活動ニュース

シリア難民キャンプ、子どもたちの未来に必要なものとは?

 

2015/05/08
報告:プロジェクトコーディネーター 鈴木 泰斗
【シリア難民支援事業】春を迎え、新学期が始まったザアタリ難民キャンプでの活動をご紹介します。

春の訪れ、新学期の始まり

3月から4月にかけて、ヨルダンでは厳しい冬の終わりを告げるかのように、色鮮やかな花々が咲き誇ります。ザアタリ難民キャンプも暖かい陽気が心地よく、子どもたちも元気いっぱい、授業も活発に行われています。新学期になり、KnKが活動する教室では模様替えが行われ、教師も子どもも、新しい気持ちで授業を始めました。

冬の間にたまった砂埃を一斉に掃除して、教室も気持ちもさわやかになりました。

冬の間にたまった砂埃を一斉に掃除して、教室も気持ちもさわやかになりました。

ザアタリ難民キャンプ内でのKnKの活動

2013年の3月に始まったKnKのキャンプ事業も3年目に突入しました。KnKはザアタリ難民キャンプ内にある学校で演劇・音楽・作文の授業の実施ならびにスポーツと美術の授業への資材提供を行ってきました。

シリアの歌を歌う生徒 

シリアの歌を歌う生徒

有志の子どもによる暴力防止を啓発する劇の発表

有志の子どもによる暴力防止を啓発する劇の発表

KnKが提供する授業は戦時中や避難生活の中でさまざまな心の傷を抱えた子どもたちにとって癒しの場、そして、自分を表現する場であると同時に、子どもたちの継続した学校通学を促進する役割があります。事業開始当初は、戦争のトラウマや精神的な苦痛から明るい表情を失ってしまった子どもや、授業に集中できず授業を妨げるような行動を取っていた子どももいました。しかしながら、KnKが活動を開始してから2年の間で、子どもたちに少しずつ変化が現れてきました。子どもたちはKnKの授業の中で、新しいことを知る面白さ、他人に認められる喜び、他人を尊重する大切さなどを学んでいくにつれ、次第に表情が明るくなり、落ち着いた行動を取れるようになってきました。また、KnKではすべての子どもが穏やかな気持ちで安心して勉強ができ、自分は受け入れられていると感じられる環境づくりを心がけてきました。その結果、今では多くの子どもたちがKnKの授業を楽しみに学校に来るようになりました。

サッカーを楽しむ子どもたち

サッカーを楽しむ子どもたち

KnKの教室は明るい雰囲気を作るため絵や折り紙などで飾り付けをしています。

KnKの教室は明るい雰囲気を作るため絵や折り紙などで飾り付けをしています。

KnKヨルダン:シリア難民キャンプの子どもたち

元気いっぱい、好奇心旺盛の子どもたち

アラビア語教育

新学期からの新しい試みとして、通常の演劇・音楽・作文の3つに、母国語であるアラビア語基礎能力向上の要素を組み込んだ授業を始めました。この背景として、キャンプの子どもたちは長く学校教育から離れていたため、同じ年齢の子どもよりも学習が遅れており、特にアラビア語の習熟度の低さが深刻な問題になっているという現状がありました。
今学期、創意工夫を凝らした演劇・音楽・作文の授業を通じ、子どもたちが楽しみながら、アラビア語能力を多角的に向上させることを目指します。

演劇の授業でアラビア語の文章を読んでいる様子

演劇の授業でアラビア語の文章を読んでいる様子

アラビア語の知識クイズを行っている作文の授業

アラビア語の知識クイズを行っている作文の授業

6年生のアラビア語のテストの様子 

6年生のアラビア語のテストの様子

真剣にテストに取り組む5年生

真剣にテストに取り組む5年生

 

キャンプの子どもたちに読書の楽しみを

KnKが活動を行っている教室には図書コーナーが設けられており、休み時間などに子どもたちが自由に本を読んだり、借りたりすることができます。娯楽が少ないキャンプの中では、読書は子どもたちにとって大きな楽しみとなっており、休み時間、図書コーナーは大勢の子どもたちであふれかえります。また、さまざまな種類の本を取り揃えているので、読書は子どもたちの知的好奇心を満たすことができ、かつ子ども自身が新たな興味を見つけ、キャンプでの生活を充実させるきっかけになっています。今後も要望に合わせて随時、本を増やしていく予定です。

本の貸し出しの様子 

本の貸し出しの様子

いつもきれいに整理整頓された本棚

いつもきれいに整理整頓された本棚

他団体との共同授業で子どもの安全を強化

ザアタリ難民キャンプは2015年4月19日現在、83,501人の人々が暮らしています。最近では難民の流入は落ち着きをみせていますが、人やモノの動きが盛んになってきており、キャンプの中心にはさまざまな店が立ち並び、活気を見せています。一方で、生活に関わる問題や事故も頻出しています。交通や家での安全、衛生状況の悪化が子どもに関わる問題として挙げられます。最近では特に、ガスボンベによる火災事故の被害に子どもが巻き込まれる例も出てきています。キャンプのテント生活では、むき出しのガスボンベを使うため、使用する際には細心の注意が必要となることから、KnKは他団体と協力し、子どもたちにガスボンベの安全な使用法について教えています。また、手洗いやうがいを促す衛生についての講義も実施しています。このように、従来の授業に加え、他団体との協力関係を強め、より効果的で意義のある活動を行っていきます。

他団体との協力による衛生啓発

他団体との協力による衛生啓発

教員研修で授業の質をアップ

新学期を前に、授業を担当する教師を対象に研修を実施しました。今回の研修では、ストレス対処法、プレッシャー下での働き方、授業内容や計画の組み立て方、精神的な子どものケアが主なテーマでした。
教師の中には、子どもたちと同じく、シリアから避難してきたシリア人もいます。彼ら自身もさまざまな問題を抱えている中、子どもたち一人ひとりに寄り添った授業を行い、子どもたちを精神的に支えていくのはとても大変なことです。しかし、教師たちは向上心が高く、常に子どもたちのために質の高い授業を提供するよう意欲的で、研修にも熱心に参加していました。
KnKは、教師が多くの学びの機会を得ることで、質の高い授業を運営することが可能となり、子どもたちの学力向上や精神的な安定、最終的には子どもたちの希望ある明るい未来につながると信じ、定期的に研修を開催しています。教師たちも私たちの気持ちに応えようと努力し、日々の授業の改善につながっています。このようにKnKの活動は、現場で働く教師やスタッフの力に大きく支えられ、彼らとの信頼関係で成り立っています。

キャンプの先生を対象にした研修の様子 

キャンプの先生を対象にした研修の様子

キャンプの先生を対象にした研修の様子

キャンプの先生を対象にした研修の様子

KnKのシリア難民支援事業では、これまで培ってきた成果を基に、さらに新しい取り組みに挑戦することで、さらなる授業の質の向上を目指しています。
今後も温かいご理解・ご支援をよろしくお願いいたします。

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※ ヨルダン、ザアタリ難民キャンプにおけるKnKの活動は、認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム助成金(イラク・シリア難民・国内避難民支援)の活用と日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。

子どもたちを支えるために、あなたのサポートを必要としています


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例えば9,000円で、ザアタリ難民キャンプのシリア難民の子ども1名が
約5ヵ月間、音楽などの情操教育を受けられます。
KnKへのご寄付は寄付金控除の対象となり、税制上の優遇措置を受けられます。

 

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【KnKヨルダン活動概要】

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