活動ニュース

『ショヘル ダッカへいく』 ~絵本で知ろう!バングラデシュの子どもたち~

バレンタイン企画

『ショヘル ダッカへいく』
~絵本で知ろう!バングラデシュの子どもたち~

バングラデシュの首都ダッカ。
ここではたくさんの子どもたちが路上で暮らしています。
彼らは、ストリートチルドレンと呼ばれています。
国境なき子どもたち(KnK)は、2011年からダッカで「ほほえみドロップインセンター」を運営し、路上で暮らす子どもたちにに、食事やレクリエーション、基礎教育のほか、けがや病気の治療、健康管理、カウンセリングなどを提供しています。

ダッカのストリートチルドレンは、30万人もいると言われています。
その人数は、東京都の中学生総数に匹敵します。
それほど多くの子どもたちが、なぜ路上生活をしているのでしょう?

子どもたちが【なぜ】そして【いつ】ストリートチルドレンとなり、KnKの「ほほえみドロップインセンター」に来るようになったのか、ショヘル(9歳)が教えてくれた話を元に、絵本を作りました。

ショヘルがどのような経験をして路上生活をスタートし、KnKの「ほほえみドロップインセンター」にたどり着いたのか、そして今どんな気持ちでいるのか、ぜひ読んでみてください。

PDF絵本(4,702KB)をダウンロード

※この絵本は、2013年から2015年にかけて、KnKバングラデシュの活動に参加した渡辺三帆さんとKnKが作成しました。

渡辺三帆さん(中央)

『ショヘル ダッカへいく』作者 渡辺三帆さん特別インタビュー

Q. どうしてこの絵本を作ろうと思われましたか。

「ダッカのストリートチルドレンってどんな子たちなの?」「ドロップインセンターってなに?」「その活動をすることで子どもたちの何が変わるの?」という疑問を、一人のストリートチャイルドが見ている景色を通してシンプルに伝えたかったからです。

ドロップインセンターは、養護施設のように数十人の子どもたちを一定期間引き取り、日々の共同生活を通して社会性を身につけ学校に通えるよう支援をするものではありません。路上にいるすべての子どもたちに対して扉を広く開け、その時その時に必要な支援をするのがドロップインセンターです。そのため、数字で成果を見せるのがとても難しい活動です。この絵本では、数字では見えてこないドロップインセンターの活動の成果を、ストーリーとして伝えています。

バングラデシュにて2014年撮影。渡辺さんと、当時センターに通っていた男の子

Q. 読んでくださる方に、絵本を通じて何を伝えたいですか。

「私たちはストリートチルドレンを『自立』させる活動をしてるんじゃない。だってもうこの子たちは一人っきりで 世間の波に揉まれながら生きていってるんだから。私たちは、『もっと周りを頼ってもいいよ、みんなで助け合いながら生きていこうよ』って、ストリートチルドレンに教える活動をしているんだ」これは、バングラデシュでKnK創設者のドミニクさんが言った言葉です。

ストリートチルドレンと聞くと、「かわいそう、でも関わるのは怖い」というイメージを多くの人は持っています。でもストリートチルドレンだって、 次はどんなことをして遊ぼうかな、と目を輝かせて考えているどこにでもいる普通の子どもです。これまでの短い人生の中、自分ではどうしようもない環境によって「ストリートチャイルド」という肩書きがついただけで、自分をストリートチャイルドだとすら思っていない子が大半でしょう。そんな、日々を路上で一生懸命生きている「普通の子ども」たちにとって、KnKのドロップインセンターがどんな存在なのか、伝わったらなと思います。

Q. ドロップインセンターのことを思い出されることはありますか。

たくさんの子どもに出会い心動かされましたが、その中でもココン(写真)のことは強く印象に残っています。

将来の夢は?との質問に、「家族が欲しい。だって僕は家族ってのを持ったことがないから」と答えた当時10歳くらいだったココン。

むっつり顔で、話す時は恥ずかしそうに視線をそらせるココンでしたが、ちょっかいを出されやすい小さな子たちや、女の子たちのことを常に気にかけ、必要な時にはさりげなく手を差し伸べる姿を何度か目にしました。

大好きだったお母さんに先立たれ、守ってくれるべきである家族から虐待を受け、小学校にも行かせてもらえず、友だちと呼べる友だちもいなかった、と話すココンが、それでも自分の中でひっそりと優しさの種を育て、その種を他の子どもたちに分け与えていく。今でもココンのことを考えると、キリキリする痛みが優しい気持ちで緩和され、よし私も頑張ろうと思う活力になっています。

2019年に撮影したココン。現在は、船着き場のポーターとして働いている。港で働く許可証を誇らしく見せてくれた

また、毎日子どもたちを見守っているセンタースタッフについて思い出します。私がセンター長のタリクに出会った時、タリクはソーシャルワーカーの1人として働いていました。決定権のある立場ではありませんでしたが、静かな熱意を持っている人でした。子ども一人ひとりと向き合って話をし、互いを理解することが大切と常々言っており、実践していました。

ドロップインセンター、センター長のタリク(左)

「あの子の仕事場のボスは要注意人物だから気をつけるように言っておいた」、「あの子は最近お菓子しか食べてないから、ご飯の時間だけでもいいからセンターに来るように伝えといた」、「子どもたちを動物園に連れて行きたいんだけど、経費が足りない。ここをちょっと削ったら行けるかもしれないから計算しといた」、「子どもたちが授業で集中できないのは、そういう訓練を受けていないから。ちょっとずつゆっくり何回も時間をとって、遊びながら学べるようにした方がいい」

私はタリクから、どんな小さな声にも耳を傾けること、向上する道を探し続けること、そして人に対して誠実でいることを教えてもらいました。今でも、あの子は元気かな、とふと思い出す時、タリクに写真を送ってもらってセンターの近状を聞いています。

Q. 路上で暮らす子どもたちへの想いを聞かせてください。

いろいろな理由でダッカにやって来た子どもたちに出会いました。お母さんと一緒に行った市場で迷子になって家に帰れなくなってしまった子、お父さんの再婚相手にいじめられて逃げた子、通っていた学校の先生からの体罰が嫌で不登校になり、それを家族から責められて家を飛び出した子、大きな街の夜景を見てみたいね、と友だちと一緒に電車に乗ってやって来た子、「お兄ちゃんやお姉ちゃんが学校に通えるように僕がダッカで働くんだ」と、誇らしそうに話す小さな肩の子。どの子も人生のスタートラインに立ったばっかりの子どもたちです。それなのに、すでに目の前の道はハードルが山積み。

これから長い人生で、成長していくつぼみはずっとつぼみのままかもしれないし、それすらもぎ取られてしまうかもしれない。もしかしたら大きな花を咲かせるかもしれない。どんな子どもにとっても自分の人生で主役を得るために必要なものは、そこへいくための機会と資源です。

 

もちろん最終的には、そうした不平等な社会の構造的な問題が根本的に解決されなければなりません。でもそれが叶うまでの間は、私たち一人ひとりが、そうした不平等を許す社会に対して声をあげ、しいたげられている一人ひとりの味方でいるよ、サポートするよ、と手を挙げ実践することが必要だと思います。

寄付する
寄付する
資料請求

カテゴリー

月別アーカイブ