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パレスチナ:コロナ禍でも継続した教員研修

報告:パレスチナ現地代表 福神 遥

KnKはパレスチナのジェリコ県において、地域の学校教員と子ども支援センター職員への研修や、課外活動の実施を支援してきました。事業期間中、第一グループは2020年1月に研修を終えたのですが、今回は、2019年9月から2021年7月まで行った、第二グループの教員・職員向けの研修について、ご紹介いたします。

工夫を凝らした研修

研修は、音楽、美術、演劇、心理ケアのグループに分かれ、各教科10人ほどの公立・私立学校教員と子ども支援センターの職員が参加し、パレスチナでの経験が豊富な地元の4団体から講師を派遣していただきました。ジェリコ県外の団体に講師を行っていただくことで、特に子ども支援センターがジェリコ県外の団体と繋がりを持ち、ネットワークを広げることにも役立ちました。

それぞれ演劇や音楽の知識や経験がある教員たちがほぼいない中、教員自身が楽しく学び、授業や活動で簡単に活かせるよう、講師の方たちが工夫を凝らした研修が行われました。

美術

美術の研修は、Visual Arts Forum (ヴィジュアル アーツ フォーラム)のジャーセム先生が担当しました。アーティストとして活躍するジャーセム先生は、物を描くときの捉え方や線の引き方、立体物や影の描き方、色の作り方など、美術についての基礎的な知識や技術からプロフェッショナルなレベルまで、ご自身が持っている技術を惜しみなく教員たちに教えてくれました。また、教員が実際にどんな授業を行っているかを見に学校に行った際に、チョークを使って黒板に文字を書くのに苦戦している教員を見て、黒板とチョークの上手な使い方を研修内容に取り入れたり、生徒に配るプリントに動物を描きたいけれども、うまく描けないという教員の声を聞いて、動物のイラストを簡単に描くコツを教えてくれたりと、教員が必要なことを随時研修内容に盛り込み、教員が必要としている内容を学べる研修が行われました。

音楽

音楽の研修は、Al Kamandjati (アル・カマンジャティ)のイブラヒム先生が担当しました。パーカッショニストのイブラヒム先生の研修では、ボディパーカッションやリズム遊びなど、楽しみながら音楽を学べる内容から研修が始まりました。また、「音楽=歌」「音楽=楽器」と思い込み、音楽を授業で使うのは難しいと思う教員たちが、すぐに学校やセンターで使える技術を学べるよう、音楽的な要素を盛り込んだゲームや自己紹介方法を扱いました。教員自身が音楽に慣れてからは、音符の読み方や楽器の弾き方が研修に加わり、最終的には、研修の中でオリジナルのメロディを全員で作り、それぞれが自分の教科に合わせた歌詞を考えて、オリジナルソングが誕生しました。特に、子ども支援センタースタッフが歌詞を考えた、アラビア語の難しい発音や派生形を歌に合わせて学べる歌は、とてもわかりやすく、他の教員も授業で使いたいと、研修最終日にみんなで覚えました。

演劇

演劇の研修は、The Freedom Theater (フリーダムシアター)のファイサル先生が担当しました。研修では毎回、教員が授業の中で生徒の集中力が切れた時やクラスをグループ分けしたときのアイスブレーキングなどで使える、体やアイコンタクトを使って表現力や集中力、チームワークを養うゲームが紹介されました。また、「教員は演者であるべき」というファイサル先生の考えのもと、生徒の注意を惹くための話し方や立ち振る舞い、生徒に何かを教えたり伝えたりする際に教員が様々なキャラクターを演じることの必要性、呼吸方法など、興味深い研修が行われました。研修を通して、教員同士のチームワークが深まり、教員とファイサル先生との間に信頼関係が生まれている様子が見られ、悩みを共有して解決策を一緒に探したり、お互いへの印象が研修を通して変わっていった様子を発表し合ったりと、演劇という教科を越えた研修が行われました。

心理ケア

心理ケアの研修は、Palestine Red Crescent Society (パレスチナ赤新月社)のムハンマド先生が担当しました。前半は、学校ごとに研修を行い、カウンセラーと教員全員に研修に参加してもらいました。日々の授業の中で問題を抱えた子どものサインをどうやって見つけるか、子どもの保護について、教員と生徒のコミュニケーション方法など、日々子どもと関わる教員たちに、子どもと関わる基本的な知識を広く学べる機会を提供しました。後半は、学習の遅れなど特別に支援が必要な生徒を受け持つ教員のみに、より専門的な研修を行いました。ムハンマド先生が様々な例を出して、教員がどうやって対応すべきか、教員同士が話しあって解決策を探るケーススタディでは、何か問題が起きた時に自分自身の経験のみでしか対処できなかったが、ムハンマド先生からの専門的な意見と一緒に他の教員の経験や考えを聞くことができてよかったとの声がありました。

コロナ禍でのオンライン研修

2019年に始まった研修ですが、2020年は新型コロナウイルスの影響で学校が休校していた時期は対面での研修ができず、オンライン研修を行いました。間が空いてしまったために復習を目的とした研修でしたが、外出制限がかかっていた中での研修は、「オンライン上でも久しぶりに顔を見て研修を受けることができてよかった」との声が聞かれました。

学校再開後の柔軟な研修体制

学校が対面での授業を再開してからの2020年9月以降は、私たちの研修も感染対策を取り、対面で行いました。パレスチナの学校は、2020年3月から8月は対面での授業は行われていませんでしたが、子どもたちに教育を届けようと、教育省主導で代表教員によるテレビやラジオ、インターネットを使った授業が行われていました。また、新学年スタートの2020年9月からは、1クラスあたりの生徒数が多い学校は二部制の授業が行われたり、オンライン授業が行われたりと、教員たちは自身が不安な思いを抱えながらも、様々な方法に対応しなければなりませんでした。

閉校と外出制限の中では、子どもたちも家でしか過ごせない時間が多くなり、体を動かして遊んだり友だちと会ったりできず、不安感を抱えてふさぎ込んでしまったり、兄弟げんかが増えたとの声が保護者から寄せられたこともありました。

学校が再開してからも、国内で感染者が増えると度々休校措置が取られ、子どもたちは学習の遅れが目立ち、毎朝遅刻せずに学校に行くことが難しくなった生徒もいました。難しさを抱えてしまった子どもたちと日々向き合う教員もまた、ストレスを抱えるようになってしまったため、私たちの研修では、研修の中で教員たちが楽しみ、悩みがあれば、研修の中で講師や教員から意見を聞いて解決策を探すなど協力し合えるよう、研修内容を工夫しました。

研修に参加した教員の声

2年近くに及んだ研修を修了した教員たちに実施したアンケートでは、10割の教員が研修に満足しており、「簡単に授業で使えるゲームをたくさん学べてよかった」「同じような教え方しかできなかったが、新しい教え方を学べた」「研修を通して別の学校に勤める教員と仲良くなり、視野が広がった」「生徒たちがより積極的に授業に参加するようになった」「仕事の面だけではなく、今後の人生で長く使える技術を学べた」などのコメントが寄せられました。

美術

音楽

演劇

心理ケア

※パレスチナにおけるKnKの活動は、外務省「日本NGO連携無償資金協力」の活用、ならびに日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。

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