私たち国境なき子どもたち(KnK)は、2005年からパキスタン北部において活動を開始。以来、学校環境の整備や女子教育の普及活動を実施しています。学校環境を整備し、教師や保護者、生徒会の能力向上と住民の啓発を促すことで、コミュニティ全体で女子教育の普及や教育の質向上に取り組んでいけるように活動しています。日本では当たり前のように教育環境は整っていますが、パキスタンではそうではありません。
学校に通えない子どもたち
パキスタンでは、就学年齢の子どもが国全体で約5千万人いますが、その半数が学校に通えていません。KnKが支援を行うハイバル・パフトゥンハー州では学校に通っていない子どもが150万人いて、そのうち100万人を女子が占めており、教育のジェンダー格差が深刻です。そのため、国を挙げて学校施設を増やし、そして特に女性教員を育成し、増員することが急務となっています。
教育の普及によって救えるかもしれない命
女子教育の普及によって救える命があることも確かです。
例えば、田舎には助産師がいないため、出産時は車で数時間も離れた病院へ行かなければならず、着く前に道の真ん中で出産し、赤ちゃんや母親が死亡するケースが後を絶ちません。パキスタンでは5歳未満児の死亡率が20番目に高いのですが(1000人中72人が死亡)、助産師になる女子が増えれば出産時の死亡率は低下します。助産師に関わらず、専門知識や技能を身に着けた女性をパキスタンの地域社会が必要としています。
また、識字率の低さが命にかかわる事件に発展してしまうこともあります。薬を買おうとした母親と薬局で店番をしていた女性がどちらも文字を満足に読めなかったために誤って殺虫剤を購入し、それを服用した子どもが亡くなってしまうという事件がありました。同州の女性識字率は35%ととても低く、この悲しい出来事は女子が教育を受ける必要性を地域の人々が痛感するきっかけとなりました。
KnKの取り組みとその成果
KnKではパキスタンチームと協働し、2010年から84校の学校環境を整備してきました。2019年度には8校の校舎を整備し、1,751名に安全で充実した学習環境を確保しました。また、地域住民の意識改革や女子の通学阻害要因であったトイレや壁を整備することで女子生徒が通いやすくなり、対象地域における純就学率が40%から75%に改善しました。
校舎がない学校で勉強する少女たちにとって、傘は雨、日差し、そして男性からの視線を避けるための必需品
子どもたちは未来の星
教員となったリファットさんが初級高校で学んでいた時に新しい校舎は完成しました。新しい校舎になってからは学校に通うことが好きになり、勉強にも関心を持つようになったそうで、現在は公立学校で教鞭をとりながら大学院で勉強を続けています。
リファットさんはこう語ります。
「“未来の星”とも言える子どもたちの成長を見守ることができる仕事に誇りを持っています。すでにパキスタンの小学校を中心に整備いただきましたが、私たちパキスタンの女性がさらに上の教育を受け、それぞれの夢をかなえられるよう、ご支援を続けていただけましたら幸いです」
2020年は新たに7校の工事に取り組み、女子教育をはじめとした教育のさらなる普及を目指しています。
※ パキスタンにおけるKnKの活動は、外務省「日本NGO連携無償資金協力」の活用、ならびに日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。
子どもたちを支えるために、あなたのサポートを必要としています
5,000円で、5人の青少年が1ヵ月間、学校に通えます。
KnKへのご寄付は寄付金控除の対象となり、税制上の優遇措置を受けられます。
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