活動ニュース

寒い季節を迎えるザアタリ難民キャンプ

2013/10/31
報告:シリア難民支援事業 プロジェクト・コーディネーター
小林 由佳

活動背景
シリア難民支援事業をヨルダンで立ち上げてから、春、夏、秋と季節を過ごしてきました。
ザアタリ難民キャンプでのシリア人の生活も季節と同時に変化しています。KnKが3月にキャンプに入った当初、難民は命からがらシリアから逃れ、暖がとれる居住地を求めてザアタリ難民キャンプに集まり、人口は一時20万人にまで増えました。しかし、5月、6月となり砂漠という厳しい環境の中での暑さは容易なものではありませんでした。また、キャンプ内は都市化し、収入が無い者には国連機関の配給だけが頼りです。しかし、配給といっても乾物や缶詰ばかり。野菜や肉はキャンプ内の商店で購入しなければなりません。十分な栄養が摂れない事、暑さでテント暮らしが苦痛になり、余りにも早すぎるシリアへの帰還を余儀なく選択する難民や、親戚や知り合いを頼ってヨルダンの街へ出て行く人も多くなりました。7~8月のラマダンでは、厳しい生活から生き抜く為に断食をする人は少なかったと聞きました。イスラム教徒にとってラマダンは非常に神聖であり、ラマダンを迎える事に喜びを隠せない人が多くいる中、難民キャンプ内はひっそりと暑さに耐えながら一日一日を生活している人たちが印象的でした。秋になった今、人口はピーク時の6割程度の12万人で落ち着いています。
これからザアタリ難民キャンプは厳しい寒さと雨・雪の季節を迎えます。

第一期完了
ジャパン・プラットフォーム(JPF)からの助成により今年3月にヨルダンでシリア難民支援事業を開始しました。

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スタッフ・講師の採用、学校との時間割調整、ヨルダン教育省との本事業協定覚書締結。さまざまな準備を経て、5月6日より正式に学校での授業を開始しました。KnKの活動は他の団体には例を見ない内容で、学校のカリキュラムの一つとして授業を担当しています。今期は音楽、ストーリーライティング、演劇の授業及び美術と体育の授業を運営し、道具や機材の提供をしました。 
活動当初は子どもたちが我々の授業に興味を持つというよりも、講師を困らせようとクラス内で喧嘩をしたり、授業中に教室を歩き回ったりと講師に対する嫌がらせが目立ちました。生徒一人一人と向き合い、何が問題だったのか、何に不満を感じたのか、どうしたらクラスメイトと仲良くできるのか、じっくり講師が話を聞き対応しました。スタッフと講師は何度もミーティングを重ね、いかなる時でも子どもに正面から接し、彼らに対する敬意の念を忘れないよう話し合ってきました。1ヵ月経った6月時点では授業中歩き回る子どもは減り、講師の話を真剣に聞いている子どもの姿がありました。 
7月上旬、中学校の試験期間中は小学校での活動も行いました。年齢の低い小学生は中学生よりも授業への反応は明確で生き生きと楽しんでいる様子が印象的でした。

音楽の授業が一番人気

音楽の授業が一番人気

ギターを手にして満足

ギターを手にして満足

サッカーの授業は男子に大人気!

サッカーの授業は男子に大人気!

バレーボールは難しいかな!?

バレーボールは難しいかな!?

夏休み中は、子どもの余暇を犯罪や喧嘩に使わない為にユニセフ及び学校内の生徒・シリア人教師を統括するシリア人委員会と協議のうえ学校を開校し、当団体も活動を行いました。毎日、一日あたり男女共に2クラスを対象として、2コマずつ授業を提供しました。通常は、ヨルダンの公式教育では、男子には美術の授業がないのですが、男子生徒からの強いリクエストで夏休みの間だけ彼らにも美術の授業を行いました。普段の授業では生徒数が多く全員には提供できていない刺繍セットや毛糸、絵具などに夏休み中はできるだけ多く触れてもらいました。
9月1日より新学期が始まりましたが、ユニセフからの学校用具・教科書の配布日に生徒が殺到したり、学校内でデモが起こったり、活動を円滑に行うことができない日々が続きましたが、10月に入りやっと落ち着いてきました。子どももKnKの活動を授業の一環として楽しみに教室で待っています。5月から10月初旬までの期間、KnKは男女合わせ述べ16,176名に授業を提供することができました。

プレイグラウンド 
5月にユニセフより校庭整備の依頼を受け、ユニセフと同意書を結んだ上で資金を協力してスクール1、2、3における校庭整備を行いました。当初は小石や握りこぶし程の石が学校の敷地内に広がり、子どもが安全に走り回れる状況ではなく、体育の授業でも足が痛いからとサッカーに参加しないで座って授業を見学している子どもの姿が目立ちました。6月下旬より建設工事を始め、9月の新学期が始まるまでにサッカーゴール、バレーボールのネットが設置されている「プレイグランド」を完成させました。暑さが落ち着いて来た今、体育や演劇の授業で、やっとプレイグランドが活用され始めています。 

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第二期開始 
10月8日、JPF助成により本事業第二期を開始しました。第一期は情操教育により学校教育を充実させ、学校において子どものフラストレーションを健全に発散させることを目的としていましたが、活動を進めるうちに生徒のドロップアウトや未就学などシリア難民の子どもたちが教育を受けていない状況が課題として浮き彫りになってきました。ザアタリ難民キャンプ内に4.3万人もの就学対象の子どもがいるにも関わらず、学校への登録数は2万人程度。実際に出席している生徒はその1割(約2000人)と非常に少なく、そのうちKnKが活動を行うスクール1の中学校に通っているのは860名程度でした。子どもが当然受けるべき教育の権利が享受されていない危機的な状況にありました。KnKは、シリア難民の子どもたちのの継続した通学及び就学を促すため、学校教育の充実化を引き続き支援していきます。 また、同スクール1での小学校にておいては、美術や体育の材料・資機材を提供し、小学校における情操教育の充実化を図ります。 長引くキャンプ生活で、ストレスを抱える子どもたちと接する事による教員のストレスマネジメントも新たな課題として浮上してきています。子どもたち、講師が共に健全に授業に取り組めるよう活動を進めていきます。 

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シリア難民を取りまく状況は改善の兆しが見えず、支援は長期化の傾向にあります。子どもたちの避難生活によるストレスを少しでも軽減し、子どもたちが安心して学ぶことのできるよう、KnKはこれからも支援活動に力を入れていきます。
今後とも、皆さまの温かいご支援をよろしくお願い申し上げます。

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講師、アシスタント講師、スタッフで第一期を無事に終える事ができました。

 

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