報告:ヨルダン プロジェクト・コーディネーター 磯部香里
KnKは2023年1月より、国際協力機構(JICA)の支援のもと、ヨルダンの首都アンマンおよびマフラック県のザアタリ難民キャンプ内の学校において、日直、学級会、縦割り班活動といった特別活動の導入と、その理解促進、そして継続的な実施体制の構築を目指した取り組みを進めてきました。その一環として、今回、アンマンにある特別活動を導入している2校の公立学校で公開授業を実施しました。
公開授業
公開授業には、教育省および教育局の職員、すでに特別活動を取り入れている学校の校長先生や教員が参加。さらに、公開授業を実施した学校の近隣校の校長先生も見学に訪れました。

授業を見学する様子
授業では、異なる学年の生徒たちで構成された「縦割り班」によるアクティビティを実施しました。今回は、ボール運びやフラフープ投げゲーム、綱引きを行い、各チームにはキャプテンと副キャプテンを配置。キャプテンや副キャプテンが中心となって生徒たちは必要な準備を行い、チーム対抗戦を行いました。授業の最後には、チームごとにその日の活動を振り返る簡単なミーティングを行い、次の活動につなげています。

縦割り班活動では、先生とキャプテン、副キャプテンを中心に授業の最後に振り返りミーティングを行います

すべてのアクティビティが終わった後、副キャプテンが活動に使ったリボンを回収しています
見学者と教員による意見交換
授業後には、見学者と授業を担当した教員との意見交換を行なわれました。参加者からは、「活動を通じて児童の体力や集中力が高まり、協力する姿勢が育まれている」との声が寄せられました。また、授業を進める教員の子どもたちへの関わり方について、「競争を楽しむ気持ちや、勝ち負けの結果を受け入れる姿勢、スポーツマンシップが育まれている」といった肯定的な意見も聞くことができました。さらに教育省・教育局の職員からは、「このような協働を促す活動は、すべての学校に広げるべき」との評価や、「高学年に対応したより多様で発展的な内容の活動も必要」といった提案もありました。

公開授業を実施した学校が活動の様子を紹介しています

公開授業の後、授業を行なった教員と見学者で意見交換を行いました
今回の公開授業では、縦割り班活動の様子を実際に見学することで、参加者間で活動の意義を改めて考え、再度認識をするきっかけになりました。また、意見交換を通じて、今後の活動の改善につながるアイディアも出てきました。授業を担当した教員自身にとっても、自らの実践を客観的に振り返る良い機会となりました。
日本からヨルダンへ
日本では馴染みのある縦割り班活動ですが、ヨルダンの公立学校では通常、学年間の交流がほとんどありません。学校で異学年の生徒と一緒に活動をすることは、子どもたちにとって初めての経験であり、当初は戸惑いも多く見られました。また、こうした授業を成立させるためには、教員の準備やコーディネーション力も一層求められます。今回のような公開授業を実施することで、教員の工夫や努力が評価され、今後の取り組みへのモチベーションにも繋がっていきます。
これまで本事業では、特別活動を実施する学校の拡大だけでなく、活動が現場に継続的に根付いていくための基盤づくりにも力を入れてきました。以前ご紹介したインストラクター研修の実施や、保護者の参画促進、そして今回の公開授業も、そうした取り組みの一環です。
今後も、教育省や教育局、学校の先生方、そして保護者と連携をしながら、特別活動の根底にある理念とその価値がより広く理解され、子どもたちの成長に繋がっていくよう、引き続き活動を進めていきます。
(※)本事業「特別活動の継続的実施と普及のための基盤整備事業」は、国際協力機構(JICA)より草の根技術協力事業として業務委託を受け、実施するものです。https://www.jica.go.jp/partner/kusanone/partner/ku57pq00000x9tkg-att/jor_03_p.pdf
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