報告:パレスチナ現地代表 福神 遥
美術、音楽、演劇の研修は、若者たちが地域で子ども向け活動を実施するために必要な知識や技術を身に着けることを目標に、実際にどんな準備をして、どんな活動を子どもたちに提供すればいいか、実践的な研修になりました。
「子ども向け活動での美術」と聞いて、絵を描いたり、塗り絵をしたり、あるいは工作をすることを思いつく方が多いと思います。しかし、パレスチナでは日本の学校のように図工や美術の授業がない学校もあり、小さい頃から美術に触れてきたわけではない人たちが多くいます。研修を担当したアーティストのジャーセム先生は、そんな若者たちに、色の作り方や、美術の知識がなくても簡単に行える子ども向け活動のアイディアを教えてくれました。
アーティストとして、アーティスト・イン・レジデンスの経験があるジャーセム先生からは、アートが地域コミュニティの中で果たす役割についても説明があり、アート活動を通じて地域住民のつながりを作ったり、地域を活性化することもできると教えてくれました。研修では、自分の地域のお気に入りの場所をそれぞれが描き、なぜお気に入りなのか発表する時間を取ったこともありました。
美術の研修後、2地域の若者たちは地域活動の一環として、それぞれマルジガザル村役場とジフトリック村のUNRWA学校の壁に絵を描く活動をしました。ジャーセム先生の協力のもと、村役場に絵を描いたときには、他の村の若者たちも手伝いに来て、地域の子どもたちが参加、小学校で描いた際には、学校の生徒と先生たちと、みんなで絵を描きました。
マルジガザル村での活動の様子
ジフトリック村での活動の様子
どんな壁画にするか、若者たちで話し合った時にも、岩のドームなどパレスチナの名所、モスク、パレスチナの地図など、パレスチナに関することを描こう、という意見も出ましたが、もっと地域に、その場所に根付いたものを描きたいという意見も出て、マルジガザル村の壁には、村の名前にもなっているガザルをメインに、村でよく見かける、ビイリと呼ばれている動物(ハイラックス)と、名産品であるデーツがなるナツメヤシの木を描きました。ジフトリックの小学校には、子どもたちが勉強することで描く未来、というイメージの絵を描きました。みんなで絵を描き終わった後、校長先生が女の子が持っている本の表紙に「教育は光」という言葉を書いてくださいました。
マルジガザル村での活動の様子
ジフトリック村での活動の様子
絵を描くにあたり、それぞれ村長さんと村議会、校長先生や先生方に許可を取り、日程を調整し、地域の保護者や子どもたちにお知らせするなど、若者たちは、ただ絵を描くだけではなく、地域の中で大人たちと繋がりを持ち、イベントを企画して、協力を得る、という、地域活動に大切な要素も学ぶことが出来ました。
後日、マルジガザル村の地域の方から、「とてもハッピーな気分になれる可愛らしい絵で素敵ね。村の他の場所にも描いて欲しいわ」との声をいただきました。ぜひ若者には地域活動の一環として、アートと地域を繋げる活動を続けて欲しいです。
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