活動ニュース

5年前の自分、5年後の自分を見つめてーザアタリ難民キャンプ 生徒へのインタビュー

報告:ヨルダン/シリア難民支援 事業総括 松永 晴子

ザアタリ難民キャンプでは、毎年実施している夏季アクティビティの季節がやってきました。
コロナ禍の2020年、2021年のオンラインアクティビティを除き、毎年夏と冬に学校で実施してきたアクティビティも今年で10年目となりました。
夏休み毎日のようにやってきて、いつもの授業よりものびのびと過ごす時間は濃密で、子どもたちの個性や性格をよく理解、把握できる機会でもありました。

よくアクティビティに来ていた子たちの多くは成長し、もうKnKの活動の対象年齢ではなくなりました。ですが、まだ学校に来ている子たちの姿はあります。
そこで、5年前の写真を成長した子どもたちに見せつつ、自分たちの成長を振り返り、将来のビジョンや悩みを一緒に共有する時間を作ってみました。

インタビューに来てくれたのは、アドナン、アブダルラハマーン、ヨーセフです。
5年前はまだ小学3、4、5年生で、いつも元気いっぱいでアクティビティに来てくれていました。アクティビティを目一杯楽しんだり、活動の協力をしてくれることもあれば、喧嘩をしてわたしたちスタッフの手を焼くこともあり、どの子にもたくさんの思い出があります。
見違えるように大人っぽくなった三人の口から漏れる言葉もまた、年相応のためらいと恥じらいと悩みがありました。
子どもたちのインタビューの様子をご覧ください。

ヨーセフ(17歳、10年生)。以前も今も変わらず、自分のやりたいことをよくわかっていて、向上心と努力する粘り強さを携えています。KnKの授業を受けていた8年生(*)までは、いつも教室では先生の近くの席にいて、先生の話を注意深く聞いていました。ヨーセフの前向きでぶれない姿勢を久々に見られたのは、嬉しかったです。

5年前のヨーセフ(左)

現在のヨーセフ

アドナン(16歳、9年生)はよく先生たちの近くにいました。まだ小柄だった彼はいつも誰かと戯れているようでもありましたが、ちょっかいをかけて周りの子たちと小さな諍いも起こしていたので、先生たちがとりわけ、見守っていた子です。体ももちろん大きくなりましたが、落ち着いた空気をまとい、でも小さい頃を彷彿とさせるやりとりもあり、変わったところと変わらないところ、両面を見ることができました。

5年前のアドナン

現在のアドナン

アブダルラハマーン(14歳、8年生)は、とりわけやんちゃな弟の相手をいつもしていて、自分のことよりも弟の様子を気にかけていたのが、昔の映像からもわかります。
弟も成長して自分で自分の好きなことができて自立しても、今度は弟だけではなく家族のことを考えている様子に、5年前には気づかなかった彼の持つ責任感の強さや優しさをみました。

5年前のアブダルラハマーン

現在のアブダルラハマーン

キャンプの状況は、けれども5年前から大きく好転していません。大学への進学をサポートする奨学金制度の数も減り、多くの人が仕事を見つけるのに苦労をし、早く結婚をする女性も多く、誰もが近い未来に明るい希望を見つけづらい状況は続いています。
成長した3人の姿の中に、大きくなったからこそ分かってくる将来の現実的な夢や不安を精一杯抱えている様子を認め、ほぼすべての子どもたちが似たような思いを抱えていることを、改めて実感をもって知る機会となりました。
この3人は、幸いなことにまだ学校に通い続けています。勉強を続けることに不安もありつつ、それでも周囲の人々の様子から、勉強を続ける大切さをよく、理解しています。
もし、わたしたちが継続してきたザアタリキャンプでの事業が、今の彼らの考えや学校へ来続けている姿勢に、いくらかでも影響していたのならば、これほどうれしいことはありません。

長く事業を続けることの意義をあらためて教えてくれる、大切なインタビューとなりました。

(*)KnKの情操教育やキャリア教育などの授業は、キャンプ内公立校の中で、女子シフトは5年生~10年生、男子シフトは5年生~8年生が対象でした。

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