報告:パレスチナ現地代表 福神 遥
KnKはパレスチナにおける事業で、地域、学校、家庭において、子どもたちを多角的な視点で守り、支えることを目的とし、子ども支援センターでの活動、教員研修、保護者向けワークショップを行っていました。以前も保護者向けワークショップについて書きましたが、今回は、満足度アンケートの結果や事業終了後のことについてもご報告したいと思います。
保護者が安心して参加してもらうための工夫
2018年に始まったワークショップでは、社会心理ケアのカウンセラー資格を持つ他団体のスタッフが当初講師を務め、その後は、同じ資格を持つKnKスタッフと子ども支援センターのスタッフが講師となり、地域の保護者向けに、体罰を使わない適切なしつけ方法や、子どもの年齢に合わせたコミュニケーション方法、子どもとの信頼関係の築き方などを学べる場を提供しました。毎回、5~15名ほどの保護者がグループとなり、1グループにつき4回ほどのセッションを行っていました。ワークショップは、講師からの一方的な講義にならないよう、ゲームやグループワークもたくさん取り込み、保護者が安心して心地よく参加できるよう、工夫を凝らしました。例えば、初回で自己紹介ゲームを行ったり、講師からの問題提起に対して、保護者同士が話し合って答えを探すような時間を多く設けました。ビーズを使ってアクセサリー作りを行った時は、手を動かしながらおしゃべりすることで、参加者たちはリラックスでき、他愛ない会話の中で自分の悩みを打ち明けてくれましたし、風船を使うゲームでは、「風船だけで大人の自分がこんなに楽しめるなんて!」「こんなにはしゃいでいる姿を子どもが見たら驚かれそう」という声が聞こえるほど、保護者の方たちが楽しんで参加してくれました。
保護者同士でストレス発散方法を共有
また、子どもとの関わり方だけではなく、家事や仕事に忙しい保護者の方たちが、一日のスケジュールを管理しやすいよう、タイムマネージメントの仕方を学べる時間を設けたり、保護者の方たちが感情の表現方法や発表方法を学べる時間も設けました。特にコロナ禍においては、ロックダウンや休校措置で、子どもと家で過ごす時間が増え、ストレスを抱える保護者も増えたことから、保護者同士でストレス発散方法を共有したり、悩みを打ち明けて一緒に解決方法を探ったりもしました。私たちの事業の中で、教員向け研修はコロナ禍ではオンラインでも実施しましたが、家庭での悩みを打ち明ける当ワークショップは、参加者が家庭から参加するオンラインでの開催は難しいと判断し、感染状況がひどく、外出禁止令が出ていた時には、Facebookにて保護者向けグループを立ち上げて、講師や保護者の方たちが自由に投稿、話せる場を作りました。
口コミで広がった評判、満足度調査の結果は?
ワークショップは、当初はジェリコ市の子ども支援センターに通う保護者を対象に行い、その後は地域の保護者たちを対象に行っていましたが、口コミで評判が広がり、開催希望の声を市外からも聞くようになりました。2018年後半からは、センターの他、小学校、アクバットジャバル難民キャンプ、ヨルダン渓谷の村、ジェリコ市の女性支援センターでもそれぞれワークショップを開催、2018年から2021年で、延べ373人が参加しました。
それぞれのグループにおいて、最終日にはアンケートを行っていたのですが、毎回10割の保護者が満足したと答えており、「もっと参加したいから、ずっと続けてほしい」という声も聞かれました。前向きなコメントが多く寄せられたので、少しご紹介いたします。
ワークショップでどんなスキルを身に着けることができましたか?
・子どもとの関わり方で問題が起きた時、もっと簡単に解決できる方法を学べた
・自分自身に自信がつき、子どもとのやり取りが楽になった
・自分の思いを自由に表現したり、解放していいんだということを学んだ
・予定の立て方と時間の使い方について
・ポジティブでいることの大切さと、適切なしつけ方法
ワークショップで学んだ内容で、今後子どもとの関わりの中で役立ちそうなことは何ですか?
・愛情と信頼が大切だということ。子どもの性格を形作るのは彼ら自身である、ということ
・思春期の子どもとどう関わればいいか
・手をあげるのではなく、落ち着いて子どもに対応する方法について
・子どもが自信や価値観を築く方法
・自分の考えを押し付けず、子どもたちの意見を聞くこと
また、今まで自分の悩みをなかなか打ち明けることが出来なかったけれども、ワークショップで友人が出来て、彼女たちには話せるようになった、参加者が困っていることに対して、自分の経験を話すことで、役立ててると思えて嬉しかったとの声も聞かれました。
私たち国境なき子どもたちのジェリコでの活動は2021年8月に終了しましたが、事業終了後も、子ども支援センターのカウンセラースタッフにより、保護者向けワークショップは継続されています。
ジェリコは、パレスチナの中でも保守的な価値観を持つ人が多く、家族の中で起こることは例え小さな問題であっても、外の人に相談するのは恥ずかしいと考える人たちが多くいます。そのような地域性の中、時に孤立しがちな母親たちにとって、この保護者向けワークショップは、単なる学びの場でなく、自分が楽しんだり、ストレスを発散できたり、同じ年頃の子どもを持つ友人ができて、彼らと思いを分かち合える、大切な場所であり、今後もこの活動が続くことを願います。
※パレスチナにおけるKnKの活動は、外務省「日本NGO連携無償資金協力」の活用、ならびに日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。
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