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第三国定住の手続きを経て、ドイツに向かったシリア人教師のこと

今回は、ヨルダンのザアタリ難民キャンプでKnKの教師として働いていた、シリア人女性(ここでは、H先生とします)をご紹介します。
彼女は、昨年9月から今年の10月まで、ヨルダンに逃れてきたシリア人女子生徒たちを対象としたストーリーライティング(作文)の授業を担当していました。

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この先生は、ご主人が待つドイツへの第三国定住*が決まり、先月末にザアタリからドイツへと向かいました。
ヨルダンで暮らすシリア人難民の中には、少数ではありますが、正式な第三国定住の手続きを経て、ドイツやカナダ、アメリカなどに移り住む人たちがいます。H先生の場合、ザアタリ難民キャンプで4人の息子たちと暮らしながら、ドイツへの第三国定住を申請、さまざまな手続きやドイツ大使館での面接を経て、今回、4年越しにその願いが叶い、息子たちとドイツへ向かうことができました。

H先生がザアタリを発つ前に、これまでの授業のことや出発前の気持ちを聞いてみました。

H先生、ストーリーライティング(作文)女子生徒クラス 担当

KnKで働いてみて、どうでしたか?

とても良い仕事ができたと思います。以前は、別の団体で教師として働いていたこともありましたが、KnKが一番良い仕事場だと自信を持って言えます。マネジメント面もそうですし、仕事環境も良かったです。そして、何よりも同僚との仲が良く、ひとつの大きな家族のように手を取り合って仕事ができました。

とりわけ、同僚との仲(先生同士の仲)が良いのは、以前働いていた団体と比べて大きな違いです。シリア人・ヨルダン人の教師たちが同じ机を囲んでミーティングをし、授業について話したり、休憩時間を共に過ごすことができたりしたのは、KnKで働いたからこそ得られた経験だと思います。

授業を通じて、生徒と接する中で何か感じたことはありますか?

生徒たちの中には、つらく、苦しい経験をしてきた子どもが多いですが、いい意味でふつうの子どもたちと変わらない一面を見せることもあります。

例えば、私が担当している女子生徒のクラスでは、ストーリーライティングのトピックとして、ラブストーリーがよく取り上げられます。女子の間では人気のトピックですよ。

ただ、キャンプでの生活では、先が見えない未来に暗い気持ちになってしまう生徒が多く、ストーリーライティングの時間だけは、その気持ちが和らぐようにとの想いを持って授業をするように心がけています。

お話を聞いている途中、先生は「本当にKnKが好きだ」とおっしゃっていました。
授業を受ける生徒だけでなく、教壇に立つ先生も授業を通じて高いモチベーション・満足感を得られていることが伝わってきました。

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授業の中で、何か印象に残っていることはありますか?

一番印象的なのは、生徒たちがとてもユニークで賢いということです。私たちが思いつかないようなユニークなストーリーを書く生徒もいれば、他の生徒とは全く異なる視点からストーリーを書く生徒もいます。こうした生徒に出会う度に、生徒たちの持っている力に驚きました。教える側としても学ぶことが多く、とても楽しい授業でした。
また、以前の職場では、授業科目が「アラビア語の文法・数学・英語の文法」だけで、座学中心の授業だったため、先生は一方的に教えるだけ、生徒は受け身でノートを取るだけの授業スタイルでした。毎日同じようなことの繰り返しで、先生も生徒も授業に対してなかなか楽しみを見出せずにいました。しかし、KnKのストーリーライティングの授業は、先生と生徒のインタラクティブ(双方向)な授業で、授業自体が非常にクリエイティブなものでした。先生の問いかけに生徒が発表する、生徒のアイデアに先生がコメントする、さらに、同じクラスの仲間がみんなの前で発表するなど、毎回の授業が刺激的だったのが印象的です。加えて、一般的な科目(例えば数学)では試験の点数の結果で生徒たちの成長を見ますが、ストーリーライティングでは日々の授業で生徒たちとのやり取りや受け答えを通じて、彼らの成長を実感できました。

これからドイツで新しい暮らしが始まりますが、今はどんな気持ちですか?

一言だけ、とても幸せです。ずっとドイツに行くことを望んでいたので、願いが叶って嬉しく思っています。今は主人だけが先にドイツに行っており、キャンプに住む私と子どもを待っていますが、これから会えると考えるだけで嬉しいです。
「家族としてふつうの生活ができる」これが、私がただ望んでいることです。家族で買い物に出かけたり、服選びをしたり、ご飯を食べたり、寝たりできる。全部一緒にできる。ひとつの家族として特別なことではなく、ふつうの生活をすることが何よりの楽しみです。

授業で得たことや生徒たちの話に加え、家族と暮らせるこれからの未来に期待を寄せていらっしゃいました。
近い将来、シリアの皆さんがまた再び故郷で、家族と共にに生活できる日が来ることを願っています。

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*第三国定住 母国を逃れて難民となっている人を、避難先の国から、受け入れに合意した他国(第三国)が受け入れる制度。移動先の第三国から保護や支援を受け、長期的に定住することが可能。

 

例えば8,000円あれば、ヨルダンの公立学校に通うシリア難民の子ども1名が
約1ヵ月、KnKの補習授業を受けられます。

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KnKへのご寄付は寄付金控除の対象となり、税制上の優遇措置を受けられます。

※ヨルダンにおけるKnKのシリア難民支援活動は、認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム助成金(イラク・シリア人道危機対応プログラム)の活用と日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。

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【KnKヨルダン(シリア難民支援)活動概要】

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