2013/01/24
2012年12月に、カンボジアで「染め」の技術などを指導してくださった造形作家、中川るなさんの現地レポートを3回に分けてご紹介します。
期間:2012年12月22日(土)~29日(土)
講師:中川るな(造形作家)
アシスタント:大沼文香(2007年友情のレポーターとしてカンボジアを訪問)
*カンボジアにおけるIGAの活動、ならびに今回の専門家派遣は、公益財団法人日本国際協力財団のご支援により実施しています。
はじめに
今回KnKカンボジアが運営する「若者の家」の織物に関わることになり、最初に見せてもらったストールや長い布の数々―どれもしっかりとしてあり、16から25才くらいの若い子たちが織ったとは思えない技術でした。
が、それを全部欲しいかと言えば、正直なところ何か違う。
それは色使いやテクスチャ(肌触り)、あるいはもっと感覚的なものであったり。
この細かい絣を作る手間と時間を思うと「もったいない!!」というのが、この地バッタンバンへ至ることになったきっかけです。
その一方で、「技術」ではない「感覚」を、どの程度わかってもらえるか。
“梅雨のしとしと雨の雨粒に濡れる紫陽花”、“春霞の中で淡く咲くのがピンク”、“冬の日のどんよりした空の色”―自分と異なる世界をどのように受け入れてもらえるか、多くの不安がありました。
ものを作ることは仕事である一方で、生み出す喜びを感じられるはず。
織物であれば、一本の細い糸、綿の小さな種、あるいは一見気持ちの悪い白い虫から吐き出される糸が、様々な色柄の布へ生まれ変わるという不思議なわくわく。
イイモノを一緒に作ろうね、そのお手伝いをしに、バッタンバンへ向かいました。
12月24日(月) : トレーニング1日目
オリエンテーション
◇ 織物の現状と問題点について(織の技術はほぼ問題ないので、色柄など改善の必要あり) ◇ 講習の概要説明(短期間なので、今回は「色」「木綿の染色」「絹の柔軟」にポイントを置く)
色の話
色の仕組みを知り、今まで使ったことのない色、色見本にない色、たくさんの色を使えるようにする。
国や人、気候、環境、年齢など背景により色の好みは変わります。そこに思いをはせ、「使う人」の好みを知り、それに合わせた色を使えるようになろう。
実習(1)
基本的な色の仕組みを説明。色鉛筆やカラーカードを知り、布の色柄を考える手段として使えるようにする。
まずは多くの色を見分ける練習として、色紙から35の色を探し出す、という作業をお願いし、こちらもみんなの作業や、色を見分ける力を確認しました。

色紙には微妙な差があり見分けるのは結構難しい。30色以上が合格としたところ全員合格!何のヒントも出さず始めたが、中には色毎に系統立ててまとめる方法を考える子もおり、「見る目」は確かそう。
![]() 色紙の山の中から35の色を探す。 |
![]() まずは名札から。「スレイ・○○」が何人かいて「姉妹?」と思いきや、日本の「〇〇子」にあたるそう。 |
実習(2)
数種のチェック見本の中から好きな布を選び、色カードからその色を選ぶ。色カードは199色、色鉛筆も60色と色数の多いものをあえて用意しました。というのは、色を混ぜて作り出すことが未知の世界であるならば、目の前にある色が「使える色」であり、色鉛筆が12色であればその中での色使いになるからです。
![]() いつの間にかお隣のミシン室の男の子をつかまえて「チェックシャツモデル」に。お礼は休み時間のおやつ?? |
普段、織物のデザインを決める時は、既成の糸など限られた色から決めていると思われ、とにかく沢山の色に触れてもらうことを目的としました。
実習(3)
織物のデザインを考える手順を知るため、縞柄を選びペーパーデザインに起こす。「頭の中で何となく」ではなく、描くことでデザインの幅を広げ、新しい色柄を生み出す実習。
幅の間隔や繰り返しの部分なども意識し、色鉛筆の中からより近い色を選び、全員が「縞の模写」を完成させました。色を見分ける力も画材を使いこなす力も日本の同じ年代の子らと大差ないと感じました。
![]() 「縞柄なら楽かな?」 |
![]() たまたま見本布の中に一つ入っていた円形の中のチェック柄布を選んだKhena。円は手近にあったセロテープの輪で描き、モノトーンも鉛筆の濃淡でうまくだしています。 |
*カンボジアにおけるIGAの活動、ならびに今回の専門家派遣は、公益財団法人日本国際協力財団のご支援により実施しています。