活動ニュース

内戦後の故郷、子どもたちが安心して学べるように/ミャンマー・教育環境整備事業

2015/09/01
報告:プロジェクト・アドミニストレーター 吉崎 翠

国境なき子どもたち(KnK)は、ミャンマー(ビルマ)の南東部に位置するカレン州で、教育環境の整備事業を行っています。本事業では、内戦から逃れて避難民となった子どもたちが故郷に帰還した際に快適に学べる環境を提供することを目的としています。今年度は更に活動内容を充実させながら、支援の届きにくい地域にまで活動範囲を広げています。

今にも壊れそうに傾いた校舎で勉強する子どもたち

今にも壊れそうに傾いた校舎で勉強する子どもたち

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学校資機材の不足や、過密状態といった問題点が目立つ教育環境

 

教育支援を必要とする背景

ミャンマーは人口の約7割をビルマ族が占める一方で、130を超す少数民族が暮らす多民族国家です。1948年の独立以降、自治権の拡大や分離独立を求める一部の武装した少数民族と政府軍との間で内戦が続いていました。

KnKが活動するカレン州では約60年間も内戦が続き、多くの避難民を生みました。タイ国境付近の難民キャンプに暮らす約11万人のミャンマー難民のうち、難民として認められている7割近くの人々がカレン州から逃れてきたと言われています(2015年7月UNHCR調べ)。

2012年1月にはカレン州全土において、政府軍と同州で最大の民族武装勢力であったカレン民族同盟(KNU)との間で停戦合意が結ばれ、国内外に避難していた人々の帰還の動きが確認されています。一方で、長年の内戦の影響で社会インフラ整備は放置された状態が続き、学校の校舎や資機材も老朽化が目立ちます。

帰還にともない増加が予測される子どもの数や学校のニーズに対して行政や他機関による支援が間に合っておらず、一刻も早い教育環境の整備が必要です。

調査を重ね、新たな支援先6校を決定

KnKは、カレン州コーカレータウンシップで以下の支援を行っています。

  1. 老朽化した校舎の新築と修繕
  2. 不足している、もしくは破損して使用できなくなった机、椅子などの教育資機材や文房具の提供
  3. 生徒やPTA(教員、保護者、地域住民)向けのワークショップを通じた教育環境の整備

支援を行う候補校に関する情報収集を重ね、実際にスタッフが一校、一校に出向き丁寧に調査を行った結果、すでに帰還民が確認されている、もしくは帰還が予測される6校を支援対象として決定しました。

調査を行う中、ほとんどの学校で生徒数に対して校舎のスペースがはるかに狭く、過密状態での学習を余儀なくされているケースが多く見られました。また、校舎の痛みが激しく、安全面から一部の修繕ではなく建物の基礎から取り換える必要があるケースなど、修繕よりも校舎の新築のニーズが高いことが分かりました。

そこで、今年度はより支援の届きにくい地域にまで活動範囲を広げながら、以上のニーズに応えるために昨年度よりも更に活動内容を充実させて、校舎の「新築(増改築含む)」も行います。

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今年度の支援対象校(赤丸)はタウンシップ郊外で、昨年度の対象校(青丸)よりもアクセスが更に困難。車、ボート、バイクを数時間乗り継いで向かうことも。 (C)MIMU/Myanmar Information Management Unit

支援対象校の様子

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帰還した子どもたちにとって学校が快適に学べる場所であるように

今年度の支援対象校の一つであるKyar Inn(ジャッイン)村の小学校には、学校校舎がありません。昨年に公立校として指定されたものの、行政からの支援が行き届いておらずに子どもたちは村の僧院を間借りして勉強をしています。子どもたちにKnKが支援を行うことを説明すると、「早く自分たちの学校(校舎)がほしかったから、叶うなんて嬉しい!」と喜びの声が聞こえてきました。

他にも、「今は(家具が足らずに)床に座って授業を受けているから、雨季は寒くて風邪をひいてしまう」「天井が全体をカバーしていないので、日差しが強い日は暑くて授業に集中できない。」「黒板が古く、小さすぎてよく見えない」「勉強は大好きだけど文房具が足りない」など、子どもたち自身も快適な学習環境を強く求めていることが分かりました。

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KnKを温かく迎え入れてくれた子どもたち、先生、地域住民の皆さま

 

この村では、内戦中には銃撃戦があると授業を中断して村の安全なところや村外に逃げなければならなかったそうです。ここ数年間で治安が落ち着き、内戦から逃れて避難民となった人々が少しずつ戻ってきています。

インタビューに答えてくれたトーンくん(仮名・11歳)は、悪化する治安や生活の苦しさから家族でタイ国境に逃れたものの、家が火事に遭い、その後はタイ難民キャンプで生活していました。難民キャンプでは友だちが思うようにつくれなかったので、帰還した今は出身村の学校に通えて嬉しいと話してくれました。

本事業による教育環境の整備は、帰還する人々を受け入れる地域への支援にもつながります。このKyar Inn(ジャッイン)村の近隣の小学校は公立校としては認められておらず、そこで勉強する子どもたちは卒業資格を得られずに公立中学校や高校への進学ができません。しかし、KnKの支援で校舎を新築する学校(公立校)は近隣校から転校を希望する生徒も収容できるほどの大きさのため、より多くの子どもたちに必要な教育環境や機会を提供することができるのです。

今後は生徒やPTA(教員、保護者、地域住民)に向けたワークショップを開催し、引き続きそれぞれの学校や地域のニーズを丁寧にくみ取りながら活動を続けていきます。

子どもたちを支えるために、あなたのサポートを必要としています


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5,000円で、5人の青少年が1ヵ月間、学校に通えます。
KnKへのご寄付は寄付金控除の対象となり、税制上の優遇措置を受けられます。

※ この活動は、認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム助成金(ミャンマー少数民族帰還民支援)の活用ならびに日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。

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【KnKミャンマー活動概要】

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