スタッフ日記 認定NPO法人国境なき子どもたちブログ

「私は君たちのお父さん、君たちは私の子どもだ」

アッサラームアレイコム!(こんにちは!)

早いもので、今年ももうすぐ終わりですね。
ここヨルダンにも四季があり、12月に入って寒い日々が続いています。

さて今回は、ヨルダンのザアタリ難民キャンプでKnKの先生として働く、ヨルダン人の先生にお話を伺いました。
ご紹介する先生は、アラビア語の先生として長年勤務されてきた、ベテランの先生です。

マルズーク先生、ストーリーライティング(作文)担当(2015年9月~現在)

マルズーク先生はこれまでたくさんの学校で教鞭を取られてきましたが、なぜKnKの先生としてザアタリキャンプで働こうと思ったのですか?

私はキャンプのあるマフラックという都市に住んでおり、もともとザアタリで活動しているKnKのことは知っていました。KnKは、いわゆる数学や理科などの科目ではなく、シアター(演劇)や音楽といった生徒たち自身が主役となるような教科を提供しており、授業がとても素晴らしく、先生も生徒も楽しく授業を創りあげているということを聞いていました。

私はアラビア語と心理学が専門で、長年アラビア語の先生としても働いてきた経験から、自分もKnKの先生としてこれまでの経験を役立てることができるのではないかと考えました。そして何より、私自身がストーリーライティング(作文)のことが大好きなので、生徒にその楽しさを伝えたくて応募することに決めました。

授業の中ではどのようなことを心がけていますか?

「生徒たちが望んでいるもの、生徒たちに足りないもの」を提供できるように心がけています。私がザアタリで教え始めたのは今から1年ほど前ですから、生徒たちの多くが長いキャンプ生活を送っている最中でした。そうした中で、多くの生徒たちは「学びたい」という意欲を強く持っていました。一方、授業中に私がストーリーを読んでいると、生徒たちがとても楽しそうにしてリラックスしているのがよくわかります。彼らは厳しいキャンプ内での生活で、少しでも心落ち着ける場が必要なのだと感じました。こうして、「学びたい」という生徒たちの意欲に応えられるよう、また、「安心・リラックスできる場所」を提供できるように授業を構成しています。

授業で取り上げるトピックは、①幸せな物語、②コミュニティ内での生活、③信頼です。1点目は、先ほど話したように、幸せな物語を採り上げることで生徒たちがリラックスできるようにしています。2点目は、キャンプの生活でも役に立つよう、時間を守ること・計画を立てること・掃除をすること・相手を信じることを題材に採り上げています。また、生徒が先生や家族にどう接するかといった話を採り上げ、みんなに考えてもらう機会も作っています。3点目は、生徒たちが勇気と希望を持ち、自分を信じて将来への道を進めるようにという願いを込めてこのトピックを挙げています。こうして、授業に参加している生徒たちが、ストーリーライティング(作文)の授業を通じて、さまざまな能力を伸ばせるように工夫しています。

先生ご自身が「ストーリーライティングが大好きだ」とのことですが、その言葉通り、この授業はマルズーク先生の熱意が伝わる時間です。

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授業の中で、生徒の様子はいかがですか?

多くの生徒たちが、積極的に授業へ参加しています。ただ、ときどき集中力が低く、授業になかなか参加したがらない生徒もいます。このため、いつも私は教室に入ってまず生徒たち一人ひとりの様子を見ます。そして、元気で積極的に参加している生徒には、さらにその力を伸ばせるようにサポートをします。あまり積極的でない生徒には、助言をしたりこちらから指名したりして発言の機会をつくります。全員に同じ言葉を語りかけるのではなく、生徒たち個々人が、無理なく自らの力を伸ばせるように個人に合ったサポートしています。

ヨルダン人の先生として、シリア人の生徒たちへどのように接していますか?

生徒との信頼関係が大切だと考えています。新学期1回目の授業で、私はクラスの全員に、「私は君たちのお父さん、君たちは私の子どもだ」という話を必ずしています。たしかに生徒たちはシリア人ですが、授業の中でシリア・ヨルダンなど、国のことは関係ありません。国籍を意識するのではなくて、目の前にいる生徒はみんな自分の子どもだという想いを持って授業をしています。この話をし、この想いを忘れずに授業をしていると、不思議と生徒たちは教師を信頼するのです。先ほど、「授業中に生徒たちがリラックスしている様子がわかる」との話をしましたが、彼らの安心した表情や積極的に授業に取り組む姿を見ていると、本当のわが子のように思えてきて私はとても幸せな気持ちになります。今はおかげさまで、とても雰囲気の良い中で授業ができています。
そして、授業時間はもちろん、自分の授業時間外では積極的に生徒に声かけをするようにしています。自ら生徒に近づいていくことで、生徒も自分のことを理解してくれるのです。

マルズーク先生は、生徒たちを「自分の子ども」だと、しきりにおっしゃっていました。
先生自らの働きかけで、授業が安心できる場所に、そして希望を持てる授業にしていく姿が印象的です。

子どもたちとの信頼を築き、今日も授業は続いています。

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(インターン生)

例えば8,000円あれば、ヨルダンの公立学校に通うシリア難民の子ども1名が
約1ヵ月、KnKの補習授業を受けられます。

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KnKへのご寄付は寄付金控除の対象となり、税制上の優遇措置を受けられます。

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