スタッフ日記 認定NPO法人国境なき子どもたちブログ

コロナ禍におけるパキスタンのトランスジェンダーたち

パキスタン事業担当の大竹です。今回、コロナの感染拡大で経済的な打撃を受けたパキスタン北西部の家庭にお米や小麦粉、油などの食料支援を行いました。計180家庭のうち約3分の1がトランスジェンダー(※)の家庭でした。偏見のため職に就けず、トランスジェンダーの人々の多くは物乞い、ダンス、売春などで生計を立てており、今回のコロナ禍で、結婚式場は閉鎖され、パーティーが次々と中止になる中、収入が途絶え、ろくに食事もとることができなくなる、といった状況が続いていたようです。

(※トランスジェンダー:生まれたときに割り当てられた性別とは異なる性別を自認する人。パキスタンでは「Khawaja Sara」と呼ばれ、第3の性として位置づけられている。)

恥ずかしながら現地のトランスジェンダーの現状について耳にしたのはこれが初めてのことでしたので少し調べてみました。

国内のトランスジェンダー人口は少なくとも1万人。
パキスタンでは2009年、他国に先駆けて第3の性としてトランスジェンダーが法的に認められたそうです。2017年にはトランスジェンダーの記載のあるパスポート発給も開始。2018年トランスジェンダーの権利保護を定めた法律が成立。この法律には、教育、雇用、医療などの現場で差別や不公正な扱いを禁じる条項も含まれているそうです。

イスラム圏では性に関する伝統的な解釈が一般的で、トランスジェンダーを障害とみなしたり、同性愛者の人々に重い刑罰が課される国もあります。そのイスラム圏のパキスタンで、トランスジェンダーに対する差別が法的に禁じられたことは非常に大きな意味を持つと思います。

法律施行以降、ニュースキャスターやモデルとしてTVで活躍するトランスジェンダーの姿や、選挙で出馬したり、人権擁護の草の根運動を始める若者たちもでてくるなど、とても頼もしく感じます。ですが、こうした明るい兆しがあるものの、大半のトランスジェンダーの人々は社会からの差別や偏見、ハラスメントなどを受け、パキスタンの社会で最も周縁化されているともいえます。ヘイトクライムも珍しくなく、最悪のケースでは殺傷、暴行やレイプの被害者になることも少なくないのだそうです。

2018年には、トランスジェンダーの若者のための学校がラホールで設立されています。
イスラムの内部にも存在する(本来当たり前のことですが)多様性を社会全体、市民一人ひとりが受け入れていくことができるよう、若い人たちがその一歩を切り開いてくれたらよいな!と思います。そして日本も。。。

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