報告:KnKスタッフ 久野 由里子
前回記事でご報告させていただいた通り、パレスチナ自治区ジェリコで教育事業を開始しました。
パレスチナ自治区は1995年の暫定自治拡大合意によりエリアA、B、Cに分割されています。
エリアA:パレスチナ自治政府が治安・行政の権限を保持
エリアB:イスラエル政府が治安の権限、パレスチナ自治政府が行政の権限を保持
エリアC:イスラエル政府が治安・行政の権限を保持
エリアCにおいては住宅、学校等の建設にイスラエル軍の許可が必要になるほか、イスラエル軍からの撤去命令の危機にさらされています。ジェリコ県全体ではエリアCの面積は88%にものぼります。イスラエルの建設制限により、狭い校舎、運動に十分なグラウンドや公園がなく、遊べないことから子どもたちはストレスをためやすく、またストレスを発散する場所、方法がないため暴力的になってしまう子どもが多いとされています。
このような背景の中、本事業は学校および地域の子ども支援センターと連携し、子ども支援を充実させることを目的としています。
具体的には、学校教員と子ども支援センター職員に演劇、美術、音楽、心理ケアの研修を実施、教員や職員が子どもたちに活動を提供することで参加した子どもたちの心理面の課題が改善することを目指します。
これまで教育省やジェリコ市と協力し、学校や教員を選定、子ども支援センター職員を採用しました。そして8月には、教員、子ども支援センター職員を対象とした研修を開始しました。
演劇、美術、音楽の研修では、それらの技術向上のみが目的ではなく、それらを通し、子どもたちが自己表現や非暴力コミュニケーションを身に着けることを目指しています。
研修の最初は教員も職員も少し表情が硬いようでしたが、研修が始まれば10分で研修を楽しんでいる様子が表情からわかります。
演劇ではまずお互いを知るアクティビティを実施。一人ずつ自分の名前の後に何か動きをつけて自己紹介をしてみます。それぞれ個性があり、またボイスパーカッションのできる職員がいたりと盛り上がりました。
音楽では音階から研修をはじめ、教員たちも大きな声を出して参加しています。
美術では、まずは教員が授業を実施する中でぶつかる課題の共有を行いました。また、よい成績をおさめるためではなく、楽しむような授業を実施していこう、という方向性も共有されました。
研修を受けた子ども支援センター職員が早速学んだことを活かし、子どもたちに活動を提供したところ、子どもたちはとても喜び、「次の活動はいつ?」と口々に言っていたそうです。
今後、ますます活動を充実させ、子どもたち自身が自分の思いを表現したり、希望を持てるような活動を提供していきます。
※本事業は、外務省・日本NGO連携無償資金協力の助成と皆さまからのご寄付で実施されます。
Facebookでも随時各国の活動報告をさせていただいています。