報告:パレスチナ現地代表 福神 遥
パレスチナでの活動では、若者たちが自分たちの地域で活動できるよう、様々な研修を実施していますが、今日は、彼らが企画したファーマーズマーケット「第1回ヨルダン渓谷バザール」について、ご紹介します。
私たちが事業を行うヨルダン渓谷は、多くの土地がイスラエル軍が管轄するエリアB、Cとなっており(エリアA:治安、行政ともにパレスチナ自治政府管轄地域、エリアB:治安はイスラエル軍、行政はパレスチナ自治政府、エリアC:治安、行政ともにイスラエル軍)、大規模なユダヤ人入植地農園が多く存在しています。しかし、本来はパレスチナ人による農業が盛んな地域であり、レモンやポメロなどの柑橘類、デーツ、モロヘイヤ、きゅうり、ハーブなどが特産品です。また、元々遊牧民であったベドゥインの方たちも多く居住する地域であり、羊のチーズも有名です。そんな地域の名産品を広く知ってもらうためのイベントを若者たちが企画し、開催しました。
若者たちと1年半一緒に活動する中で、研修の他、パレスチナの地元の団体を訪れて活動を見学したり、団体の創設者やスタッフの方からお話を聞くツアーも実施してきました。そんな中、昨年の夏にKhalil Sakakini Cultural Centerで行われていたファーマーズマーケットを訪れ、そこで話をしてくださったスタッフの方とお会いして以降、若者たちとKnKスタッフの間では、ヨルダン渓谷の名産品を販売するファーマーズマーケットをやってみたいねという声が挙がっており、今回の開催となりました。

去年訪問したファーマーズマーケット
まず、私たちの活動に参加する若者たちの中から、立候補方式で実行委員を選出、どんなマーケットにするか、規模や出展者、開催場所について相談しました。様々な意見が出る中、今回は第1回目の練習として、4村合同ではありますが、小規模に活動地の1村で開催することになりました。
出展者は、村の人たちに広く呼び掛けるのではなく、今回は私たちの活動に参加する若者の中から何人かがブースを持つことになりました。
準備の期間も短かったのですが、実行委員を中心に、ブースを出す若者を募集したり、ロゴや看板を考え作成したり、地域の方たちにお知らせしたり、まるで文化祭のように楽しく準備を進めました。
イベント開催にあたり、幅広い年代の多くのお客さんたちに来ていただこうと、2つの工夫をしました。1つは、バスの提供です。ヨルダン渓谷には公共の交通機関がなく、車がないと移動が難しいのですが、他の村からも会場であるイズビダット村に来ていただけるよう、周遊バスを運行しました。また、小さな子どもたちのために、マーケットを開催する隣の部屋は子ども向けの活動を提供する場として、担当の若者が子ども向けの活動も提供しました。バス対応と子ども対応の他、お客様対応、記録係、BGM担当など、実行委員以外の若者もそれぞれ業務を担当、準備日と当日は、活動に参加する若者たち全員が集まり、会場の大掃除やブースのセッティング、看板などの装飾を施しました。商品のパッケージや看板は、アーティストとしても活躍するKnKスタッフのヌールのアイディアや助けも借りて、みんなで手作りしました。

準備の様子

お客さん対応係。次に生かすためアンケートも実施しました。

こだわったディスプレイ

可愛いパッケージ
当日は、普段私たちの活動に参加してくれている青少年や子どもたち、若者の保護者の方たちをはじめ、他の村からもお客さんが来てくださり、私たちの活動を地域の方たちに知っていただく良い機会になったのではと思います。若者たちにとっては、これまでのイニシアティブ研修などで学んだことを活かし、自分たちでやりたいと思ったイベントを企画し、ミーティングを重ねて準備をし、役割分担をしてみんなで楽しい1日を過ごす、今後の地域活動に活かせる良い機会になりました。

子どももお手伝い

多くの方が来てくれました
今回、実行委員として企画から関わった、ニヴィーンの報告をご紹介します。
こんにちは。私はイズビダット村のニヴィーンです。
私は30歳で、今回マーケットを企画し、担当した実行委員の1人です。このようなイベントに参加するのは初めてだったので、最初はとても緊張しました。また、今回のマーケットでは自分自身もブースを持ち、ペイントを施した木の飾りや絵画の販売、その場でお客さんにヘンナ(アラブ世界では、特にお祝い事の時に女性はヘンナという植物を使ったボディペイントを手や腕に施します)を提供するサービス、自宅で始めたメイクやヘアセット、ネイルのサロンのカタログを展示したのですが、そのブースにも人が来てくれるか不安でした。

ニヴィーン
でも、おかげさまで、多くの方が来てくださり、ブースを訪れた皆さんがハッピーに過ごしてくれました。ペイントをした木の飾りは売れなかったのですが、ヘンナはとても好評で、たくさんの方たちが来てくれて、自分自身もとても楽しい経験になりました。
他のブースでは、イズビダット村の友人であるタハニはピーナッツ・アーモンドバターの販売を、ユニスはロータスクッキーを使ったスイーツの販売、マルジナジェ村の友人たちは、パレスチナの特産であるチーズ、ピクルス、ハーブ、パンの販売、ジフトリック村の友人であるラーニアは、彼女の自宅で採れたハチミツの販売を、KnKのメンバーはポップコーンや豆のスナックを販売していました。
最後までお客さんが絶えず、お客さんにヘンナを描いている間にマーケットは終わり、とても美しい一日となりました。

ペイントの販売、ヘンナタトゥー

アーモンドバター

ロータスクッキースイーツ

ローズマリーとマルミーヤ(セージ)

チーズ、ハーブ、ピクルスなどの販売
ニヴィーンはマーケット当日の片付け終了後に、「自分が何かを企画して、スタッフとして携わり、自分の作品を売るなんて、自分自身も、そしてこの村に住む人たちも誰も、きっと想像していなかったし信じていなかった。だから今日、このファーマーズマーケットが実現して、私はとても嬉しい」と、話してくれました。
私たちの活動地であるヨルダン渓谷の4村は、ジェリコ市内から車で45分ほどかかる距離にあり、公共交通機関もないことから、他の市はおろか、村同士の交流も少ない場所です。今回のイベントを練習とし、今後は、村の人たちが自分たちの特産品をジェリコ市など村の外で販売し、ヨルダン渓谷のことを多くの方に知ってもらうイベントを開きたい、パレスチナの中で他の地域と繋がりが持てるイベントを開催したいと、若者たちは話しています。今回経験を積んだ若者たちが、今後、各村で、あるいは4村合同で、ファーマーズマーケットをはじめとした地域活動をしていく様子を見るのが楽しみです。

ハチミツ。パッケージでパレスチナを表現

KnKブースでは、ポップコーンなどのスナックを販売しました
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