パキスタン事業担当の大竹です。
『世界のはしっこ、ちいさな教室』という映画を先日見てきました。
映画の中では三つの「ちいさな教室」が出てきます。
シベリアの雪深い遊牧民のキャンプ。ブルキナファソの電気も水道もない熱帯の村。バングラデシュのモンスーンで1年の半分は水没する農村地帯。
生活するだけでも一苦労の辺境の地で、3人の女性教師が、トナカイで運んだテント、土壁の小屋、船上の教室の中で教壇に立っています。
彼女たちは、三者三様の問題にぶつかりつつも熱意を持ち、工夫をこらしながら教え、時に心が折れながらも、子どもの成長にまた奮起し突き進みます。
ソーシャルライフからも遠ざかった決して生易しくない環境の中でのこの溢れる使命感は何だろう。「子どもには可能性がある」「子どもたちに広い世界を知ってほしい」とあんなギリギリの苦境の中でもチャレンジし続ける、その強さはどこから生まれるのだろう。
見終わった後は、爽快感に次いで、シンプルな問いが頭をもたげ、何だか頭をガツンとやられた感覚さえありました。
一番印象に残ったのは、バングラデシュの船上で教えるタスリマ先生のエピソードです。
子どもや女性の権利を守るために、子ども一人ひとりの家庭事情や人生にもコミットしてひたむきに闘う姿。これが非常にかっこいいのです。
タスリマ先生が、家計を助けるために小学生のヤスミンを結婚させようとする母親と対決するシーンがあります。最終的には母親は納得してヤスミンは進学するのですが、恐らくこの説得までには、映像の中には無いような感情のぶつかり合い、押し問答や罵倒の言葉などの多くの困難があったと思います。
そして、このタスリマ先生のエピソードは、KnKで私が担当するパキスタンの事業地の状況にも重なります。
パキスタンでは、5人に1人(約21%)の女性が18歳未満で結婚。早期結婚の経験のある女性は1,940万人にものぼり、南アジアの中ではバングラデシュに次いで3番目に児童婚が多い国です 。学校に通えない子どもの数が多い上位10カ国にもパキスタンはランクインしています。
映画に出てきた女性教師たちの少しも信念を曲げないあの力強さはどこから来るのか、今あらためて考えています。
これまでに彼女たちが感じてきた、様々な制限やプレッシャーやハードル、奪われたり取り戻したりしてきた自分の意思や選択とその結果の行動が恐らく沢山あったに違いありません。そして、それが彼女たちのパワーにつながっていると、そんなふうに想像しています。
私自身は女性ですが、主役の3人の女性を取り巻いてきた社会を想うと、これまでの物事に対する自分の鈍感さを感じずにはいられません。自分自身がマジョリティー側(特権を持つ側)にいる、まずはその事を自覚しつつ、今週末からのパキスタン出張では現地の女の子たちやスタッフと話をしていきたいなと思っています。
▼『世界のはしっこ、ちいさな教室』公式サイト
https://hashikko-movie.com/