こんにちは。パレスチナ事務所の福神です。
私がパレスチナを好きな理由のひとつは、おもてなしの心です。これはパレスチナ人に限らず、今までシリア人やヨルダン人の同僚、友人たちと付き合う中でもいつも感じていたことですが、家に招待してごちそうをふるまってくれたり、お店での買い物中にコーヒーを出してくれたり、アラブの人たちはいつも本当に素晴らしいおもてなしをしてくれます。
そんなパレスチナの人にとって、夕食の残り物を誰かにおすそ分けすることは、時には失礼にあたるようなのですが、そんなことは全く気にしないと私が言ってから、同僚のオルファットはよく、お家から手作りのアラブ料理を持ってきてくれるようになりました。
今日は、私のアラブ料理の先生のような存在であるオルファットに、パレスチナ(アラブ)料理について書いてもらったので、私の超意訳日本語でご紹介いたします。
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Palestine Dishes
みなさんそれぞれに自分が何者かについて考えることがあると思いますし、自分のことを考える時に、故郷の料理と結びつけて考えることもあると思います。パレスチナ人は特に、料理を自分たちの伝統、文化と受け止めていることが多い気がします。
パレスチナでももちろん、すべての料理に物語があり、地域や村によって特別な意味を持つ料理もあります。例えば、パレスチナ北部ではムサッハンが有名で、南部ではキドラが有名です。
パレスチナでは、特別な日の食事として、行事やお祝いごとがあるときに食べる特別な料理もあります。特に、マンサフ(羊肉を煮込み、発酵・乾燥させたソースと炊いたお米といただく料理)は、結婚式では招待客にふるまわれ、イードと呼ばれるイスラム教のお祭りでは家族や親族が集まるときによく食べられる料理です。
特別な日の豪華な食事としては、マンサフの他にもキドラ、マックルーベなどがあり、家にお客さんが来た時には、お客さんへの尊敬の意味を込めて、これらの料理がふるまわれます。
パレスチナでは、お客さんに出す料理として、キャベツを使った料理やレンズ豆のスープなど、普段の食卓にのぼるような料理を出すことは、お客さんに失礼にあたると信じられており、普段よりも手の込んだ、豪華な食事をふるまうことがよいとされています。
金曜日は、パレスチナのイスラム教徒にとって大事な日です。お昼にお祈りのためにモスクに行く人も多く、午後は普段離れて暮らす家族や親せきも集まって、一緒にお昼を食べます。金曜のランチは“特別なもの”なので、金曜日にはパレスチナ家庭の80%がマックルーベを、20%がマンサフを食べている、との冗談もあるぐらいです(この手の食にまつわる冗談は他にもたくさんあります)。
パレスチナでは、スイーツも特別な意味を持つことがあります。特にナブルス発祥と言われているカナーフェは、何か嬉しいことがあった時にふるまうものとして有名で、自分自身だけではなく、家族が婚約した時、赤ちゃんが生まれた時や学校を卒業した際にふるまわれます。これは婚約パーティーなどのお祝いごとに集まってくれたお客さんにふるまわれるだけではなくて、職場で同僚たちにふるまわれることもあります(嬉しいことがあった人が、同僚にスイーツをふるまう、というアラブの文化は素敵だなと福神は思っています)。
今日は、パレスチナで有名ないくつかのレシピをご紹介いたします。
(オルファットの家庭の味で、特に分量など記載しておらず申し訳ないのですが、量と味を見ながら、感覚で挑戦してみてください)
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マックルーベ
材料:
お米
鶏肉(もも肉、胸肉どちらでも大丈夫)
じゃがいも、なす、カリフラワーなどお好みの野菜
塩、黒こしょう、お好みのスパイス(クミン、カルダモン、クローブなど)
1. お米はお湯に15分つけておく(日本のお米は水分が多いので、普段お家でお米を炊く前の作業を行うので問題ないと思います。こちらのお米は水分が少なく、特にマックルーベを作るときには事前にお米をお湯につけておくことが多いです)
2. お米はお湯に浸した後、塩、黒こしょう、スパイスを入れてよく混ぜておく
3. 鶏肉を塩こしょうで時間をかけてじっくり茹でる。茹で汁は取っておく。スパイスやハーブが好きな人は、鶏肉を茹でる際に入れてもよい。家庭によっては、茹でた鶏肉をオーブンやフライパンでオリーブオイルと一緒に焼く家庭もあります。
4. じゃがいも、なす、カリフラワーを0.5~10mmぐらいの薄切りにして、素揚げする
