活動ニュース

短い物語を作る ―ザアタリ難民キャンプの冬季アクティビティコンテストー

報告:シリア難民支援 現地事業総括 松永 晴子

今年は2学期の開始が2月後半になると教育省から発表されたため、いつもより少し長い期間アクティビティを実施しています。
昨年9月の新学期から学校では対面授業が再開したため、KnKの冬季アクティビティも今年は学校で開催されることを楽しみにする子どもたちもいました。
しかし、今年は感染拡大状況を鑑みオンラインのみで実施しました。

●実施期間:2022年1月2日ー2月13日
●参加者:224名
●実施形態:オンラインのみ

参加希望する子どもたちをオンラインで登録し、週に1回はテーマを変えて、子どもたちが長い冬休みの間も創意工夫を凝らした活動が楽しめるようコンテストを実施しました。
テーマは、詩、お話作り、演劇、写真、絵、カリグラフィなど多岐にわたります。
そのほかは、アラビア語の文法、簡単な工作、新しい歌とソルフェージュ、身の回りに使える教訓や道徳についての話も配信しています。

コンテストのお題の発表と良い作品の公表

創作活動のコンテストは、オンラインのグループチャットでお題を発表し、子どもたちは1週間以内に提出します。
その中から毎回、よかった作品を3、4作選出しSNSで公表しています。
その中で、第3回コンテストのお題は「短いお話を作る」でした。

選考基準を明示

実のところ、いい作品を選ぶ先生たちの間でも意見は分かれます。また、自分の作品が選ばれなかった子どもたちが、道端で先生に出会うと「どうして僕の作品は選ばれなかったの?」と尋ねてきたりしていました。
そこで、コンテストを募集し、発表するときには、選考基準を明示することにしました。
以下が、お話のコンテストの書き方を含めた、選考基準です。

1)ふさわしい題名がついていること
2)どこの話か書かれていること
3)いつの話か書かれていること
4)主人公がいること
5)何が起こったか書かれていること
6)起こったことについてどのような展開をしたのかが書かれていること
7)話から学びがあること
8)話の流れがよくアレンジされていること
9)出来る限り文法に注意していること
10)お話の長さが1ページ以内であること

子どもたちの作ったお話を翻訳をしながら、子どもたちの考えていることや大切にしていること、気になることや、面白いと感じていることがうっすらと見えてきて、とても興味深い作業でした。

1位入賞作品

ここでは、男女それぞれ、1位になった子どもたちの作品をご紹介します。

【女子シフト1位入賞作品】

作者 バトゥール・イッサ
題名「責めたことは自分に返ってくる」ある男が、妻の不満と文句に飽き飽きして、ついに自分の父親を養護ホームに入れる決断をした。
彼の妻は、父親の忘れっぽさのせいで友達の前で恥を書いたり、父親の要望に応えなくてはならないことに不平を言い続けた。
男は父親に必要となるものを集め、この後の父親の行末を思って泣いたが、元気で強かった時の父親が自分に与えてくれた犠牲も愛情も忘れてしまった。
でも、妻の訴えもあり男は決断したことをしなくてはならなくなった。彼は一握りの食べ物と布をバッグの中に入れ、父親が寝るためのマットを抱え、父親の手を取って養護ホームへと向かった。
でも、彼の一番下の息子が、持っていたマットを置いていけと言う。
男は焦りをあらわにして、「なんで置いていかなくてはならないんだ?」と不満げに尋ねた。すると男の小さな息子は純粋な気持ちで言った。
「将来、お父さんが歳を取って、僕がお父さんを養護ホームへ連れていたかなくてはならなくなっても、このマットを残しておけば家へ戻ってきた時寝る場所があるでしょ。」自分の小さな息子の言葉を聞いて男は唖然とした。そして、子どもの頃父親が自分にしてくれたことを思い出し、ひげがすっかり濡れてしまうほど涙を流した。
彼は持っていた荷物を放り出し父親にきつくハグをした。そして、自分が生きている限り、父親を大切に世話し続けることを神と息子の前で誓った。

【男子シフト1位入賞作品】

作者 ムハンマド・サバヒーア
題名「欲を出していいことなし」ある、謙虚で愛すべき家族が小さな村に住んでいました。お父さん、お母さん、そして、サミという少年の3人家族でした。サミのお母さんはサミの世話をし、お父さんは畑に出て、日々食糧を収穫しました。彼らは幸せに暮らしていました。しかし、欲深い近所の住人は、この幸せな家族の邪魔をしてきます。この近所の男は、そんな価値もないのに40JD(約6,400円)を家賃として要求してくるので、サミの父親は家を守るため、働き続けなくてはなりませんでした。サミの家族は本当に貧しかったのです。ひどく暑いある日、サミのお父さんは畑に出ました。あまりに暑かったその日、ほとんどの植物は枯れてしまい、ひどい空腹の中疲れ切って家へ戻ることになりました。
帰り道、サミのお父さんは傷ついた鳥を見つけました。彼は鳥に近づくと捕まえて、傷口に湿布を貼ってあげました。
すると、なんと鳥は、魔女に姿を変え、お父さんの前に現れました。そして、魔女はお父さんに言います。「この鳥を救ってくれたお返しをします」
流れる川にたどり着くまで、深い森に分け入りました。そして川の水を飲みお父さんは若返りました。
お父さんが家に着いた時、お母さんに向かって叫びました。
でも、「どなたですか?」妻であるお母さんは、お父さんだとわかりませんでした。「君の夫だよ」と言うと、お父さんは自分の身に何が起きたのかをお母さんに話しました。次の日、お父さんのところに、欲深い近所の男がやってきました。お父さんは出迎えましたが、男にはお父さんが誰だか、わかりませんでした。「あんたは誰だ?」
「もう何年来も近所だったではないですか」お父さんはそう言うと、男は驚きました。
「どうやってこんなに若返ったのかい?」そう尋ねられたお父さんは、ことの次第を近所の男に話しました。
「その素晴らしい川へ連れていっておくれ」近所の男にお願いされ、お父さんとお母さん、そして近所の男は連れ立って川へ向かいました。
川に到着するや否や欲深い男は川へ走って行き、水を飲み始めました。
そんなに一杯飲んではいけない、とお父さんは注意したけれど、男は聞く耳を持ちませんでした。妻であるお母さんは、お父さんの注意に、水を飲むのを途中でやめましたが、男は何度お父さんが呼んでも、飲むのをやめませんでした。
そしてついに、男は子どもになってしまいました。「欲深いなんて、いいことはないんだ」お父さんは子どもになってしまった男にそう言いました。
そして妻であるお母さんにこう言いました。「彼は子どもになってしまったから、僕たちがこれから、いい子に育てることができるね」
そして、彼らは一緒に家へ帰り、幸せに暮らしました。

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