活動ニュース

次世代を担う子どもたちが、共に成長するために(後編)

 

前編:夏到来、砂漠のキャンプで暮らすシリア難民の子どもたち

KnKのホストコミュニティ(受け入れ側地域社会)における支援では、シリア人のみならず、ヨルダン人や他国籍の児童を対象に、公立学校での補習授業を実施しています。このプログラムは、次世代を担う子どもたちが相互理解を深め、難民に対する偏見やいじめ問題を克服し、より良いコミュニティをつくることも目指しています。現在、首都アンマンとその周辺にある公立学校で行っているこの事業は、開始からちょうど1年が経ちました。プログラムに参加しているシリア難民の子ども2人を紹介します。

アスマさん(12歳/7年生:日本での中学1年生)

アスマさん(12歳)

アスマさん(12歳)

8人兄弟のアスマの家族は、ザアタリキャンプから首都アンマンに出てきました。アンマンに来た当初、生活の貧しさと難民である肩身の狭さから彼女には楽しいことが全くなく、1歳年上の長兄が働く姿を見ながら、学校へ通うのも気が進まない日々を過ごしていました。

周りの女子と関わりを持つことを避けてひとりでいることを好みましたが、勉強だけはできるようになりたいとKnKの補習授業に通い始めました。

友だちをつくろうとしないアスマを変えたのは、補習授業の学校スタッフの一人、ソーシャルアドバイザーでした。アスマの責任感や能力に気がついたソーシャルアドバイザーが、彼女に他の先生への伝言係りやプリントの回収などを担当させたことで、アスマの存在はすぐに子どもたちの知るところとなりました。

 

Q:補習授業に通い始めてから一番変わったことは何ですか?

「今では、何よりも学校が好きになりました。それから、学校でできた友だちと近所でも遊べるようになりました。それから、読み書きができるようになったのも、とても嬉しいです。ヨルダンに逃げてきた当時は、シリアで学校にも通えていなかったので、ほとんど読み書きができませんでした。でも、今は本も読めるようになりました」

補習授業の実施前と後の試験結果。両教科とも約90%の生徒に学力の向上が見られた。

補習授業の実施前と後の試験結果。両教科とも約90%の生徒に学力の向上が見られた。

 

学校生活が楽しくなったことから、勉学にも身が入るようになったアスマは、基礎レベルから受講し始めて、半年の間にレベル1を越えてレベル2まで、学力をあげることができました。

朝礼の際、他の児童を並べたり、先生たちのちょっとしたお願いを手際よくこなしたり、アスマが誰からも頼りにされていることを実感できることが、アスマ本人を生き生きとさせています。

KnKのアクティビティ

KnKのアクティビティ

「今では友だちがけんかしていたら止めに入るし、下の学年の子の面倒も見ます。自分のことを好きで、信頼してくれている、そう感じられる場所があることが、とても幸せです!」

 

アダムくん(14歳/小学7年生:日本での中学1年生)

アダムは2部制公立校のシリア人シフトに通っています。

もともと勉強嫌いではありませんが、2部制の学校に通い始めた頃は、避難生活によるさまざまなストレスから学校にも馴染めなかったようで、授業を妨害したりクラスメートの邪魔をしたり、授業中も立ち回るなど、いわゆる問題児でした。

それでも学校は好きだし、家にいてもつまらなかったので、補習授業に通い続け、雪や雨など、天気が大荒れの日もきちんと登校し、いつのまにか皆勤賞を受けるまでになりました。

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アダムくん(14歳)

Q:補習授業に通い始めて一番変わったことは何ですか?

「ヨルダン人の友だちができたことです。まだまだ、平日の学校などではヨルダン人とシリア人の間でけんかがあるし、差別を感じてしまうこともあります。だけど、ヨルダン人の友だちができたことで、以前よりもストレスに感じることが少なくなりました。

それから、とにかく勉強が分かるようになったのが、一番の変化です。本当は9年生に入るはずの歳だけれど、避難生活で勉強ができなかったので、2年のブランクがありました。だから、今は7年生に入っています。

ヨルダンのカリキュラムはシリアのものと違うので、分からないことが多くて、学校がつまらなくて仕方ありませんでした。だから、他人の邪魔ばかりしていました。でも、補習授業で勉強がわかるようになってきたら、邪魔をするのもばかばかしくなってきました」

 

Q:将来の夢は何ですか?

「サッカー選手になりたいです。それか、英語を使う仕事に就きたいです。将来のためにも英語はとても大事なので、英語をがんばって勉強しています。

補習授業ではビブス(競技者が付けるゼッケン)もあり、審判になってくれる先生たちがいて、サッカーの試合がきちんとできるのが、楽しいです!」

 

補習授業のサッカーは男子に大人気

補習授業のサッカーは男子に大人気

皆勤賞の影響か、当初レベル1で補習授業を開始したアダムは、今はレベル3まで上がり、上のレベルの内容もだんだん理解できるようになりました。学校で問題児だった彼も、今では授業態度が変わり、サッカーやゲームをするときには人気者です。

普段国籍で児童を分けている2部制の学校では交わらない子どもたちが、補習授業で実施している相互理解のアクティビティを通して、一緒に遊びながら、考えながら時間を過ごしています。

そこからできた友だちは国籍を問わず、アダムの大事な財産となっています。

シリア人生徒とヨルダン人生徒、相互理解に関するアンケート。友だちは財産!

シリア人生徒とヨルダン人生徒、相互理解に関するアンケート。友だちは財産!

6月6日からラマダンが始まりました。シリア人の先生たちも、子どもたちもラマダン中は学校がお休みです。
ラマダン明けには、いよいよ夏真っ盛りではありますが、子どもたちもスタッフも、元気に学校へ戻ってきてくれることと思います。

*  *  *

 

シリア難民のために、私たちには何ができるでしょう?

シンポジウムに参加する ~シリア難民の問題についてさらに理解を深めよう~

UNHCR駐日事務所 / JPF 共催シンポジウム

『シリア危機: 人として – 分かちあう責任』

日時: 2016年6月20日(月)、14:00-17:20 (開場 12:30)

場所: 国連大学、ウ・タント国際会議場

主催: 国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所 / ジャパン・プラットフォーム(JPF)

言語: 日本語、英語 (同時通訳あり)

申込方法: 下記サイトよりオンラインでお申込ください
https://www.japanplatform.org/event/syria_symposium20160620/

 

「寄付」でシリア難民の子どもたちを支える

シリア難民が避難生活を送るヨルダンは、現在乾季にあたり、水が不足しがちです。気温は40℃近くになることがあり、プレハブの教室ではクーラーや扇風機もなく、やむなく授業を早く切りあげる学校もあります。

ラマダン明けに、子どもたちが元気に勉強を再開できるよう、ぜひご支援をよろしくお願いします。

1,500円で50名の子どもたちに清潔な飲料水を配れます。
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KnKへのご寄付は寄付金控除の対象となり、税制上の優遇措置を受けられます。

※ヨルダンにおけるKnKのシリア難民支援活動は、認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム助成金(イラク・シリア人道危機対応プログラム)の活用と日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。

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【KnKヨルダン(シリア難民支援)活動概要】

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