5. 鍋の中に鶏肉、揚げた野菜を敷き、お米を入れる。最後に鶏肉を茹でた際の茹で汁をお米の量に合わせて入れる。
6. 鍋を火にかけ、沸騰するまでは強火で、沸騰したら弱火にし、お米が炊けるまで火にかける。
7. お米が炊けたら、少し時間を置いて、大きなお皿の上に鍋の底が上になるように、鍋をひっくり返して置く。鍋の底を強くたたいて、中身が下に落ちるようにしてから、鍋を上にあげて中身を取り出す。下からお米、野菜、鶏肉になるはず。
マックルーベというのはアラビア語で逆さまという意味で、最後に鍋を逆さにして中身を盛り付けることから、この名前がつきました。イタリアンパセリやアーモンドなどのナッツ、ざくろの実を上からトッピングすると色どりもきれいです。ぜひヨーグルトや、サラダ(キュウリ、トマト、イタリアンパセリを細かく刻み、オリーブオイル、レモン、塩で味付けしたものが一般的)と一緒に召し上がってください。
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キドレ
材料:
羊肉(牛肉や鶏肉でも)
お米
ひよこ豆、たまねぎ、にんにく
チキンストック
塩、こしょう、クミンパウダー、サフラン
作り方:
1. お肉は、塩こしょうをして、事前に茹でるかオーブンで焼いておく。お好みのスパイスがあれば入れてもよい
2. お米はお湯に15分間つけておく(日本のお米は水分が多いので、普段お家でお米を炊く前の作業を行うので問題ないと思います)
3. ひよこ豆は乾燥したものであれば事前に水につけてから茹でておく。水煮であればそのままで大丈夫
4. 鍋に油を敷き、みじん切りした玉ねぎとにんにくを少し色が変わるまで炒める
5. 4の鍋にひよこ豆、塩、クミンパウダー、サフランを入れて2分ほど炒める
6. 5の鍋にお米を入れてよく混ぜ、チキンストック(チキンスープ。なければ、お水と固形ブイヨンでも可能)をお米の分量分入れる
7. 6の鍋を火にかけ、沸騰するまでは強火で、沸騰したら弱火にし、お米が炊けるまで火にかける。
8. お米、お肉の順番でお皿に盛りつける。ぜひヨーグルトをかけて食べてみてください
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フリーケスープ
材料:
フリーケ
たまねぎ
チキンストック
塩、こしょう、ローリエ(月桂樹の葉)
作り方:
1. フリーケは水で流しながら洗った後、お湯の中に15分ほどつけておく
2. たまねぎはみじん切りにしておく
3. 鍋にオリーブオイルを入れて、たまねぎの色が変わるまで炒める
4. 3の鍋にフリーケを入れて、全体に油がまわるようによく炒める
5. チキンストック(チキンスープ。なければ、お水と固形ブイヨンでも可能)、ローリエを入れて、沸騰するまでは強火で、沸騰したら弱火にして40分ほど煮込む(フリーケを見ながら煮込む時間を調整してください)
6. 最後に塩こしょうで味付けをする
フリーケは、青麦をローストしたもので、ぷちぷちとおもしろい食感の食材です。スープに入れる他、お米のように炊いて食べるのも一般的です。栄養価がとても高く、最近はスーパーフードとして、ヨーロッパや日本でも注目されているみたいです。
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ムサッハン
材料:
鶏肉(もも肉でも胸肉でも大丈夫)
タブーンブレッド(平たいナンのようなパンのこと。パンがいい味を出すのですが、日本にはないと思うので、鶏肉だけでもいいと思います)
たまねぎ
塩、こしょう、スマック(ユカリのような、紫色をした少し酸っぱいスパイス。日本でも輸入食材を扱うようなお店にはあるみたいです)
チキンストック
1. タブーンブレッドにオリーブオイルを塗って1時間ほど置いておく
2. たまねぎは薄く切っておく
3. 鶏肉を塩こしょうで茹でる。
4. 鍋にオリーブオイルを入れて、玉ねぎを炒め塩で味付けする。お好みのスパイスがあれば入れても良い
5. 3の鍋にチキンストック(チキンスープ。なければ水と固形ブイヨンでも可能)を入れる。スープを作るわけではないので、チキンストックはごく少量で水分がなくなるまで炒める。
6. 4の鍋にスマックとオリーブオイルを入れてよく混ぜる
7. 鶏肉に塩こしょう、スマックをかけておく
8. タブーンブレッド、5のたまねぎ、6の鶏肉の順番で重ねて、オーブンで焼く
アラブ料理は、日本の皆さんにはあまりなじみがないと思いますが、お米を使う料理も多く、辛くないスパイスの味付けは、日本人好みだと思います。ぜひ、家庭で試してみてください。