スタッフ日記 認定NPO法人国境なき子どもたちブログ

共通点~KnKフィリピン、新人ソーシャルワーカーからのレポート

2022年からKnKで勤務を開始したKnKフィリピンのソーシャルワーカー、ルビーからのレポートです。

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大学時代のインターンシップでは、私は地方行政に配置され、女性と子どもに関わる仕事に従事していました。私は虐待被害や人生で困難な状況に置かれていた女性に関わるケースを5件担当し、同時に児童労働や不安定な地域コミュニティに関わる仕事もしました。
これらの経験から、女性や子どもに関わる問題の要因はすべて貧困、家庭状況、そして地域コミュニティからの大きな影響があるのだと考えました。

KnKが私にドアを開いたとき、最初は不安を感じつつ、期待に満ちていました。KnKは私の最初の就職先で、卒業後たった1ヶ月で採用されました。以前、私は自分が提供できるものは本当に少ししかないと思っていましたが、KnKフィリピンチームは躊躇せずに私を受け入れ、私を信じてくれました。
チームと共に、私はルソン島の一部とマニラ首都圏のいくつかの青少年収容所やシェルターにいる、法に抵触した青少年や危機的状況にいる子どもたちに心理社会的ケアを実施する仕事に就きました。この時点では、私にとって彼らのために働くことはまだ非現実的でした。働くという言葉はまだ表面的で、様々な困難を抱えた子どもたちに会い、話を聞くと、彼らの送ってきた人生に衝撃を受けました。

子どもとの面談の様子

だけれども、物事を進めるために、思いやりの気持ちを持ちながら、同時にプロフェッショナルでなければなりません。彼らの状況を考えると、彼らは幼いころに人生の逆境を経験しました。ルールを破り、法に触れることもありました。もしも他の人がテレビのニュースで彼らのことを知ったら、憎む人もいるかもしれませんし、感情移入をする人もいるかもしれません。でも、彼らと働くと、きっと彼らを加害者としてはみないでしょう。むしろ、教育と、楽しい時間を必要とする他の子どもたちと同じだと思うでしょう。もしかしたら、彼らがあなたの家族のように見えるかもしれませんし、彼らは家族のように振る舞うことさえあるかもしれません。

子どもたちとの会話を通し、彼らには共通点があると気づくようになりました。ほとんどの子どもが非常に厳しい環境で育ってきました。家庭の中で育児放棄や虐待を経験し、友だちや非行行為に影響されやすくなった子どももいます。さらに、かろうじて日々の生活を成り立たせることができる親戚のもとでのみ育ったため、親から面倒を見られるという経験をした子どもはほとんどいません。シェルターに彼らが来た時、家族や友人からの訪問や電話はありませんでした。孤独というのは子どもにとって恐ろしい場所に違いありません。
彼らがイソップ物語*に出てくるカラスのように、半分しか水の入っていない水差しを強い意志を持って工夫を凝らして水嵩を増やして飲もうとする姿と重なるかもしれません。しかし、この物語を我々が変えることもできると思います。彼らの意志を無視するのではなく、優しさを持って、物事をより簡単に進められるように手助けすることが可能だと思います。私たちはみんな、話しを聞いてもらい理解されたいと思っています。大人でも感じることで子どもは尚更です。

* カラスと水差し:喉が渇いたカラスが少し水の入った水差しをみつけ、水を飲もうとしたが水面まで届かなった。色々な工夫をして水を飲もうとしたが、うまくいかず、諦められないカラスが水の水位をあげようと石を水差しの中に落とし、水を飲めるようになった。

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フィリピンでは、危機的状況にいる子どもたち、法に抵触した青少年が教育を受け、遊ぶ時間を持ち、自分の得意なことや才能を伸ばす機会を持てるよう、「若者の家」での保護、教育機会の確保、政府のシェルター等でのアクティビティを実施しています。また、彼らが育っていく環境がより、子どもを理解し、子どもたちの意見が聞かれる環境となるよう、地域行政、コミュニティ、保護者の方々とも子どもの権利について学んだり、大人や政府の責任についても協議をしています。

外部心理専門家とのディブリーフィングセッション

 

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