報告:シリア難民支援 現地事業総括 松永 晴子
5月中旬からイスラム圏はラマダンに入りました。
ラマダンが始まった途端に暑くなったヨルダン、ザアタリ難民キャンプでは5月末頃、続けて砂塵の吹き荒れる悪天候が続きました。
ラマダン中はどこも勤務時間が短くなります。5月後半から期末テストが始まったザアタリ難民キャンプ内の公立学校も短縮授業で、テストを受けたら下校となり、シリアの子どもたちも暑いキャンプの中で足早に学校を後にしていきます。
KnKの先生たちは、テストの終わった子どもたちに、サマーアクティビティの知らせが書かれた紙を配っていました。
難民キャンプ内でKnKが行うプログラムは、公立学校の中の授業をコマ単位で担当しているため、テスト期間中はKnKの先生たちの空き時間ができます。その時間を利用して、先生たちは今学期の振り返りや、来るべき夏期アクティビティの計画などをしました。
今学期の振り返りでは、教科ごとに、直面した課題やそれに対する対応策の成功例、失敗例について先生たちと話し合いました。
今学期が始まったばかりの時には、随分と問題が多かったクラスが、どうやって落ち着いてきたか、という話に花が咲きます。
確かに問題ばかりだったあるクラスは、たまたま問題児ばかりが集められており、授業中も私語が多く、教室も汚く、授業中の立ち歩きが目立ち、先生が何度も授業を中断しなくてはなりませんでした。女子シフトのクラスなので、ヒジャーブを授業中に巻き直す、きちんと椅子に座れない、などということも、問題になります。根気よく子どもたちに、KnKが授業で使っている「5つの指のルール」を話し、子どもたちが飽きないように、時にはおもしろおかしく、また時には厳しく指導をしてきた過程がありました。
手がかかる子どもほど思い入れがある、というのは、国を問わず同じのようで、子どもたちの困った態度や、それに対してどんな話を聞かせ、その子たちが今どうなったか、詳細をそれぞれの先生たちが共有します。
特に、日常的に目に付く授業態度のような問題は、先生たちが一貫した指導をし、ルールを徹底させることが大事です。KnKの先生だけではなく、公立校の他の先生たちにも協力してもらい、方向性を統一して指導にあたったことがよかったようです。
夏休みのアクティビティの計画も、たくさん案が出てきました。今年は7月中旬から6週間実施することを予定しています。夏休みは普段の授業とは少し趣向を変えて、楽しみの多い内容を過去にも提供しています。
先生たちの得意な教科指導だけではなく、手芸も教えたい、アテレコ(声優のように動画や人形劇に合わせてセリフをつける事)の指導をしてみたい、係活動をさせてみたい、などなど、先生たちの計画もさまざまです。
カラカラに乾いたキャンプの夏は、シリア人の先生たちにとって、もう5回目、6回目になります。学校内も殺風景な茶色い土地だから、ペットボトルとティッシュを使って植物を育てたい、やはり楽しい雰囲気作りには飾り付けも大事、風が通るところでアクティビティをしたいから、日よけをつけられないか、などいろいろなリクエストも挙りました。
6月中旬から8月まで、2ヵ月半という長い夏休みの間、暑くて家で何もせず、だらだらしがちな子どもたち。家から出て、友だちと会い、楽しく有意義に過ごせるようなアクティビティをしようという、先生たちの意欲がよく伝わってきました。
いろいろと話し合いが盛り上がり、終わる頃には喉がカラカラになります。
ラマダン中は、どの先生もみな断食をしているので、「あぁ、おいしいミントティー、よく冷えたタマル・ヒンディ(ラマダン中によく飲まれるデーツを使ったジュース)が飲みたいわ」と切なそうに笑いあって、会議は終了しました。
難民キャンプ内で、これまでKnKと同じように、シリアの子どもたちを対象とした支援事業を提供していた団体の中には、寄付や助成金が減り予算削減の結果、支援取りやめを決定したところも多くあります。そのような環境変化の中でも、継続してアクティビティを提供できるこの機会を、大切にしていきたいと考えています。
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