活動ニュース

カンボジア、パイリン州で生涯学習の基盤を整えました

報告:カンボジア プロジェクト・コーディネーター 福神 遥

カンボジアのパイリン州において実施している、コミュニティ・ラーニング・センター(CLC。2022年度建設分からは、カンボジア教育省の意向により、名称がライフロング・ラーニング・センターLLLCに変更)の質向上を目指した青少年の就労支援事業における、CLCの建設についてご報告いたします。

本事業では、3年間で5つのCLCをパイリン州に建設し、既存のCLCと合わせて、9ヶ所のCLCにおいて、就労に繋がる職業訓練を実施しています。
2022年は、パイリン市内のプノムヤード地区と、郊外のオウチャットブラム村にそれぞれ1棟ずつCLCを建設いたしました。建物は、カンボジア教育省パイリン教育局ノンフォーマル教育課の管理下にあり、土地の選定や図面の作成、完成後の管理までを教育省が管轄しています。建設にあたっては、入札を行って地元の建設業者2社(RathSothy社とVRP社)を選定、実際の作業にあたる建設会社とは別に、建物の強度や工程、資機材の質などについて相談できるコンサルタント会社のPDCにも入っていただき、約半年の工期でCLCを建設しました。

基礎工事の様子。奥は既存の小学校

鉄筋コンクリートの柱とレンガで頑丈な作りです

CLCの場所は地域の人々が通いやすい公立学校の敷地内を選定、基礎工事から工事を開始しました。KnKのシビルエンジニアが現場に常駐し、品質や作業手順、工事進捗を管理し、時にはオンラインでコンサルタント会社と現場を繋ぎ、助言を受けることもありました。

建物上部のコンクリート打設時の様子

工事は、全工程を①基礎、②柱・骨組み、③建物上部・屋根、④外壁・内装の4つに区切り、1つの工程が終わる時には、建設会社とコンサルタント会社、KnK職員、教育省の担当者などと一緒に現場での確認作業を取り入れ、品質や強度、安全性を常に確認しながら工事を進めました。

鉄筋籠作成。女性の方たちも現場で活躍

遠方から通う作業員は、時に住み込みで作業に当たってくれました

コンクリート打設時に雨が降らないよう、お供え物をして祈願

建物は、平屋で部屋が3つあり、建物とは別に、男女別トイレも建設しました。特にカンボジアの農村部においては、伝統的な木造の高床式の家が多いのですが、CLCはレンガと鉄筋コンクリート造りで床にはタイルを貼り、天井には扇風機を設置、頑丈で使いやすいセンターとなっています。構造や内装は現代的である一方、屋根部分には瓦を敷き、光が入る採光窓をはじめ、暑いカンボジアでも過ごしやすいように窓が多く風の通りやすい、伝統的なクメール(カンボジア)様式のデザインも取り入れ、伝統を大事にしつつ、使いやすさも備えている建物です。

男性用トイレ

事業看板

掲示板にはQRコードが貼られている

階段とは別にスロープがあり、バリアフリーの建物となっている

職業訓練コースの選定にあたっては、パイリン州や隣接するバッタバン州における企業の雇用状況や労働条件を調査するとともに、地域のリーダーや学校の教員で構成されるCLC運営委員会を設立、地域における需要や、実際にコースに参加する方たちの希望も調査しました。それぞれの調査結果をもとに、運営委員会メンバー、教育省と協議し、プノムヤードでは美容とエアコン修理コースを、オウチャットブラムでは縫製と理容のコースを選定しました。それぞれのコースで使う椅子やミシンなどの資機材、バリカンや布、工具、マニュキュアや化粧品も揃えて、全4コースが11月からスタートし、現在も毎日地域の方たちがCLCに通い、学んでいます。

エアコン修理コース

ホワイトボードと縫製コース用マネキン

理容コースの一環として、地域の子どもたちを無料で散髪

事業開始以来、5つのCLC建設に関わったKnKの職員であるシビルエンジニアのテスに、話を聞きました。

建設にあたり、苦労したことや難しかったことはありますか?

- 建設に従事した2つの建設会社は、経験豊富な会社ではありますが、現場で実際に作業にあたる方たちは、未経験や作業に慣れていない方たちもいて、そういった方たちにも安全に、品質を守ってもらいながら作業をしてもらうよう、心がけていました。
工事が雨季と重なったため、雨が降ると作業が中断したり、特にオウチャットブラムは郊外にあり、前日に雨が降ると道が氾濫してしまって、資機材が運べなくなることもありました。雨によって作業がストップする度に、工事の手順を変えたり、新たにスケジュールを考え直さなければならず、苦労しました。

左がエンジニアのテス

また、建設現場が学校の敷地内ということもあり、授業の妨げになる大きな音が出る作業は、昼休みや休日に行うなど、騒音にも気を遣いました。

エンジニアとして、どんなことに気を付けていましたか?

- 作業の進捗を確認し、品質を確保するため、毎日現場に行き、現場のリーダーや作業員とよく話をしました。図面をしっかり見ないまま、きちんと確認せずに作業をしてしまう作業員もいたので、常に図面を見て、確認することを気を付けていました。建設会社2つもそうですが、コンサルタントであるPDCの方とも協議を重ね、使用する資機材について確認したり、品質や安全面について協議したり、現場の作業状況や天候に合わせて工程を変えることもありました。

建物の特徴はありますか?

- 伝統的なクメール様式と、使いやすいモダンなデザインを両方取り入れた建物になっています。資機材の品質にも気を配り、安全で、高品質な建物です。

今後、どのようなセンターになってほしいですか?

- 100年後とは言いませんが、今後、CLCが地域の方たちが集まり、学ぶ場として、20年30年地域で使ってもらえると嬉しいです。

事業終了後も含む今後は、教育省主導の職業訓練コースだけではなく、公民館のように地域の方たちが会議やイベントで利用したり、子ども向けの学習の場として使ってもらえるよう、CLC運営委員会メンバーや地域の方たち、他機関、教育省と協議をしています。

正面外観。特に屋根の部分が伝統的なクメール様式のデザイン

※この活動は、外務省「日本NGO連携無償資金協力」の活用ならびに日本の皆さまからのご支援で成り立っています。

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