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子ども支援センター研修終了授与式~パレスチナと日本の深い関係~

報告:パレスチナ現地代表 福神 遥

先日Facebookでもお伝えした通り、パレスチナで実施している「ジェリコ市における子ども支援の拡充事業」において、研修に参加した教員たちへ研修修了の授与式を行いました。

研修は2018年8月に開始し、ジェリコ県5校の公立校の教員、スクールカウンセラーと子ども支援センターのスタッフ、合計31名を対象に、音楽、美術、演劇、心理ケアの研修をそれぞれ22回ずつ行いました。
研修の講師を担当したのは、パレスチナでの経験が長い地元の団体で、演劇はYes Theatre、音楽と美術はAwtar、心理ケアはPalestinian Counseling centerが担当、KnKや教員たちとも研修内容を考え、1年半にわたって研修を実施しました。

演劇の研修

演劇の研修では、体や声を使って表現力を学んだり、ボールや新聞紙、空き箱といった家庭や学校で簡単に手に入るものを使って、普段の授業で役立つアイディアを多く取り入れました。子どもたちが親しみを持てるような、パペットづくりも行い、教員が手作りパペットを実際の授業でも使用しています。

パペットづくり

アラビア語の授業でのパペット

音楽の研修

音楽の研修では、キーボードや打楽器の簡単な演奏方法を学び、音楽経験がない教員でも授業の中で音楽の要素を取り入れ、子どもたちが楽しく学べる授業づくりのアイディアがたくさん出ました。

キーボードの弾き方を習う

打楽器を使った研修

美術の研修

美術の研修では、色の使い方や基本的な絵の描き方を学ぶとともに、視覚的にわかりやすい教材づくりも実施。普段学校ではなかなか教材を作る時間が取れない教員たちですが、研修でそれぞれの教科に合った教材をみんなで協力しながら作りました。

教材づくり

心理ケアの研修

心理ケアの研修は、スクールカウンセラーと子ども支援センターのスタッフに実施しました。問題を抱えている子どもの見つけ方や、ケーススタディとしてどのような対応法があるかを学んだり、保護者との関係強化のために、研修の一環として各学校で保護者会も開催しました。

カウンセラー研修

子ども支援センタースタッフ心理ケア研修

モニタリング

研修を担当した講師とKnKスタッフで学校とセンターに出向き、各教員・スタッフにつき7回ずつモニタリングも実施し、研修で学んだことを実際にどのように普段の授業や活動で活かしているか確認しました。モニタリング時には、良かった点や改善点を講師やKnKスタッフが教員・スタッフに伝える他、教員が悩みを打ち明けたり新しい授業案を提案する姿が垣間見えました。研修だけでは教える側と教わる側が一方通行になりがちですが、モニタリングを実施することで、研修参加者から講師に話す機会が出来たり、また、人が見に来るという緊張感がいい授業・活動運営につながっているようでした。

アラビア語の授業で役を演じる

アラビア語の授業で歌を歌い、指を鳴らしてリズムを取る

教員が作った教材を使って宗教の勉強(魚のうろこにクイズが入っている)

カウンセラーによる友人との付き合い方を学ぶ時間

子ども支援センター活動(1)

子ども支援センター活動(2)

子ども支援センター活動(3)

モニタリング後、講師と研修参加者が面談

アンケート結果

授与式に先立って研修参加者に実施したアンケートでは、84.1%の参加者が研修に参加してよかった、学ぶことがあったと回答。具体的には、「授業はルーティーンになりがちだったけれども新しいアイディアを学ぶことができた」「授業案だけではなく、子どもを静かにさせたいとき、集中させたいときに使えるゲームを知ることができ、よかった」「子どもたちのやる気を引き出すことができた」「子どもたちが学校をより好きになったと感じる」という意見や、「研修は教員自身にとってもストレスを発散させたり、楽しめる時間だった」という意見も出ました。

授与式

授与式では、研修でどんなことを学んだか、そしてそれを普段の授業・活動の中でどう活かしているかを、教員、スクールカウンセラー、子ども支援センタースタッフが発表しましたが、発表の中でも上記のような前向きな意見が出て、研修を担当した講師、そしてKnKスタッフも嬉しさを感じました。

授与式で掲げられた大きな看板は、子ども支援センターの美術スタッフと子どもたちが作ってくれました。パレスチナと日本の地図、また両地にゆかりのあるオリーブの木や盆栽が描かれています。

看板

看板作成中

フォーカスグループディスカッション

アンケートや数名ずつのグループを対象としたフォーカスグループディスカッションは、研修参加者だけではなく、教員やスタッフの授業・活動を実際に受けている生徒・子どもたちにも実施しました。約70%の教員・スタッフが、子どもに前向きな変化が表れていると回答し、子どもたちからも「以前よりも早く授業の内容を理解できるようになった」「以前は先生の質問に答えるときに緊張してうまく答えられなかったけれども、不安を感じることなく発言できるようになった」「以前は教室でただ座っているだけだったけれども、授業に参加するようになった」という意見や、「自分のことを好きになれた」「クラスメイトと仲良くなった」といった意見も出ました。教員が教科書をただ読み、生徒は黒板に書かれたことをただノートに写すだけだった授業から、体を動かしたり、教材を作ったり、グループワークを取り入れたりと、生徒参加型の授業が増えたことで、自分自身のことをより理解したり、クラスメイトや教員との関係が良好になった様子を知ることができました。

本事業は、子どもたちの社会性を育み、暴力に頼らないコミュニケーション方法を学んだり、日々の不安感を取り除き、子どもらしい日常生活を送ってもらうことを目的としています。アンケート結果では、夜眠れない、心配しすぎてしまうなどの不安感について、約50%の子どもに前向きな変化が見られました。研修に参加した教員・スタッフが今後も楽しい授業・活動を実施し、子どもたちが子どもらしく、学校やセンターで楽しく過ごせる日常があることを願ってやみません。

パレスチナと日本の深い関係

授与式では、パートナーであるジェリコ教育局局長とジェリコ市長から、本事業や日本への感謝のお言葉があり、日本大使館の方のスピーチからもパレスチナと日本の関係の深さを感じました。これからもパレスチナの人たちにとっての良い友人として、日本人が関われることはあるだろうと感じる瞬間でもありました。

教育省ジェリコ局長によるスピーチ

日本大使館職員によるスピーチ

2019年8月からは、第二グループとして新たに対象校を選定し、演劇、音楽、美術、心理ケアの研修がスタートしています。そちらの研修の様子もまたお伝えできたらと思います。

※本事業は、外務省・日本NGO連携無償資金協力の助成と皆さまからのご寄付で実施されています。

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