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ラストチャンス

2014/04/10

2014年春休み友情のレポーターの太田成美です。

最後の取材

3月29日、30日に私は風邪をひいてしまい、その日の取材はキャンセルとなってしまいました。翌日、3月31日に何とか体調が回復して、ザアタリ難民キャンプへ行くことができました。

今日が最後の取材となる難民キャンプ

今日が最後の取材となる難民キャンプ

まず私が向かったのは、遠足のときに特に仲良くなった、ダーリアという13歳の女の子の家でした。彼女とは、もっと話したい、取材したいな、と思っていたので、いいチャンスを恵んでもらったな、と思いました。彼女の家はプレハブ2戸とテントでできていました。プレハブとプレハブの間をテントが屋根としてつないでいるかたちです。入口は布と布をつなぎあわせてできていました。中は決してきれいとは言えませんでした。ほこりっぽかったです。

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2つのプレハブの間にキッチンがあり、そこで取材開始

自分なりに覚悟はできていたけれど、自分は果たしてここでわがままを言わずに暮らすことができるのだろうか、と思いました。ダーリアには家族が大勢いて、女系家族でした。さぞかし狭い思いをして、生活をしているのだろうと思います。まだ赤ちゃんで目が青い弟をダーリアが愛おしそうにやさしく抱いていたのを覚えています。
そしていよいよインタビューが始まりました。この日のためにと一生懸命に用意したメモも今日は見ないで、相手と真正面から向き合おうと思いました。一番印象に残っているのは、ダーリアが、内戦の混乱のなかで殺されてしまったお兄さんのことを話すときの姿です。そのときのダーリアは凛としていて、どんなことにもめげない、しっかりした表情をしていました。これを見て、(この子は将来、きっと心の強い人になるな。)と私は確信しました。ダーリアも私も、一滴も涙をこぼしませんでした。 それから、今会いたい人はいるか、という質問もしました。「友だちや親戚」とダーリアは答えました。私にも大切な友だちがいるように、ダーリアにもシリアで仲の良い友だちがいたのです。その友だちの行方は彼女にもまだ分かりません。ダーリアはお兄さんも亡くしているのに、友だちのことまで心配していて、とても心優しい子なのだと思いました。

ダーリアの言葉をしっかりと受け止めて

ダーリアの言葉をしっかりと受け止めて

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インタビューが一通り終わったら、私が赤ちゃんのときから今に至るまでのアルバムを彼女に見せました。そのときに、自分は小さいとき、とても泣き虫で甘えん坊だったということや、ダーリアと同じように避難することなど、とても自分にはできなかっただろう、ということを打ち明けました。ダーリアにとって日本人の私というのは、あまり近くない存在で、親しみをまだもてていないのではないか、と私は少し思っていました。しかし友だちというのは、自分の弱みを相手にみせることでより深まることもあります。だから私は今回、それを行動に移しました。そしたら今度はダーリアが自分とお兄さんの写真を持ってきてくれて、一枚一枚説明してくれました。お兄さんは昔から銃が好きで、青年になったお兄さんが本物の銃を片手に持っている写真もありました。私は、「この写真をみてどう思った?」とダーリアにきくと、彼女は「悲しかった。」といいました。これを聞いて、私は涙がでそうでした。そうやって話す彼女の顔は明らかに暗かったのに悲しさを我慢しているように見えたからです。取材の最後には、日本で学んだ心のリラックス法という(深呼吸のようなもの)もダーリアに伝授しました。また、私の中学校の友だちの写真もダーリアにわたして「この子たちにダーリアの思いをちゃんと伝えるね。」と約束もしました。

お互いの写真を見せ合いました

お互いの写真を見せ合いました

青い目が美しいダーリアの姪っ子ちゃん

青い目が美しいダーリアの姪っ子ちゃん

その後、一緒に遠足に行ったマラックとウイサムの家にお邪魔することができました。マラックの家では、おもてなしとして紅茶をいれるそうで、私もとても甘くておいしい紅茶を頂きました。マラックもウイサムも最後まで私を見送ってくれました。 今回の取材でわたしは「感謝を伝える」ということを3人にすることができました。目の前の生活が当たり前、家族といるのが当たり前、と思っていた私を変えてくれたのが、さまざまなものを失ってきた難民キャンプの子どもたちだったからです。

ウィサム(左)とダーリア(右)と

ウィサム(左)とダーリア(右)と

マラックのご家族と

マラックのご家族と

ウィサムの家はテントなので前日の強風でつぶれてしまった

ウィサムの家はテントなので前日の強風でつぶれてしまった

取材を終えて

難民キャンプにそびえる  シリアの自由を求める三ツ星の旗

難民キャンプにそびえる
シリアの自由を求める三ツ星の旗

取材を終えた今、自分の中にはさまざまな思いがあふれ出てきていて、正直、ここに書ききれません。でも、自分にやらなければならないことは明確です。それは、「伝えること」。
今回の旅で私は実に多くの人の取材をしてきました。そのなかで、みなさんの切実な思いというのもしっかり受け止めました。最後の日にはダーリアとも約束をしました。私は、難民のみなさんのつらい状況、願い、聞いたこと全てをしっかり、日本の人たちに少しずつ伝えていきます。 そしていつか、今度は平和が戻ったシリアに行き、今回の旅で出会った人たちに会いにゆきます。
私たち友情のレポーターの取材に協力してくださった全ての皆さん、本当にありがとうございました。

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キャンプ内の学校に描かれたシリアの自然をバックに「はい、ポーズ」

◇◆◇ ヨルダンのシリア難民キャンプってどんなところ? ◇◆◇

昨年の友情のレポーターは春休みにカンボジアを取材しました。その際のレポート全文(PDF)はこちらからご覧いただけます。

 

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