報告:KnK スタッフ・バングラデシュ事業担当 三喜 一史
今月11月12日から16日にかけて、バングラデシュで実施しているストリートチルドレンのためのドロップインセンター(DIC)に通う子どもたちの現状を把握することを目的に調査を開始しました。
前回の記事『「ほほえみドロップインセンター」:12年間の振り返りと今後の課題(https://knk.or.jp/bgd230928/)』でも書きましたが、これまでの活動に対しては一定の成果を感じてはいるものの、社会ないし地域の状況も変化してきています。
この調査の目的は、子どもたちの現状を改めて把握することで活動内容を再考し、より良いDICを作り上げることにあります。
調査概要
今回は特にDICに通ってきたことの無い子どもへの短い聞き取り調査とDICの紹介/誘導を行いました。
聞き取り内容は下記の通りとなります;
1. 名前
2. 両親の名前
3. 年齢
4. 性別
5. 出身地
6. 現在どこに住んでいるか/夜寝ているか
7. 仕事
8. 1日あたりの収入
9. 路上生活歴
10. 他団体での支援歴
11. 教育歴
などを聞きました。
尚、路上生活に至った経緯や現在抱えている問題などセンシティブな内容については、その後の心理的フォローアップも必要になる可能性を鑑み、DICに実際に通っている子どもたちなど関係性の構築ができている子どもを中心に、今後インタビューを実施する予定です。
聞き取りより出てきた詳細なデータについては、どこかでまた皆様にご報告できればと考えております。
調査結果
さて、今回はDICのあるショドルガット港を中心に半径約3キロ圏内をランダムに歩き、計102名の子どもへの聞き取りを行いました。
ストリートチルドレンの正確な数字を把握することは困難であり母数がわからないので、どれほどの数の子どもに調査を実施すべきか悩みましたが、まずは100人を目指し、結果的に102名から状況を聞き取ることができました。聞き取りを行った際には必ずDICの活動紹介も行い、調査初日を終えた2日目には新たに10名の新規来所があったように、子どもたちの状況把握と共にDICへの誘導をすることもできました。
以下、こちらがわかっていた、わかっていたけど改めて状況を聞くと驚いたこと、そして新たにわかったことを含めて簡単に羅列します;
・ 102名中、男子60名(58.8%)、女子42名(41.2%)に聞き取りを行えたが、現在DICには一日あたり40名前後の子どもたちが来所しています。
男子の来所者数だけを見ると38名ほどと考えたときに上記の割合からは女子も25人ほど来所すると考えられますが、現状では一日あたり4人前後の来所に留まっています。
・ 路上で生活している期間については1年未満と回答した子どもが3割で、同じく住居があるものの日中のほとんどの時間を路上で過ごしていると回答した子どもが3割であることが確認されました。
※ 日中、家にいることができずに路上を主な居場所としている子どもについても「ストリートチルドレン」と区分されることが多いことを受け、今回の調査およびDICの支援対象者と考えています。
・ 出身地はボリシャルというバングラデシュ南部の県からダッカに移動してくる子どもが多いと聞いていましたが、102名中28%の子どもがボリシャル出身であり依然多いものの、東西南北とバングラデシュの各地(計25県)から満遍なくダッカに移動してきていることがわかりました。
・ 一日あたりの収入が300タカ=390円以下の子どもは35%であり、収入がないと答えた子どもは6割強いました。収入が無い中、路上でどう生活しているのかという疑問は今後確認していきたいと考えていますが、現地スタッフの予想では、道行く人から金銭をお願いするなどしているのではないかとのことです。また、上記の通り、住居があると回答した子どもの保護者はいくらかの収入があると考えられるともスタッフたちは言っていました。
・ 最終学歴を聞いたところ、小学4年生までに学校を中途退学した子どもは36%であり、更に回答者全体の46%が一度も学校に通ったことがないと回答しました。
・ そして聞き取りを実施した同地域での支援を受けたことがあるかについては87%がないと回答し、受けたことがあると回答した子どもでもその支援機関が現在は活動を中止または縮小している状況であることがわかりました。
更に、上記直接の聞き取り内容以外に調査を行ったスタッフが直接話しをする中での予想に留まりますが、薬物、家庭内外で暴力の被害に遭っている可能性を感じたケースが2割ほどあったとのことです。
5日間で100名と多くの子どもたちに話しを聞くことができたと感じる一方で、毎日代わる代わる新しい子どもと出会うことで決まった行動を取っていないことや移動性の高さを痛感しました。
上記の通り路上生活を始めて1年未満と回答したことが3割いるデータの通り、日々、多くの子どもが家や地元を離れて一人で生きていかざるを得ない状況下であると考えられるかと思います。
女子の人数も予想以上に多く、中には乳幼児を連れている母子もいました。路上での生活、特に夜間は誰にとっても危険を感じると考えられますが、特に女子は性的虐待含めて多くの危険が潜んでいると言われています。
今回の調査を終えて
今回の調査により、子どもたちの現在の状況を広く知ることができたと感じました。今後は前述の通り、関係性を築いた子どもを中心にさらに深い質問をすることで、より詳細な状況を把握していきたいと考えています。
ただ、広く状況を知ることができたと言ってもそれは肯定的な感情ではなく、子どもたちの置かれている環境の厳しさについて改めて深く考えさせられることでもありました。
始めに書きましたが、これまでの活動についてはある程度の成果を感じても良いのではないかと思う一方で、今回の調査を通じてまだまだカバーしきれていない部分も多くあると感じました。
単純に対応人数の面もですが、一人一人の背景を踏まえると活動内容も加えなければならないものも出てくると考えています。例えば今のDICの事業の枠組みの中で、女子に対して提供が必用とされる支援についてはこれまでも考えてきましたが、このことはさらに踏み込んで考えなければならないと感じました。
シェルター機能を持ち、女子の居場所、特に夜間の安全確保は、本文からも容易に必要性が思いつくかと思いますが、人的にも金銭的にもリソースに限りがある中で、最適な落としどころをどこにすれば良いのかなど、引き続き考えていかなければならないと感じました。
結論の無い文章でありますが、まずはこの時点での進捗状況を共有させていただければと思い本文を書きました。
また引き続き応援のほどよろしくお願いいたします。
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