活動ニュース

【ヨルダン・ザアタリ難民キャンプ】2024夏季アクティビティ報告

報告:ヨルダン プロジェクト・コーディネーター 大竹 菜緒

今年もやってきた、夏季アクティビティの季節。この時期キャンプは日中、33〜35度に達し、酷い時には40度近くになります。湿度は低いため、日本の夏のように汗がダラダラ垂れるということはありませんが、アラビア語にある「太陽に殴られる(!)」という言い方が、照りつける太陽の日差しの強さを的確に表しています。

そんな暑さの中ではありますが、KnKでは学校が夏休みの間でも、子どもたちが家や通り以外の場所でも学び、楽しめる機会を提供するため夏季アクティビティを実施しています。アクティビティでは日本の学校で取り入れられている特別活動のひとつである、縦割り班活動を行いました。

縦割り班活動は年齢の異なる子どもたちで構成され、学年を超えた交流をねらいとしています。夏季アクティビティの期間中は、女子、男子それぞれが週2日、4週にわたり、3チーム編成とし、各チーム12名程度のメンバーが、お互いを知るところからチーム対抗のゲームをするところまで、8日間を共に活動しました。

チーム内でのゲームであやとりをし、星、ほうき、橋の形を作りました

 

今回は、アクティビティをやって良かった、と思えた瞬間を皆さんにお伝えしたいと思います。

 

去年に引き続き参加した子どもの成長

アクティビティは朝9時開始にしていましたが、8時ごろには学校前で待っている子がちらほら。アクティビティを楽しみにしてくれていることが伝わってきました。学校がないと昼まで寝てしまい、日々の生活リズムが崩れてしまいがちですが、このアクティビティがあったことでそれを保つことに繋がった子もいるだろう、とスタッフは言います。

去年に引き続き参加してくれた子たち、特に7、8年生の精神的な成長をスタッフと共に感じました。例えば、喧嘩っ早かった子が、嫌なことがあった時にすぐに殴ったりするのではなく、まずは自分自身で落ち着くように努める、なぜ嫌な気持ちになったのかスタッフに説明できるようになる、喧嘩相手と話をする、など他の行動をとることができるようになりました。また、前回はチームの一参加者だった子が、今年はチームリーダーとなり、他のチームの子を先導して整列したり、出席を取ったり、ゲーム中に助け舟を出したりするなどの大きな変化がありました。

ドッジボールで勝った女子の黄色チーム

 

チームで一緒に「何か」をやってみることの実践

ヨルダン、特にキャンプでは、学校の時間割に本来組み込まれているはずの自由な活動ができる「フリーアクティビティ」の授業時間はなく、複数の子どもたちが一つのチームで共通の目的のもとに、何かを一緒に活動する機会は限られています。

夏季アクティビティで縦割り班活動を取り入れる目的は、そうした機会を提供することでもありました。年齢も成長過程も異なる子どもたちが1からチームとなって、限られた期間の中で、名前も知らないところからお互いを知り、ゲームで勝つという共通の目的のためにメンバーとして貢献する、ということは子どもたちにとって大きな挑戦です。最初は、我先にとボールの取り合いをしたり、取っ組み合いの喧嘩をすることもありましたが、日が経つにつれ、同じチームの子の名前を呼びながら応援したり、「〇〇チームを応援して!!」と子どもたちから声が上がることが増えました。また、ドッジボールでは最終日にチームの子どもたちが自主的に円陣を組んで気合いを入れている姿も目にし、明らかに初日とは違うチームの意識が生まれていることを感じました。ちなみに、ドッジボールはアラビア語で「魚釣り」と呼ぶそうです。コートを池に見立てているとか!?

ザアタリ難民キャンプのサマーアクティビティの一環で、ドッジボールをする子どもたち

ドッジボール(魚釣り)でチーム力をアップ!

 

保護者による、アクティビティへの参加

保護者にも学校での特別活動の取り組みを知ってもらうこと、また参画してもらうことで、活動の継続実施に繋げるため、KnKでは保護者参画にこれから力を入れていきます。今回は、キャンプでの試みとして、女子では料理の得意なお母さんが、火の使い方と注意点と共に、ポップコーンの作り方を実践して子どもたちに伝えました(※安全面を考慮し、電気コンロを使用)。男子ではお父さんの1人がミジュアズというアラブではお祝い事などで演奏される笛の奏者であることから、その笛の紹介と演奏を披露していただきました。

今回、協力を申し出てくれた保護者の方からは、こうした自分の特技を子どもたちの前で発表するのは初めてだったが、子どもたちも盛り上がっている様子で自分も楽しかった、という感想を教えてくれました。

 

たかが芝生、されど芝生。遊びの幅が増え、よりチーム戦での遊びが盛り上がりました

今回のアクティビティ実施にあたり、皆さまからいただいた夏募金を活用し、人工芝生90m2を購入することができました。数年前から内部でも購入希望はあったのですが、予算の関係で購入をできていなかったため、念願の芝生です。なぜ私たちがこんなに芝生にこだわらなければならなかったのか。それはアクティビティのゲーム時に使う学校の校庭が、コンクリート並みの硬い地面に加え、小石が一面に散ら張る状態だったからです。去年までは薄いシートを敷いていましたが、校庭の5分の1程度をカバーするだけの小ささに加え、薄く軽い素材のために皆が少し動けばシートはめくれ、くしゃくしゃになり、また敷き直し・・・を繰り返していました。こうした理由から、校庭全てをカバーでき、その上で遊んでも大丈夫そうな、頑丈な素材が欲しかったのです。

人工芝生の種類の多さに圧倒されながらも、遂に購入に漕ぎ着け、せっせとキャンプに運び、校庭に敷いてみました。するとどうでしょう、一歩学校の外に出れば土漠が広がる殺風景な校庭は、青々とした緑に包まれました。ヨルダンにいると、夏は乾燥のために多くの植物は枯れてしまうので、こうした明るい緑を見ること自体が珍しくなります。思わず、スタッフと写真を撮ってしまいました。

大竹(左)とヨルダンのスタッフたち

大竹(左)とKnKヨルダンのスタッフたち。教育省公教育課のスタッフ(2列目中央)もモニタリングに来ました。

 

人工芝生を敷いたことで、大きな変化がありました。まずは、子どもたちが靴を脱いで、裸足で遊ぶようになりました。キャンプでは、成長期の靴の買い替えを少なくするために冬でもつっかけサンダルを履いている子たちが多いので、綱引きだったり、球技遊びだったり踏ん張る遊びでうまく力が入らないことがあります。芝生の上であれば、痛くないのでサンダルを放り出して裸足で思いっきり遊ぶことが叶いました。

次に、遊びに使える場所が広がりました。以前はその小さく薄いシートを敷いた範囲でしか遊びたがらないので、自動的に場所も狭かったのですが、校庭全部が芝生に覆われたことで、ドッジボールやボール送りゲームなどの広さを必要とするゲームもできるようになり、チーム対抗のゲームがより楽しいものとなりました。

真剣勝負。ドッジボールを始める前に、ジャンケンで先攻後攻を決めました。

子どもたちも人口芝生を気に入ってくれました。十分な厚さもあり、座っても大丈夫です。アクティビティ前に一度座って落ち着く時間を持つことで、話を集中して聴ける子が増えました。

 

こうして、今年も無事に夏季アクティビティが終了しました。複数の子どもたちから最終日に、もっと続けてほしいと懇願される場面もありました。夏募金にご関心を寄せてくださり、またご協力くださり、感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

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