2015/12/18
報告:プロジェクト・コーディネーター 土岐 三輪、西村 静
バングラデシュの農村にて、子どもたちのための教育センターを運営しています。
KnKは、2007年に起きたサイクロンの緊急支援にて、この地域で、チルドレンセンターを開設し、心理的ケアや子どもの居場所作りを行いました。
バングラデシュの小学校就学率の改善に向けたKnKの挑戦
バングラデシュでは2005年時点での小学校就学率が87%となっており、農村ではさらに多くの子どもが、小学校へ通っていませんでした。学校へ通えない理由として、貧しくて学用品(テキスト、ノート、制服など)が買えない、親の仕事(漁師、弟妹の子守など)を手伝う必要がある、親が学校へ通わなくても良いと思っているという背景がありました。
そこでKnKは2009年から、学校へ行っていない子どもたちを集めて非公式教育(Non Formal Education)を提供してきました。毎年約500人の子どもたちが教育センターで学び、親やコミュニティへの啓発活動を通じて教育の大切さを伝え、多くの子どもは5年生から公立の小学校へ編入し、小学校を卒業することができました。
就学率改善の次は、修了率改善を目指した活動
卒業式を迎える子どもの割合を小学校修了率といい、バングラデシュでは2005年は66%です。農村ではさらに多くの子どもが、小学校に入学しても、徐々に増えていく学用品を買えなくなったり、午後の授業が増えてランチ代を工面できなかったり、親の手伝いが忙しくなるなどして、途中で小学校をドロップアウトしていました。
こういった子どもを減らしていこうと、KnKでは小学校との話し合いを行い、子ども・親やコミュニティへの啓発活動を続け、子どもたちへの放課後の教育サポートを続けるなどして、小学校修了を目指した活動も行ってきました。
バングラデシュ政府も初等教育の普及に力を入れてきており、出生登録による適齢年齢の子どもの把握、テキストの無料配布、貧困層への奨学金の拡充、老朽化した校舎の立て直し、教員の増員、教員への定期的な研修など、様々な施策を展開してきています。
その成果もあり、近年のバングラデシュの小学校就学率は100%、小学校修了率は74%(2011年時点)と上昇し、多くの子どもたちが学校へ行くことができています。
さらなる高みを目指して
私たちが活動する地域でも、小学校へ入学し、無事に卒業を迎える子どもが多くなってきました。
そういった変化を鑑み、KnKは2015年に教育センターで、2016年1月に小学校へ通い始める子どもたちへ向けて、プレプライマリー教育(就学前教育)を提供することになりました。これは小学校へ入る前の子どもたちに、小学校へ入るための準備をしてもらう教育カリキュラムです。バングラデシュ政府もプレプライマリー教育を展開する方向性を掲げているものの、農村までその仕組みが届くには、少し時間がかかります。
そこで、コミュニティの人々や小学校の先生方と相談し、2015年は私たちの教育センターで提供していくことになりました。
現在、5つの教育センターに、合計120人の子どもが参加しています。
通ってくる子どもたちは、5-6才です。
政府が作成しているテキストを用いながら、ベンガル語の文字と数字の読み書き、英語のアルファベットと数字の読み書きを学んでいきます。先生が詩・歌・ダンスなどを教えると、子どもたちは楽しそうに復唱して覚えます。
こういった授業によって、母親がいなくても学校へ通うこと、一人ですわって文字の読み書きをすること、先生の指示を聞いて理解し実行すること、先生の質問に大きな声で答えること、友だちと共に楽しく学ぶこと等を覚えていきます。
子どもをセンターへ送る母親も、日増しに成長していく我が子の変化を、目を細めて見守っています。毎月保護者向けに、教育の大切さ、子どもの権利、児童労働・暴力・早婚による悪影響など学ぶセッションを開催しています。
来年1月の小学校入学を目指して、母親も子どもたちも準備を進めています。
※この活動は、日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。
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