2015/07/10
報告:KnKスタッフ 清水 匡
日本の子どもたちに学校の絵を描かせると多くの子どもたちが「校舎」を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、ここパキスタン北部アージャード・ジャンムー・カシミール/AJK(カシミール地方のパキスタン支配側)の子どもたちにとって学校とは「地面に座って勉強する場所」なのです。
今から10年前、パキスタン北部で大地震が発生し7万人以上の尊い命が犠牲になりました。AJKだけでも2,691校もの学校が倒壊する被害を受けています。被災後しばらくの間は支援機関によりテントが配布され、子どもたちはテント内で勉強をしていましたが、3~4年後にはテントはボロボロとなり屋外で勉強せざるを得なくなりました。
一時的な措置として配布されたテントを未だに使用している学校もある
当時、小学1年生だったカサラットさん(17歳)は、地震の揺れを感じたとき授業を受けていました。校舎は崩れ、彼女は生き埋めになりましたが、奇跡的に命は助かりました。一方、中学校の教員をしているモハンマッド先生は地震で教え子を2人亡くしました。
2014年、KnKはAJKで7校の公立学校を再建しました。マルシ・パイエン小学校もそのうちのひとつです。この小学校は自身で校舎が倒壊しましたが、教育熱心な地域の人々が手作業で仮設学校を造ってくれました。しかし、椅子や机などの資材が足りず、子どもたちは地面で授業を受けざるを得ませんでした。
「生徒が地面にバラバラで座っているので、どうしても集中力が持たず授業が成り立たないことが頻繁にありました。また、季節や天候にも左右されました。夏は暑く冬はとても寒いため、生徒の欠席やドロップアウトも目立ちました。しかし昨年12月、ようやく新しい学校が建てられ、子どもたちが勉強できる環境が整いました」とシャジード先生は語ります。
学校が新しくなって生徒たちの態度も変わりました。これまで授業に集中できなかった子どもたちが椅子に座って授業に臨むことができるようになり、勉強もお互いに教えあったりする姿が見られるようになりました。
5年生のロビアさん(12歳)は将来の夢が持てるようになったと言います。
「私は将来学校の先生になりたいです。先生になってこの学校で子どもたちに勉強を教えたいんです」
KnKは今年さらに7校の学校再建を進めており、来年は新たに6~7校の学校再建を計画しています。学校再建を待ち望む山奥の村人たちは、自分たちでお金を出し合い建設資材が運びやすいように道を作っている地域もあります。
1人でも多くの子どもたちが「学校といえば校舎」を思い浮かべることのできるように、村の大人たちも学校を待ち望んでいます。
※ パキスタンにおける学校建設プロジェクトは、外務省「日本NGO連携無償資金協力」の活用と、日本の皆さまからのご寄付により成り立っています。
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