2015/06/03
報告:KnK専務理事 守谷 季美枝
カンボジアにおける若い女性のエンパワメント
国境なき子どもたちの運営する自立支援施設「若者の家」の敷地内に建てられているもっとも新しい施設では、貧困層の若い女性や人身売買の被害に遭った女性たちが絹織物や縫製の技術を学んでいます。ここで経験を積んだ約30名は、毎月一定の収入が得られるようになってきています。
チャントーンとソバンナリーは、共に極貧家庭に生まれました。ソバンナリーは近所に住み、お姉さんと2人で2009年3月にKnKに来て織物の技術を学ぶようになりました。チャントーンは、もともとおばあさんと2人暮らしでしたが、貧しさゆえに2011年2月から「若者の家」に住みながら、織物を学ぶようになりました。
貧困層の女子は、日本の小学校卒業レベルの教育さえも受けられないケースが多くあります。カンボジアでは男子は優先的に学校に行かせる一方で、女子の教育はあまり重要視されません。女子は親の農作業や子守り、家事の手伝いをしたり、商売をしている家庭では店や食堂で働くなど、日々の仕事に追われて学校にも行く機会を逃してしまいがちです。
したがって事務職やパソコンを使う会社での就職のチャンスは巡ってこないため、年頃の若い女性であっても炎天下の建設現場で汗と埃にまみれながら働く、また季節労働者として不安定な仕事しか得られないという悪循環に陥る場合もあります。隣国、タイの鶏肉工場や工事現場に出稼ぎに行く若者たちも、後を絶ちません。単純労働では技術の蓄積にはならず、また過酷な労働環境の中で身体を壊してしまうなどの弊害が出てくることもあります。
アンコールワットのある町で身に着けた販売、接客のスキル
チャントーンとソバンナリーは、KnKで絹織物を学ぶ中で、2013年12月から2015年3月までの間は、カンボジアが誇る世界遺産アンコールワットのある町シェムリアップに公益財団法人日本国際協力財団が開設したアンテナショップでOJT研修(on the job training)を受けました。お店での接客方法や英会話、パソコンの技術や会計、また社会人としてのマナーなども学ぶ機会を得ました。お店に出て実際に接客するのには、かなりの戸惑いがあったようですが、羞恥心や人見知りなどを克服して、外国人のお客さまにも英語で対応できるようになりました。故郷のバッタンバンを離れた生活の中で一番つらかったことは、家族や友だちに会えなかったこと。楽しかったことを尋ねると、「修了証書を貰ったとき!」ときらきら輝く目で大きな声で返事が返ってきました。
現在はアンテナショップでの経験を活かして、「若者の家」敷地内のショールームで販売やディスプレイ、在庫管理などを担当しています。将来はショールームの経営を任せられるようになることを期待されています。また織物の技術をさらに磨きつつ、小ぶりの織機で織物を織る工程も見せています。ショールームのディスプレイには自分たちの考えとセンスを活かすことができて、とても喜び自信が持てたようです。今後もパソコンのデザインスキルを学び、カタログやパンフレットを作る予定です。彼女たちは、織物と縫製を統括するリーダーとして、30名をまとめる役割を担っています。
この事業を通して、女性たちに技術の習得により安定した収入が得られるようになります。家庭や地域でも尊敬を受けて自信に繋がり、また貧しさから出稼ぎに出る必要がなくなるなど、女性のエンパワメントに繋がっています。
【告知】 事業15周年記念イベント 美しきカンボジア -塀の中の少年たち-
連動企画として、カンボジアの青少年が描いた絵のチャリティオークションも6月30日(火)まで開催しています。ウェブからもご参加いただけます。
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