活動ニュース

【バングラデシュ】私たちは敬意と感謝でつながっている

報告:広報/支援者対応 岡田茜

2025年10月下旬、私はふだん働く東京事務局から遠く離れ、首都ダッカの中心街で、子どもたちが待つ「ほほえみドロップインセンター」へ向かう車中にいました。センターを訪れるのは「友情のレポーター」の取材に同行した2023年以来ちょうど 2年ぶりです。子どもたちや現地スタッフに会いたいと、はやる気持ちとは正反対に、「ダッカ名物」と表現してよいのか、大渋滞につかまり車はなかなか前に進みません。

信号はほとんどなく、乗用車に大型バス、リキシャ、CNG(緑色の三輪タクシー)、オートバイ、自転車、荷車(今にも上から荷物が落ちてきそう…)、それに馬車、そして、ありとあらゆる乗り物の隙間を縫って道を横断する歩行者…と、ダッカの道路は相変わらず「なんでもあり」の世界。私の横に座っていたパートナー団体「SUF(Society for Underprivileged Families)」代表のティプ氏によれば、ここ一年でオートリキシャ(エンジン付きのリキシャ)の数が極端に増えたことが渋滞の原因の一つとのこと。

それというのも、経済状況が依然として深刻な地方からダッカへ出稼ぎにやって来る若者の数がまたさらに増えており、彼らが現金を稼ぐために一番手っ取り早い手段がオートリキシャの運転手になることなのだそう。2024年8月からの暫定政権下、彼らは無免許で運転し、ダッカの交通ルールを知らないがゆえに、大通りでも進行方向とは逆側から進入して道路を塞ぐので、みんなが身動きの取れない状況に陥ってしまうのです。

来年2月に総選挙が実施される予定ですが、「ふたを開けてみないと何も分からないな…」とつぶやくティプ氏。新政権が発足してからも社会秩序が安定するには相当な時間と労力を要しそうです。宿泊先とセンターとの往復の間、過渡期におけるダッカ社会を垣間見た、私にとって貴重な体験となりました。

ドロップインセンターの子どもたちの笑顔

センターから見えるブリゴンガ川の景色。対岸が子どもたちの生活の場であるショドルガット港

センターから見えるブリゴンガ川の景色。対岸が子どもたちの生活の場であるショドルガット港

さて、「ほほえみドロップインセンター」を利用する40名近い子どもたちは皆、私を見るなり笑顔と握手で歓迎してくれました。それぞれ他人には言えない複雑な事情を抱え、言葉で簡単に表現することは決してできない過酷な環境で、大人の中にまじって必死に働き生き抜く彼らにとって、このセンターだけが、心から安心安全に過ごし、「子ども」に戻れる唯一の場所であることは、彼らの表情から容易に見て取れます。

カメラが大好きな子どもたち

カメラが大好きな子どもたち

それぞれ好きなものの絵を描いてくれました

それぞれ好きなものの絵を描いてくれました

子どもたちの大きな瞳が輝く

子どもたちの大きな瞳が輝く

連日33、34度の暑さの中(それでも湿気がない分、今夏の東京より過ごしやすく感じました)、汗をぬぐう私に何人かの子どもたちが声をかけてくれ、自身で買ったのだろう、持っていた炭酸ジュースやキャンディを私にすすめてくれました。他者を思いやる優しい気持ちに触れて、何度もありがたい気持ちになったことを思い出します。

さらに今回とてもうれしい再会があり、幼い頃からセンターで育ち、現在も近隣地域で生活を続ける若者たちが、現在はボランティアとして幼い子どもたちのお世話や指導、センターの運営において活躍する姿を見ることができました。「私は、7、8歳の頃からずっと、このセンターのスタッフに育ててもらいました。今は自分の家族ができ責任ある立場になったので、これからはセンターにいっぱい恩返しをしたい」-そんな頼もしいメッセージを伝えてくれたのは、現在は新しい家族と共に暮らすソニアです。

