのライフスキル研修を実施してきました。私たちは研修のトピックとして、コミュニケーション、衛生習慣、自分の思いを表現すること、暴力、いじめ、チームワークを選びました。各研修の前には、3人で研修のプランを作るとともに、子どもたちに学んでほしいことや目指したいゴールも決めました。ゴールを決めることで、3人の役割分担もでき、ゴールに向けて協力し合うことができました。

研修を始めた当初、学校の授業とは違う研修を初めて受けた子どもたちは、注意散漫でした。そこで、ゴールに向けて私たちが一方的に話すだけではなく、全員が参加できるアイスブレイキングや自己紹介、ゲームやチームワークを通して学べるアクティビティなども研修内容に盛り込みました。例えば、トピックに関連した動画を使ったり、その場で子どもたちが寸劇を演じたり、チームごとにプレゼンテーションすることもありました。

毎回、研修の最後には、研修を受けてどう感じたか、どんなことを学んだか、子どもたちに小さな紙やボードに感想を書いてもらう評価の時間も設けました。また、研修の最初の時間には、前回の研修ではどんなことを学んだかを子どもたちと確認し、今回の研修ではどんなことがゴールかを伝えました。これらは、私たち自身が、Al Reef Palestinian CinemaとKnKの研修を通して学んだことで、私たちも実践しました。子どもたちは、研修の回を重ねるごとに協力的に、積極的になりました。私たちは、研修を通して、彼らにチームワークの大切さを知るきっかけを作りましたが、チームワークについて学ぶ過程で個々の個性が強くなり、周囲の物事に対する見方にも変化が見られました。これらは、研修を通して私たちが目指したことでもあります。

私たち自身も、ToTを受ける研修生ですので、青少年向け研修を始めた当初、私たちの講師であるAl Reef Palestinian Cinemaの講師の方たちとKnKスタッフが私たちをモニタリングし、伝えてくれたアドバイスが、その後の活動にとても役立ちました。講師の方たちは、私たちを励まし、私たちが講師として間違えてしまった箇所は正し、より良い研修を届けるためのフィードバックやアドバイスをくださいました。Al Reef Palestinian CinemaとKnKの皆さんに感謝しています。

グループワーク

参加した子どもたちがその日の感想を書く

ToTの講師とふりかえりの時間

当初1校で始めたジフトリック村の青少年向け研修は、楽しく学べる場として評判になり、その後ユースクラブと別の学校で実施した経緯があります。青少年向け研修に参加した子どもたちが、もう少し小さな年齢の子どもたち向けの活動にボランティアとして参加してくれることもあり、村の中での縦の繋がりが出来つつあります。

※パレスチナにおけるKnKの活動は、外務省「日本NGO連携無償資金協力」の助成、ならびに日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。

 

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