2016/11/9
報告:KnKスタッフ 久野 由里子
前回に引き続き、1月から開始したバングラデシュ、ダッカでの事業について進捗を報告させていただきます。
今回は、「2.インフォーマルセクターの雇用主、コミュニティの方々、また青少年自身に対して子どもの権利や労働法などについて啓発活動、能力強化を行い、インフォーマルセクターの労働環境改善を目指します。」について報告させていただきます。
①インフォーマルセクター能力強化
インフォーマルセクターとは、工業省に登記されていない零細ビジネスで、行政の指導がなく国家の統計や記録にも含まれない事業を指します。色々な職種がありますが、本事業の対象地では、溶接、家具作り、車修理、機械部品制作、モーター修理などがあります。
インフォーマルセクターの多くは、風通しが悪い、窓もなく暗くて作業に危険な職場環境、契約書がないので簡単に解雇されてしまうなど、労働者にとってよい環境ではありません。
本事業では、インフォーマルセクターの労働環境をアセスメント(客観的に評価)し、労働環境改善計画を雇用主の方々と共に作成、環境改善を目指します。その過程で、インフォーマルセクターの雇用主の方々に労働法や子どもの権利、安全管理義務などについても理解を深めていただきます。
これまで18歳以下の青少年が働くインフォーマルセクター150社の労働環境アセスメントを完了し、研修を3回実施しました。今後、雇用主の方々と共に、労働環境改善を目指します。
②コミュニティ能力強化
上述の通り、インフォーマルセクターは行政の指導がなく、社会からの監視の目がありません。
そこで、監視というわけではありませんが、コミュニティの方からもインフォーマルセクターの労働環境改善にご協力をいただこうと事業地で5つのコミュニティ・ウォッチ・グループを立ち上げました。1グループ15名ずつ参加していただき、インフォーマルセクターの雇用主に対して、労働環境改善に向けてモチベートしてもらったり、働く青少年を学校に行かせてあげるよう働きかけていただきます。
あるグループのミーティングで「僕だって忙しいからな…」とおっしゃるメンバーに、「忙しいと言って時間を割こうとしなかったら、できるときなんてこないわ!時間を割こうとするから時間ができるんでしょ!」と他のメンバーから喝がはいり、結局そのメンバーがリーダーに指名されるという一幕もありました。
今後の活躍に期待しましょう。
③青少年の能力強化
最後に、インフォーマルセクターで働く青少年の環境を改善するためには、青少年自身が自分たちの権利や理想の労働環境を理解することが大切です。
10グループ269名の青少年グループを立ち上げ、彼ら自身が子どもの権利を学び、雇用主や周囲の人に自分の言葉で話すことができるよう、研修や啓発活動を実施します。
青少年グループのメンバーに、自分は働いていないんだけど、という14歳の女の子もいました。「じゃあ、どうしてこの活動に参加したの」、と聞くと、「私の家の周りにインフォーマルセクターがたくさんあって18歳以下の青少年が働いているんだけど、彼らは遊べないし、学校にも行けず、家族と過ごす時間もないみたいなの。それって子どもの権利が剥奪されてるんじゃないかと思って…。だから子どもの権利って何なのか知りたくて参加したんです」と答えてくれました。
周りの子どもたちのことも考えて自ら活動に参加する彼女のような子どもがいる、そのことはバングラデシュの希望だと思います。彼らの熱い志を大切に、活動を続けていきます。
※この活動は、外務省「日本NGO連携無償資金協力」の活用ならびに日本の皆さまからのご支援で成り立っています。
子どもたちを支えるために、あなたのサポートを必要としています
3,000円で子ども2人が1ヵ月間職業訓練を受けることができます。
KnKへのご寄付は寄付金控除の対象となり、税制上の優遇措置を受けられます。
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【バングラデシュ活動概要】