報告:KnKスタッフ・パキスタン事業担当 大竹 綾子
パキスタン大洪水の発災から約半年が経ちました。発災当初は、水没した国土や水をかきわけて避難する人々の姿が日本でも報道されましたが、水害の影響がうち続く光景はもはや日本のメディアで目にすることがなくなりました。ですが、洪水の被災地では未だ数百平方キロに渡り水の引かない地域が拡がっています。給水や衛生施設、保健所の復旧も遅れ、デング熱やマラリア等の感染症、また水を媒介とする下痢や皮膚病などが流行し、現地は「二次災害」に見舞われているともいえます。WHOによると、KnKの活動するシンド州で2022 年 8 月に確認されたマラリア患者は69,123人 に達したそうです。
●被災世帯へ蚊帳および石鹸や生理用品などの衛生用品を配布(計370世帯/計約2400名)
●被災世帯の生活コミュニティへ共用トイレを設置(計48基/計約2400名)
●感染予防実践など衛生意識向上のための衛生啓発セッションを実施(計約2400名)
●刻々と変わる現場のニーズに応じ、現在は水のろ過装置や乳幼児のための粉ミルクを支援(計約770名)
※( )内は対象とする予定世帯/人数
壊滅的な被災規模からすればほんのわずかな支援ですが、「特にリスクの高い子どもや女性たちの命と安全が守られました」といった声を地域の行政や関係者から聞くことができました。「災害の後はあまり眠れませんでしたが、今はちゃんと眠れるようになりました」「きれいな環境で料理をしたり、家族で食事をとったりできるようになりました」など対象の村では人々の日常が少しずつ戻ってきているようです。広場を囲むようにして並ぶ小さなテント村が、被災した家庭や子どもたち、コミュニティをつなぐ場になればよいなと思います。
パキスタンは、災害の発生以前から、現地通貨ルピーの急落、インフレ率の急上昇と経済危機の渦中にありました。洪水後、さらにガソリンや食糧の価格が高騰し、人々の不安は尽きません。そして、なんとパキスタンは今年初めに酷い熱波にも襲われています。
気候変動による自然災害は、他人事でないばかりか、地球温暖化に加担した責任が私たちにもあることがスウェーデンのグレタさんなど多くの活動家や科学者によって問われています。パキスタンのシャリフ首相は「人口2億2千万人を擁するパキスタンのCO2排出量は、世界の排出量の1%にも満たない。それにもかかわらず、気候変動の影響を最も受けている10カ国の1つなのです」と繰り返し指摘しています。
パキスタンに貴重な水資源を供給するカラコルム山脈やヒマラヤ山脈の積雪・氷河の融解がすでに進んでいるそうです。地球温暖化の影響で、あの美しい山脈の景色が変わり、氷河融解でインダス川の流量が一層の水害をもたらすことのないように、と願います。そのためには、CO2を多く排出してきた日本をはじめとする国々や私たちの一層のコミットメントが求められているようにも思います。グレタさんが国連のスピーチで主張していた「気候正義(Climate justice )」※についてまずは勉強してみようと思います。
気候変動が人々に与える影響は、バックグラウンドやアイデンティティにより異なることを認め、その負担や利益を公平・公正に共有し、気候変動の影響をより受けやすい人々の権利を保護するという人権的な視点や運動
【参照】
https://www.un.org/sustainabledevelopment/blog/2019/05/climate-justice/
https://yaleclimateconnections.org/2020/07/what-is-climate-justice/
まだまだ支援が不足しています
パキスタンの子どもたちへの支援を拡充するために、皆さまのご理解とさらなるご支援をよろしくお願いいたします。
皆さまのご寄付でできること
- 9,000円で、子どもを含む7世帯が安心して蚊帳の中で眠ることができるようになります。(1世帯あたり蚊帳2張を分け合います。)
- 30,000円で、60人の子どもが感染症を予防し健康に暮らすための衛生用品を手にすることができます。
衛生用品は具体的に石鹸、洗剤、タオル、歯磨き粉、歯ブラシ、生理用品などです。 - 90,000円で、400人の子どもが衛生促進の知識を得て、避難中も安全な生活が送れるようになります。
ご寄付の方法
下記サイトよりクレジットカード決済画面に進み、メッセージ欄に「パキスタン」とお書き添えの上、お申込みください。銀行からもお振込みいただけます。
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②【Tポイント】をご寄付いただけます
Yahoo! ネット募金を通じて【Tポイント】をご寄付いただくことも可能です。
https://donation.yahoo.co.jp/detail/5045006/
※パキスタンにおけるKnKの洪水支援は、Yahoo! ネット募金を含む日本の皆さまからのご寄付、そして認定NPO法人ジャパン・プラットフォームの助成により実施されています。