活動ニュース

「ほほえみドロップインセンター」:子どもたちを取り巻く環境に対しての取り組み

報告:KnKスタッフ・バングラデシュ事業担当 三喜 一史

国境なき子どもたち(KnK)では、2011年よりバングラデシュの首都ダッカのショドルガットにてストリートチルドレンのためのドロップインセンター(DIC)事業を実施してきました。DICは子どもたちが日中自由に立ち寄れる場所として開かれており、ここでは路上で生活をしている子どもたちへの直接の支援を提供しています。加えて、事業開始時より子どもたちの周りの環境へのアプローチも重要と考え、変化を起こせるように取り組んできました。
DICの活動内容についてはこちら:https://knk.or.jp/bgd190228/

ストリートチルドレンを取り巻く環境とリスク

まず、ショドルガットという地域ですが、ここにはフェリーの停泊場所もある港があります。河川の多いバングラデシュにあって移動手段として船やフェリーを利用する人は多く、全国から多くの人々がダッカに来る際の玄関口となっています。多くの方々が仕事の機会を求めて、農村部から移動してきますが、単体でもしくは家族と共にフェリーでダッカにやってきます。その中には子どもだけで行動している姿も見られます。
ショドルガット周辺は一般的な商売をされている方々もいますが、主にフェリーの乗客相手への水売り、荷物運びをする方々、また、市場で売られている野菜の切れ端や港周辺での工事や船の修理で出たスクラップなどを拾い集め、売るなどして生計を立てている人々もいます。その中で、仕事を求めている子どもたちにも仕事を分け与えながら収入を得ている人々も多く見受けられます。

写真の通り、ショドルガット港は決して綺麗に整備されているとは言えない地域です。一般的なゴミに加え、前述の工事現場や船の修理中に出た資機材の余りや破片と思われるものが散乱しています。目の前の河は生活用水で汚染されており、そこで洗濯や身体を洗うなど水浴びをする子どもも少なくありません。もちろん食べる物も安価で売られているスナック菓子などが中心で栄養が偏ってしまいます。この様に、路上で生活する子どもたちは怪我や病気などのリスクが高い環境の中で生活しています。

衛生環境だけでなく、非行や大人たちから暴力を振るわれる、というのも事業開始当初は当たり前のものとなっていました。路上で生活をしている子どもたちの多くは様々な理由で学校を中退し、家を出て、現在の場所に辿りつきました。その中で善悪の区別がつけるような教育を受ける機会を逸してしまい、周りに流されるまま、喫煙や暴力的な行動を起こしてしまい、更には薬物に手を染めるケースも珍しくありませんでした。また多くの人々が行き交う港において子どもを邪険に扱う人も多く、暴力をもって追い払ったり、子どもたちがある意味頼りにしなければならない雇用主からも長時間に及んで働かされたり、身体的な暴力に晒される環境下で暮らしています。ちなみにですが、その雇用主たちも路上生活を経て現在に至る方々が多く、彼らもまた過酷な環境下を経験してきています。自分たちがされたことと同じことをしているだけ、と聞きました。

ショドルガットのコミュニティの方々とのコミュニケーション

この様に厳しい環境で生活している子どもたちの状況を受け、DICでは食事の提供など子どもたちへの直接的な支援だけでなく、ショドルガット港のコミュニティの人々とのコミュニケーションにも努めてきました。
日常的にDICのスタッフが子どもたちへの声掛けを行い、DICへの誘導を図っていますが、その中で彼らの近くにいる大人たちとも話しをし、子どもたちの様子を伺い、新たにショドルガット港にやってきて路上生活をしている子どもがいないかなどの情報収集に努めています。また同時に、DICの活動についても逐次周知を行い、スタッフだけでなく地域の方からもDICに繋いでいただくよう協力を仰いでいます。
この様な日々の対話に加えて、DICでは年に何回か地域の方々を招いてDICの活動内容の紹介と子どもの権利や子どもたちにとって何が大切なのかを伝えることを目的とした啓発活動も実施しています。子どもたちと関わることの多い雇用主や日々交通手段として利用しているボートタクシーの船頭さんを招いて理解を深めていただくよう努めています。

10年以上に及ぶ地域の人々に対しての取り組みの結果、子どもたちからも大人からの暴力が減ったとの声が聞かれます。また地域の方々の子どもたちに対する見方にも変化があり、喫煙など良くない状況を見かけた際には注意するなど、関心を示してくれる人も増えたとのことです。そして、新型コロナウイルス感染症が拡大し、現地政府よりロックダウンが発令された際にはDICも一時休館を余儀なくされましたが、この前例のない状況下で地域の方々が子どもたちへの食事の提供や様子を見てくださるなどサポートを買って出てくださいました。特に、何度かフェイスブックにも投稿させていただきましたが、近所のレストランオーナーがお昼の提供と食べる場所を提供してくださり、DICが活動を自粛せざるを得ない状況下でも子どもたちに食事だけは提供できる体制を整えてくれました。
当時の記事はこちら:https://knk.or.jp/bgd211006/

バングラデシュにおける路上で生活する子どもの数は全国で推定100万人、首都ダッカだけでも推定30万人とも言われています。正確に人数を数えることは困難でありますが、年々増え続けているとも言われています。すぐに「ストリートチルドレンをゼロに」、というのは現実的に難しいかもしれないですが、現状の中で、少しでも子どもたちの権利・尊厳が守られ、子どもらしく過ごせる場所が持てるように、引き続き、地域の方々を巻き込んで、協力して、子どもたちをサポートできるように努めて参ります。

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