国民の平均年齢24歳、カンボジアの子どもたちと共に。

国民の平均年齢24歳、カンボジアの子どもたちと共に。

2016.12.22

国境なき子どもたちは、2000年にカンボジアで活動を開始しました。1991年にパリ和平協定が結ばれ、内戦から徐々に復興へと向かう中、孤児になった子どもたちや路上生活を送る子どもたちなど、社会で「弱い」立場にある存在への支援が強く求められていました。私たちは、子どもたちが安全な生活環境の中、教育を通じて将来に歩みだせるよう、自立支援を行うことを決め、自立支援施設「若者の家」が誕生したのです。

2000年当時の自立支援施設「若者の家」

事業開始当初の「若者の家」

現在の「若者の家」

現在の「若者の家」の様子。多くの寄付が集まり、子どもの生活に必要な施設を増やすことができました。

事業開始から16年たち、カンボジアは今目覚ましい経済成長を遂げています。それでも「若者の家」には今も約30人の青少年が生活しており、まだまだ支援を必要とする子どもたちは多数存在しています。

「若者の家」で生活するセアン・チャンタさんは現在15歳、中学2年生です。首都プノンペン出身で、2014年10月から「若者の家」で生活しています。

チャンタさん

チャンタさん

 

好きな芸能人は、カンボジアでとても有名な歌手Him Sivornさん。
趣味は歌を歌うことと、ダンスをすること。
好きな学校の科目は歴史で、将来の夢は、教師になること。

中学校に通う彼女の1日は、日本の同年代と同じく学校生活が中心。

1日のスケジュール

5:00 起床
5:30 「若者の家」で朝食
6:00 学校に出発

「若者の家」から学校へ

学校に通う「若者の家」の女子たち(右から2番目がチャンタさん)

7:00-11:00 学校で午前の授業

学校の様子

学校での様子

11:30 「若者の家」に戻り昼食

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「若者の家」での食事風景 (C)Atsushi Shibuya

12:00-13:00 補習授業
14:00-17:00 学校で午後の授業
17:00-18:00 「若者の家」で英語クラス、日によっては友だちと過ごす

「若者の家」で行われる英語クラス。年齢問わず、コミュニティにも開かれています

「若者の家」で行われる英語クラス。年齢問わず、コミュニティにも開かれています

18:00 「若者の家」で夕食
19:00 宿題
21:00 就寝

 

チャンタさんが「若者の家」で生活することになった理由、それは貧困が関係しています。
プノンペンの貧しい家庭に生まれた彼女は、10歳から13歳まで国内の別の施設で生活をしていました。13歳になったとき、その施設がより「弱い」立場にある年少の子どもたちを新たに受け入れるため、彼女は施設を出なければならなくなり、KnKで生活することになったのです。

チャンタさんに話を聞いてみました。
* * *

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―家族について教えてください。
私は6人兄弟の一番末っ子です。両親は離婚していて、母は現在プノンペンでケーキを売る仕事をしています。家族でプノンペンに住んでいたのですが、生活が厳しくなり、私たちは支援団体が運営する施設で生活することになりました。その時、兄や姉の受け入れ先になったのがKnKでした。私は年齢が低かったので先に別の場所にいきましたが、13歳の時にKnKに移り、兄弟とまた暮らせるようになりました。

―もしKnKで生活していなければ、今どこで何をしていると思いますか?
もしKnKと出会っていなければ、今もプノンペンにいたと思います。お母さんと一緒にケーキを売る仕事をして、今のように学校には行けなかったと思います。

―KnKで過ごす2年間で学んだことは何ですか?
グループミーティングやワークショップ、ディスカッションなど、他の人と一緒に何かを考えたり、話し合ったりすることの大切さです。例えば、薬物やアルコール、暴力の問題とか。これは、自分たちにも本当に身近な問題だと思います。

―この2年間で一番幸せなことは何ですか?
学校に行くチャンスを得られたことです。あと、何でも話せたり、一緒に遊べる大切な友だちができたことです。

「若者の家」で、何でも話せる大切な友だちと出会いました

「若者の家」で、何でも話せる大切な友だちと出会いました

―今のカンボジアの若者で、一番の問題は何だと思いますか?
学校に行けない人が多いこと。あと貧しさも問題だと思います。今でも食べるものがない人もいるし、新しいことを経験したり学ぶ機会もない人もたくさんいます。

