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若者の家/友情のレポーター(2019)

こんにちは。友情のレポーターの伊藤里久です。

7月31日は、再び『若者の家』を訪れた。
若者の家の子どもたちと、お昼ご飯にフィリピンの郷土料理のアドボなどを食べた後、『若者の家』に住む14歳の男の子にインタビューをした。初日にここを訪れたとき明るく話しかけてくれた子だ。
初めに、ここでは何をして過ごしているのかと聞くと、バスケをしたり絵を描いたりする、と笑いながら話してくれた。

友レポとして最後のインタビュー

『若者の家』には12月から住んでいる。以前路上生活をしていて、シンナーを吸っていたことで、希望の家(青少年鑑別所)に入れられ、そこからここに来たという。
彼は2010年、6歳の時から路上での生活をしていた。お父さんに暴力を振るわれていたのが原因で家出をし、そこから路上で寝泊りをするようになった。
私は彼の過去を知って、衝撃を受けた。彼の楽しそうに笑う姿や笑顔で声をかけてくれる姿、元気に遊んだり写真を撮ったりしていた姿からは想像のできないような過去だったからだ。
そこから彼が経験してきた路上での生活について聞いた。食事は、物乞いをしたりお金になるものをリサイクルショップに売ったりしてお金を手に入れ、何とか三食取れるようにしていたという。しかし、充分な量ではなかった。他にも同じような生活をしている仲間がいて、抗争に巻き込まれたことが大変だったけれど、一緒にクリスマスを過ごしたのはいい思い出だと話していた。シンナーも仲間に勧められて吸ったという。シンナーは空腹を紛らわすことができたというのを聞いて、また衝撃を受けた。
路上生活を始める前は、お父さん、お姉さんと住んでいた。家族には義理のお母さんもいる。家族にどれくらいの頻度で会っているか尋ねると、答えを濁されてしまって分からなかったけれど、家族に会いたいと言った。自分に暴力を振るったお父さんも、いつか態度を変えてくれるはずだと言った。私はそれを聞いて驚いた。お父さんに暴力を受けたと聞いたので、もう家族には会いたくないという答えを勝手ながらにも予想していたからだ。彼は答えている時ずっと下を向いていて、本心で言っているのか、彼の表情などは分からなかったけれど、きっと家族への思いがあるのだろうということが伝わった。
「将来の夢は?」と聞くと、「船乗りになりたい。海に行きたいから。」と言った。それは、仕事に就いてお金を稼ぎ、小さい頃に面倒を見てくれた田舎に住んでいるおばあちゃんを助けたいからだという。おばあちゃんと一緒に暮らしたいとも言っていた。
「自分のために将来欲しいものや、やってみたいことは?」と聞くと、「車が欲しい。」と答えた。どんな車が欲しいか聞くと、「スポーツカーが欲しい。」と笑って答えてくれた。彼はインタビューの最中、いつもとは違う悲しそうな目をしていて、下を向いて小さな声で話していたので、彼が少し笑ってくれて安心した。インタビュー中の男の子の姿は、彼が今まで経験してきた辛い経験や苦しい思いを物語っていた。答えるのを少しためらっているように思えた時もあった。
だから私は最後に、「今、こうやって自分の過去を人に話すのはどんな気持ち?」と聞いた。すると、「過去を思い出すから悲しい。」と言われた。私は自分で聞いたくせに、それを聞いて彼に対する申し訳ないという気持ちや、インタビューをセッティングしてくれたスタッフもいる中で、どうしてこんなことを聞いてしまったのだろうと後悔した。しかし、それと同時に、彼に感謝の気持ちでいっぱいになった。きっとインタビューを受けると聞いた時、不安や嫌だという気持ちもあったと思うし、答えたくない質問もたくさんあったと思うのに、私たちに勇気を持って自分の過去を話してくれたことが、私は嬉しかった。
そこで、「どうして悲しい気持ちになっても、質問に答えてくれたの?」と聞くと、「自分の過去を他の人と共有したかったから。」と答えてくれた。私たちと過去を共有しようと思ってくれたことが本当に嬉しかったし、辛い思い出を蘇らせてしまったかもしれないけれど、彼と真剣に向き合うことができて良かった。

うつむきながらも質問に答えてくれる男の子

最後に、「あなたの宝物は?」と聞くと、「自分自身」と答えた。
「たくさん変わることができて自分を誇りに思うから。」そう言ってくれた。その言葉には、彼の過去のすべてが込められているように思えた。
また、「KnKの『若者の家』に来たおかげで、学校に行って勉強できるようになったことが嬉しい。」という言葉を聞いて、私も友情のレポーターとして、少しだけどKnKに携わることができて本当に良かったと感じた。

インタビューが終わると、外でみんなで遊んだり、写真を撮ったり、おやつを食べて楽しい時間を過ごした。彼も楽しそうだったし、私に声をかけてくれて嬉しかった。

子どもたちとフィリピンで有名な外遊び

お別れの時間がやってきた。子どもたちが感想を言ってくれて、「カメラを使えて嬉しかった。」「初めて外国の人、日本人とごはんを食べられたのが良い思い出になった。」「コマで遊んだのが楽しかった。」など、みんな笑顔で話してくれた。最後にはプレゼントもくれた。

みんなからもらったプレゼントと言葉に笑顔

『若者の家』ではたくさんの楽しい時間を過ごしたので、もうしばらくここには来れないのかと思うと悲しかった。けれど、私はここでの思い出やここでできた友だちのことをずっと忘れない。友だちという存在の素晴らしさ、友だちと過ごす時間の楽しさを実感できたこの経験をこれからも大切にしていきたい。

伊藤里久

(文章中の子どもの名前はすべて仮名です)

<主催>認定NPO法人国境なき子どもたち(KnK)
<協賛>国際ソロプチミスト東京-広尾、フィリピン航空、オリンパス株式会社
<協力>Dialogue for People、株式会社GARDEN
<助成>公益財団法人三菱UFJ国際財団

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