報告:KnKスタッフ 久野 由里子
前回に引き続き、ダッカでの事業について進捗を報告させていただきます。
今回は、「2.インフォーマルセクターの雇用主、コミュニティの方々、また青少年自身に対して子どもの権利や労働法などについて啓発活動、能力強化を行い、インフォーマルセクターの労働環境改善を目指します。」の「インフォーマルセクター能力強化」についてご報告させていただきます。
インフォーマルセクターとは、工業省に登記されていない零細ビジネスでその多くは風通しが悪い、窓もなく暗くて作業に危険な職場環境、契約書がないので簡単に解雇されてしまうなど、労働者にとってよい環境ではありません。
本事業では、インフォーマルセクターの労働環境をアセスメント(評価・査定)し、労働環境改善計画を雇用主の方々と共に作成し、環境改善を目指しています。
まず、事業開始時に事業地178社のインフォーマルセクターについて、従業員の人数、18歳以下の従業員の人数など、各社の情報を集めました。そのうち18歳以下の子どもが二人以上働いていて、雇用主が事業に賛同し、改善の余地がある零細企業150社について、31項目について労働環境アセスメントを行いました。
事業開始時、150社中7割以上が対応しているものは、わずか3項目(10:定期的な給与の支払い/15:週休有/29:職場で家族に会える)でした。多くの雇用主は労働者に優しい環境づくりにまで意識が向いておらず、約2割の零細企業は未対応項目が26にものぼりました。その内の10項目(*)は、全ての零細企業が対応していないこともわかりました。
事業が始まった後、スタッフが各社を四半期に一度訪れ、各社の雇用主の方やそこで働く労働者の方と、理想的な職場環境や、環境改善による雇用主、労働者のメリットなどを協議したり、雇用主の方々を対象にトレーニングも実施し、各社の労働環境改善計画を策定しました。1年が終了しアセスメントを実施したところ、対応している零細企業が20%以下の項目は事業開始時の26項目から19項目と減少し、150社全てが対応していなかった項目は、事業開始時の10項目から2項目(**)のみと改善されました。
青色棒グラフ:事業開始時
赤色棒グラフ:1年次終了時
グラフの通り、主に項目1~5で大きく改善が見られました。雇用主へのインタビューから、コストがかかっても仕事がしやすくなり結果的に売り上げに貢献すると判断し、改善を実施している様子がうかがえました。実際、いくつかのインフォーマルセクターで労働者の方々からもお話を伺いましたが、暗かった作業場に光が入り、明るくなったり、ファンを設置してもらうことで集中力が増し、ミスが減り、生産量・売り上げが向上、ボーナスが出たという会社もありました!
雇用主の方からは「改善項目が多くて大変だ…」という声も聞かれますが、残りの項目についても雇用主の方々、労働者の方々と協議しながらよりよい労働環境となるよう働きかけていきます。
※この活動は、外務省「日本NGO連携無償資金協力」の活用ならびに日本の皆さまからのご支援で成り立っています。
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