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フィリピン:「若者の家」で暮らす子どもたちのストーリー/共通の場に立って

フィリピンでは、育児放棄や虐待された子ども、ストリートチルドレン、法に抵 触した青少年など特別な保護を必要とする子どもたちが、家庭のような環境で生 活し、教育と愛情を受け、健全な社会生活ができるよう自立支援施設「若者の家」を運営しています。

そこで暮らす子どもたちから届いたストーリーをご紹介します。
KnKフィリピンスタッフのメッセージとあわせてお読みください。

“On Common Ground”
共通の場に立って

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僕たちの類似点が僕らを共通の場に連れてきた。僕らはネル(16歳)、ジェー(16歳)、ディング(17歳)*、マニラ首都圏の南部の町に住んでいた。僕らはとても怠け者で学校には行かなかった。たいてい勉強はとてもつまらないと思っていた。学校に行ったことがないジェーを除いては。祖母と叔母と暮らしていたジェーを引き取った後、ジェーの両親は彼に学校に行くよう働きかけなかった。幼稚園の時は行っていたけれど、時々気が進まなくなってきた。それで、彼は学校に行かなくなった。僕、ディングと言えば授業をさぼるのが好きで、いろんなところをぶらぶらしていた。お金を稼ぐ方が、授業に出るよりもずっとよかった。一方、ネルは機嫌が悪い時は週に2、3回休む癖があった。
一つだけ確かなことは、僕たちは学校に行くこと、そしてその大切さについて気にしたことはなかった。
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僕らは違う仲間のグループがいて、違う趣味があり、違うことに楽しみをおぼえていた。ネルが12歳のとき、授業に出るよりも友だちについていろんなところを遊びまわっていた。一方ジェーは年下のきょうだいの世話から逃げるため、家から逃げ出していた。なぜ、わざわざ最近会ったばかりのきょうだいの面倒を見なければならないんだ。彼は血はつながっているけれど一緒に暮らしていなかった年下のきょうだいへの愛着を感じたことはなかった。家にいるよりも友だちと時間を過ごす方がよっぽどよかった。そして僕、ディングは、友だちにからかわれてから学校には行かなくなった。


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最初は家の外で一日過ごしただけだった。そのうち、それが1週間になり、長い時は4ヶ月になった。僕たちの母親はいつも探しにきたけれど、次の日には僕たちは家出し、同じ場所で落ち合った。家出したときはいつもその場所で他の仲間や何人かの大人と一緒にそこにいた。そこは僕らの巣になった。僕らの人生はそこで繰り広げられた。なんて簡単でエキサイティングな生活だろうと思った。2019年、油断した僕たちを警察が捕まえたそのときまで。
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警察官が僕たちを青少年収容所に連れて行った。ショックと恐怖が僕たちの心を覆い隠した。人生で初めて不安と責任を感じた。「僕たちに何が起こるんだろう」「僕たちは死ぬんだろうか」「彼らは拷問するだろうか」そんな問いが心に浮かんだ。僕たちは心の中で母親が助けてくれることを熱望した。でも僕たちの心配事は何も起こらなかった。ただ、僕たちが犯した罪のせいで僕たちの母親が拘置されたことを知った時、悲しさと後悔が出てきた。心の中で泣きながら、僕たちは心を入れ替えた。

僕たちの家族は僕たちを受け入れる準備ができていないから、僕たちはKnKの「若者の家」に送られた。KnKの「若者の家」に住みながら、皿洗い、洗濯などの家事を学んだ。そしてルールを守ること、お互いに協力し合うことも学んだ。ここは施設と言うより家みたいなので、すぐに安心できた。ここの人たちは優しいし、話しやすい。ここの子どもたちも僕たちを歓迎してくれて、心が温かくなった。初めて出会ったときから一緒に遊ぶことができた。ここで生活しながら勉強を続けられることを楽しみにしている。様々な活動を通して僕たちの心とスキルが向上しますように。そしてすぐに家族のもとに帰れますように。

『若者の家』で勉強する子どもたち

*子どもの名前は全て仮名です。

KnKフィリピンスタッフからのメッセージ

子どもが重大な過ちを犯したとき、誰の責任でしょうか。我々は、ただ彼らを指さし、無責任であることや自覚の欠如を責め立てることができるでしょうか。あるいは、彼らが怠けているから過ちを犯したのでしょうか。
「子どもを育てるには村が必要」ということわざがあります。これは、子どもが夢や希望をかなえられるような、安心で健康的な場を提供するには村(多くの人)が必要だ、ということを意味しています。つまり、子どもたちが重大な過ちを犯したり、法に触れるようなことをしたとき、責任を負うのは村(地域社会)だということです。
成長の過程で、子どもは安全や保護、居場所感や家庭のぬくもりを求めます。その中で、親がどれだけ自分を愛しているか、どれだけ自分を気にかけているかを確かめるために、ふざけたり、言うことを聞かないことなどがあります。どれだけ自分のことを心配してくれるだろうか。だらしなくしていたとしても抱きしめてくれるだろうか。もしも家庭でそれが満たされない時、子どもは空虚さを感じ、彼らの土台が揺るぎ始めます。そして、家庭のぬくもりや安心を求める旅が始まります。いい大人に出会うことができれば、ラッキーでしょう。しかし、空虚さを埋める旅の過程で彼らに悪事を教える大人に出会うことも少なくありません。
彼らが自分がしたことに気づけるようにすること、自分のしたことの結果を知ること、そして過ちを犯した後にも将来があることを教えることは私たちの責任です。彼らは、これからどんな人生を歩んでいきたいか選ぶことができます。

子どもたちを支えるために、あなたのサポートを必要としています


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5,000円で、5人の青少年が1ヵ月間、学校に通えます。
KnKへのご寄付は寄付金控除の対象となり、税制上の優遇措置を受けられます。

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