活動ニュース

シリアとヨルダンの子どもたち、友情を育む学校を目指して

2015/01/16
報告:KnKスタッフ 熊本晃順
【シリア難民支援事業】

昨年12月、ヨルダンへ出張し、シリア難民支援として実施している「ホストコミュニティ支援事業」を視察しました。「難民」とは、「人種や宗教、国籍などさまざまな理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた」人々を意味します(1)。そして「ホストコミュニティ」とは、避難してきた難民を「受け入れる側の国・地域」を意味します。

380万人を超え、世界最多となったシリア難民

現在、シリア難民は380万人を超え、世界最多の難民と報道されています。そしてその半数以上が18歳未満の子どもとされています(2)。

ヨルダンへと避難してきたシリア難民の人々は、現在62万人とされ、難民キャンプ、もしくはホストコミュニティ(=ヨルダン人が暮らす村や町)で生活しています(3)。

ホストコミュニティで生活をする難民の子どもたちは、ヨルダンの学校に編入することになります。
シリアの生徒を受け入れる学校は、授業時間を短縮するなど、通常の学校カリキュラムを変えて事態に対応しています。

しかしシリアとヨルダンでは授業の内容やカリキュラムが異なり、シリア難民の子どもたちの中には、学習が滞り、次学年に進級できない子どもも多く存在します。

また学校や環境の変化により、ヨルダン人の子どもたちにも学習の遅れや進級が困難な生徒がいることがわかりました。

そこでKnKは、教育省や各学校と協力し、通常休日の土曜日に補習授業を行い、学習の遅れを取り戻す事業を実施することになりました。

補習授業を受けるシリア難民の子どもたち(1)
補習授業を受けるシリア難民の子どもたち(2)
補習授業を受けるシリア難民の子どもたち(3)
補習授業を受けるシリア難民の子どもたち
補習授業を受けるシリア難民の少女

補習授業を受けるシリア難民の少女

ホストコミュニティ、校長先生へのインタビュー

今回、訪問した学校の校長先生に話を聞いてみました。

シリア難民の子どもたちを受け入れているヨルダンの学校の校長

シリア難民の子どもたちを受け入れているヨルダンの学校の校長

シリアの紛争後、ヨルダンの社会や学校はどのように変化していますか?
社会全体として、水道や光熱費、食料の価格は上がり、私たちの生活や子どもたちを取り巻く環境は大きく変化しました。学校も同様です。シリア人の生徒を迎えるため、学校の体制を変えるなどさまざま努力をしています。

学校への負担も増す中、どうして土曜日の補習授業を承諾してくださったのでしょうか?
たしかに通常休日の土曜日に学校を開校することは負担ではありますが、それ以上にヨルダン人とシリア人の生徒同士が交流し、お互いを知り合う良い機会になると考えました。
実際、この授業を通じて、国籍を越えて新しい友人を見つけた子どもたちもいます。
また子どもたちの学習の遅れはとても大きな課題と考えていたため、この補習授業は学校にとっても生徒にとっても、大変役に立つ事業だと感じたのです。

今後の課題点はどこにあると思いますか?
現在編入してくるシリア人の生徒数は少なくなってきました。ただ、これから厳しい冬を迎えるにあたり、寒さ対策は十分ではありません。石油ストーブの燃料は、教育省から配給されるのですが、土曜日の補習クラス分は準備されていません。今後寒さを理由に子どもたちが学校に来なくなる可能性もありますし、子どもたちの健康面にも不安があります。

シリアから逃れてきた生徒へのインタビュー

土曜日の補習授業に通うシリアの生徒に話を聞いてみました。

ヨルダンの学校はどうですか?
学校に通えるのは本当にうれしい。でもヨルダンとシリアでは授業や学ぶことが違うので、慣れるのが大変です。それに学校から家までも遠いので、通うのも大変です。

土曜日の授業に参加してどのように感じますか?
授業に追いつけなかったところを学べるのでとてもありがたいです。また少ない人数で学べるところもよいと思います。

また、ここではさまざまな人たちに出会うことができます。
ヨルダン人のクラスメートはもちろん、KnKのような支援活動を行う外国の人たちやボランティアの大学生など。
遠い国から、私たちのことを気にかけてくれる人がいるのは、とてもうれしいです。

将来の夢はありますか?
昔は、弁護士になりたいと思っていました。
でも今の夢はシリアに帰ること。自分の家に帰りたいです。

インタビューに答えてくれたシリア人の生徒とボランティアに来ていた学生たちと一緒に(1)
インタビューに答えてくれたシリア人の生徒とボランティアに来ていた学生たちと一緒に(2)

インタビューに答えてくれたシリア人の生徒とボランティアに来ていた学生たちと一緒に

教育こそがシリアとヨルダンの友情の架け橋、未来を築く力

先の見えないシリア情勢の中、転居が多く同じ場所に長く滞在できない、家計を助けるため働かざるを得ないなど、さまざまな理由で学校に通い続けられないシリア難民の子どもたちが存在します。
また学校には通えても、学習の遅れから学校から遠ざかる子どもたちもいます。
KnKは、教育こそがシリアとヨルダンの友情の架け橋となり、未来を築く力になるとなるように、そして難民だからという理由で子どもたちの夢が途切れてしまわないように、引き続き学校や教員、生徒たちと協力し合いながら、支援活動を続けてまいります。

ザアタリ難民キャンプにて。荷車には仕事を待つ子どもたちが座っている。

ザアタリ難民キャンプにて。荷車には仕事を待つ子どもたちが座っている。

(1)1951年「難民の地位に関する条約」参照。https://www.unhcr.or.jp/ref_unhcr/refugee/
(2)(3)2015年1月13日現在、UNHCR調べ。https://data.unhcr.org/syrianrefugees/regional.php

※ ヨルダンにおけるKnKの活動は、認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム助成金(シリア紛争人道支援)の活用とウエストフランス・ソリダリテからのご寄付ならびに日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。

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