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【パレスチナ】子どもたちとの新たな絆を育む保護者向けのワークショップ

報告:パレスチナ現地代表 福神 遥

今まで、パレスチナでの学校教員、子ども支援センターでの活動についてお届けしてきましたが、ジェリコでは、教員向けのトレーニング、子ども支援センターでの活動に加えて、保護者向けのワークショップも行っています。学校、地域、家庭と、多角的な視点でジェリコの子どもたちを支え、守れるよう、働きかけるためです。

子育ての悩みを解決する場

ジェリコは、パレスチナの中でも特に保守的・伝統的な暮らしをしている人たちが多く、また、日本と比べるととても濃い家族の絆や繋がりを持っています。 家族の繋がりが強いことは、良い面を持っている一方、家族の中で起こった問題が外に出にくかったり、外に仕事を持たず、家事に従事している女性が悩みを相談したり、日常的に接する相手が家族だけだったり、また例えば子どものことで悩んでいても、そういった悩みが家庭の外に出ることを家族の恥と思い、解決策を見つけられないなどの一面も持っています。
そうしたジェリコにおいて、KnKが行う保護者向けのワークショップは、保護者が学ぶ場であり、保護者同士が繋がる場、開催場所である子ども支援センターと保護者が繋がる場にもなっています。

保護者が参加するワークショップ

昨年から始まったワークショップは、1グループに対して4~6回連続して行われ、先月からは第3グループ向けの回が始まりました。今回は、15名のお母さんたちが、社会心理ケアのカウンセラー資格を持つKnKスタッフと子ども支援センターのスタッフと一緒に、子どもへの適切なしつけ方法や子どもとのコミュニケーション方法、思春期の子どもと接するときの注意点などを学んでいます。
ワークショップは、自己紹介ゲームから始め、座学の他にもゲームや共同作業を取り入れて、講師からの一方的な指導やカウンセリングではなく、保護者が参加できる時間になるよう、工夫がされています。

例えば、子どもに関してどんなことが心配か、どんな課題に直面しているか、どんな時に難しさを感じるかといった質問は、人前で発表したり、初対面の人に打ち明けることは、なかなか難しいものです。ですが、例えば「9~12歳の男の子」「3~6歳の女の子」とだけ書かれた紙に、「こういった年の子どもたちと接するときの難しさについて、紙に書いてみてください」と聞くと、たくさんの意見が出てきます。

参加者みんなで考える時間

1人1人が発表する場合だと、どうしても「自分の問題」として、発表することになってしまいますが、こういったアクティビティにすることで、「自分の問題というよりは、他人の問題」として、子どもと接するときの難しさを挙げることができます。また、グループでの作業にすることで、より多くの意見が出たり、保護者同士が仲良くなるきっかけになったりもします。難しさや課題点がいくつか挙がったら、講師はそれぞれに対して、どうやって対応したらいいか、1つ1つ丁寧に教えていきます。保護者から「私はこうやって対応した」「これは失敗だった」という体験談が出たり、「こうするといいのでは?」という意見が出たり、参加している人たちみんなで考える時間にもなります。

子どもたちの変化を実感

今までワークショップに参加した保護者は、全員が女性です。彼女たちからは、「今まで子どものことで困っても、相談できる相手は家族しかいなくて、自分と同じような考えしか返ってこなかったけど、全然違う意見を聞くことができた」「同じような悩みを持っている保護者と悩みを共有できただけで楽になった」「1人でカウンセリングを受けに行くこともできるけど、グループで一緒に作業したり、対応法を一緒に考えることができて楽しい」といった意見もあり、狭いコミュニティ、強い家族の絆の中で時に孤立しがちな女性たちにとって、同じ年代の子どもを持つ女性同士の友人ができたり、自分の悩みについて素直に話せる場ともなっているようです。
ワークショップに参加している1人、マーリさんは、6ヵ月、6歳、8歳、11歳の4人の男の子のお母さんです。3回目のワークショップの後、「目的がはっきりしていて、現実的なことを教えてもらえるので、参加してよかったです。家に帰って子どもと接するときにすぐに使えるテクニックを学ぶことができて嬉しいです。」とコメントを残してくれました。
子ども支援センターに通っている子どもの保護者がワークショップに参加し、子どもの変化をスタッフが間近で感じた例もあります。暴力がちでよく友だちと喧嘩をしていた男の子は、礼儀正しく、人の話を大人しく聞けるようになりました。子ども支援センターと家庭、どちらかで良いしつけや指導ができていても、もう一方では違う対応では、子どもは何が正しいのか、わからなくなってしまいます。子どもを多角的にサポートすることの大切さを垣間見ることができ、保護者からも「子どもが自分の言うことをきちんと聞くようになった。適切な話し方を学んだおかげだと思う」とのコメントがありました。

男性が参加しやすいワークショップも

今まで参加していた方からの意見で「ぜひ夫(父親)にも参加してもらいたい」との意見もあり、今後は男性が参加しやすいワークショップ作りや、ジェリコ市街地に住む人たちを対象としたワークショップも開催していきたいと思います。

※本事業は、外務省・日本NGO連携無償資金協力の助成と皆さまからのご寄付で実施されます。

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