―この問題を解決するには、何が必要だと思いますか?
答えるのはとても難しいですが、やはりこういった子どもたちに支援が届けられることは大切だと思います。
チャンタさんの夢は学校の先生になること、この夢を実現するためには、大学まで進学し、教師となるトレーニングを積む必要があります。そのため、学業の継続は必要不可欠なのです。

* * *

しかしカンボジアでは、中学校の就学率が53.8%、つまり5人中2人以上は中学校に通えていないことになります。就学率は高校になると24.3%にまで下がり、4人中3人は高校に通えていないのが現状です。この傾向は、都市部と農村部でも差があり、農村部では5人中4人が高校に通えていません(カンボジア教育スポーツ青年省による2015年-2016年教育統計)。

学校は、ただ授業を学ぶだけでなく、子どもたちを保護し、またさまざまな生活の知識を身に付ける場所でもあります。そのような場所から離れてしまうことで、子どもたちの衛生や栄養、薬物やアルコール、金銭、社会性を学ぶ機会は大きく失われます。
実際、就学していない子どもの多くは、労働に従事することが多く、低い賃金での不法な就労や長時間労働の強制、搾取、暴力などさまざまな問題の被害を受けやすくなります。その結果、アルコール依存や薬物に手を染めるケースも報告されており、子どもの健全な成長が著しく損なわれることになりかねないのです。

ゴミ山で働く子どもたち/ 2005年  (C)Atsushi Shibuya

ゴミ山で働く子どもたち(2005) (C)Atsushi Shibuya

都市部でゴミ拾いをして生計を立てる家族/2005 (C)Atsushi Shibuya

都市部でゴミ拾いをして生計を立てる家族(2005) (C)Atsushi Shibuya

レストランに来る観光客に、食べ物やお金を求める子ども/2013

レストランに来る観光客に、食べ物やお金を求める子ども(2013)

縫製工場へ向かう女性たち。その中には10代の女子も多く仕事をしています/2016 (C)Atsushi Shibuya

縫製工場へ向かう女性たち。その中には10代の女子も多く仕事をしている(2016) (C)Atsushi Shibuya

 

国境なき子どもたちは、教育支援団体として、教育の力で将来を築くこと、自分の人生へ歩みだすことを応援しています。そのため学業を希望する子どもには、中学や高校を卒業できるよう支援し、大学生には奨学金支援を行い、夢をあきらめず実現できるようサポートしています。逆に言えば、このようなサポートがなくては、厳しい環境に生まれ育つ子どもたちが学業を修め続けることは非常に難しいという現実がカンボジアにはあるのです。

生まれた場所や環境によって将来の選択肢が限られてしまい、不安定な雇用条件で労働を繰り返し、その次の世代も学校に行けなくなる。このような貧困の連鎖の被害者となる子どもたちに手を差し伸べ、連鎖を断ち切りたいという思いこそ、カンボジア事業の原動力とも言えます。経済発展により16年前とは社会が大きく変わっている中、今なお厳しい状況に置かれている子どもたちのために、そして彼らの未来のために、何卒皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。

KnKカンボジアのスタッフは、信頼がおける大人の一人。スタッフは、衣食住だけではなく、一人一人の成長やさまざまな経験で傷ついた心のケアもしています。

KnKカンボジアのスタッフは、信頼がおける大人の一人。スタッフは、衣食住だけではなく、一人一人の成長やさまざまな経験で傷ついた心のケアもしています。

 

現地からのメッセージ

いつもカンボジアの活動を支えてくださり、誠にありがとうございます。
皆さまのおかげで、カンボジアの子どもたちは教育を受け、さまざまな知識を学ぶ時間を手にし、心も体も共に成長することができています。チャンタもその一人です。彼女はとても勉強熱心で、いつもよい成績を収めています。彼女の夢の応援のため、引き続き皆さまからの温かいご支援を、よろしくお願いいたします。

KnKカンボジア会長 スレイ・サカン

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