いつもニコニコ笑顔のソニアと彼女の赤ちゃん

いつもニコニコ笑顔のソニアと彼女の赤ちゃん

一方、とても気にかかる、今でも頭から離れない子どもたちとの出逢いもありました。その内の一人は、数日前に実の親から港に置き去りにされたという5、6歳くらいの男の子。ソーシャルワーカーのビプロブによれば、親がまた探しに来るケースもありますが、実父はすでに他界し、実母は再婚して別の家庭があるため、この子が家庭に戻れるチャンスはほぼないだろうとのこと…。視察の最終日まで男の子の様子を遠くから見ていましたが、独り下を向いていることが多く、また、一度横になると熟睡してなかなか目を覚まさず、疲れきっているのが伝わりました。あの、何を見て、何を考えているか測りかねる、ぼんやりした虚ろな目を、私は一生忘れられないですし、彼にとっても、「ほほえみドロップインセンター」の存在が必要不可欠であることがよく分かりました。

新スタッフとの出逢い

スタッフの集合写真。左から、ジェスミン、ビプロブ、タリク、チョンドン、シャミマ

スタッフの集合写真。左から、ジェスミン、ビプロブ、タリク、チョンドン、シャミマ

その子どもたちにとって「希望の存在」であるドロップインセンターのスタッフは、子どもたちが健やかに成長できることをひたすら願い、日々全力で活動を続けています。センター長のタリク、ソーシャルワーカーのチョンドンとビプロブの三名は2011年の開設当初からセンターで働いています。子どもたちのケアはもちろんですが、周辺コミュニティへの働きかけも、この約15年間、地道に続けてきました。

毎日約50人分の食事を用意してくれるのは料理担当のジェスミン、そして、念願だった女性ソーシャルワーカーの増員が叶い、2025年1月からセンターで働き始めたのが、ソーシャルワーカーのシャミマです(もう一名、教育担当のファルザナは、産休で今回会うことが叶いませんでした。)

「ここにいる全員、私の子どもよ!」と豪快に笑うシャミマは、これまで20年近く、学校に通えず働く子どもたちの先生として、SUFの教育プログラムで働いてきました。確かに子どもと接する姿は大ベテランの風格。初めから「教え諭す」のでなく、まずは子どもたちに考えてもらったうえで良い方向へ「導いていく」やり方は、私も思わずうなってしまうほど素晴らしい教育法でした。「肝っ玉母さん」のような雰囲気のシャミマを、子どもたち全員が慕っています。特に女子の来所が増え、女子特有のさまざまな悩みや問題を打ち明けているようでした。

実は、シャミマと初めて逢う日の前日、彼女はオートリキシャと接触する事故に遭い、足に大ケガを負ってしまいました。本来は休むことが望ましいのですが、私がいる間、彼女は一日も休むことはありませんでした。センター前の小道で偶然、松葉づえをつきながら少しずつ歩みを進める後ろ姿を見かけることがあったのですが、ゆっくりでも前に進もうとするその一歩一歩が、「今日も子どもたちのために務めを果たそう」というシャミマの強い意志と責任感を表しているようでした。

 

以上、今回の出張について、心に残る事柄を中心にお伝えしてきましたが、ご報告したいことがまだまだたくさんありますので、来年にかけて、より具体的にお伝えしていきます。

最後になりますが、上掲のスタッフの集合写真を撮影した際、「子どもたちのために、いつもありがとう」と私から五人に声をかけたところ、「お礼を言うのは私たちだよ。日本の皆さん、バングラデシュの子どもたちへの支援を続けてくださり、本当にありがとうございます」と、センター長のタリクから返ってきました。

今、世界のいたるところで国家間の対立や戦争、尊厳の侵害などが苛烈になり、気が滅入ることも多々あります。しかしこうやって、「子どもたちのために」と志を同じくする世界中の仲間と、感謝と尊敬の気持ちでつながる世界を決してあきらめられません。私もその仲間の一員として努力していきます。どうか私たちKnKといっしょに、ダッカの路上の子どもたちを見守り続けてください。

シャミマと岡田。子どもたちが作ってプレゼントしてくれた折り紙を手に。

シャミマと岡田。子どもたちが作ってプレゼントしてくれた折り紙を手に。

 

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