マルハバ!(こんにちは!)
厳しい寒さが続くザアタリキャンプ。キャンプが開いてから5度目の冬となりました。冬の間は気温が下がって冷え込むだけでなく、時折雨や雪が降ることもあります。キャンプの中は舗装されていない道路が多いうえ、排水溝などがきちんと整備されていないこともあり、雨上がりは水たまりが多く残り、道はいたるところがぬかるんでいます。キャンプで生活する生徒からは「家から学校までの往復や近くのお店に買い物に行くとき、足元が泥だらけになってしまい一苦労だ」との話も聞きました。また、昼間はキャンプに電気が通っていないため、曇りや雨の日には電気のつかない教室の中はたちまち暗くなってしまいます。
そんな厳しい環境の中、子どもたちが普段KnKの授業で学んでいる演劇(シアター)・作文(ストーリーライティング)・音楽の成果を発表する、「パフォーマンスデー」が開催されました。ホストコミュニティ(アンマン)の学校で開催したオープンデーのようなもので、当日は学校に通う子どもたちや保護者・家族の方々など、会場は多くの来場者であふれました。KnKは現在、ザアタリキャンプ内の2つの学校で授業を行っていますが、そのうちの1校は屋外で、もう1校は室内でパフォーマンスデーが実施されました。
●演劇(シアター)の様子
どちらの学校でも動物のパペットを使った劇が披露されました。この日のためにしっかり練習をして挑んだ子どもたち。本番は、気持ちを込めてセリフを読み上げていくだけでなく、パペットの細かい動きまで見事に演じています。普段の演劇の授業では、パペットを使うときにはこのパペット役を、役を演じるときには演者を希望する子どもたちがたくさんおり、誰もが好きな時間です。クラスの友だちが演じる姿に、みんな興味津々の様子で観ていました。
●作文(ストーリーライティング)の様子
普段の授業で使っている教材を読み上げたり、生徒同士、授業で習ったメッセージを伝えあったりしています。ただ物語を読み上げるのではなく、抑揚をつけたり、表情も変えたりしながら文章に込められた想いを表現していきます。また、当日は司会として活躍する生徒の姿もありました。きちんと原稿を用意して、当日のパフォーマンスデーの進行に大きな貢献をしていました。
●音楽
元気よく歌を歌う子どもたち。先生たちが歌に合わせてキーボードやカーヌーン(アラブの伝統的な撥音楽器)の伴奏をする一方、ギターやダラブッカ(アラブの伝統的な太鼓)の演奏は生徒たちが担当しています。また、右側の写真では、伴奏もすべて生徒がしています。練習は授業の中という限られた時間でしたが、歌も演奏も堂々と披露していました。シリアでなじみのある歌を歌い上げ、その歌声に合わせて歌ったり笑みをこぼしたりする保護者や家族の姿も見られました。
また、室内で開催された学校の会場の後方には、ストーリーライティングの時間に子どもたちが創作した本などの作品が飾られていました。
本の創作はアラビア語の表現の練習にもなり、自分を表現できる大切な機会となっています。
文章とともに丁寧な挿絵も描かれていました。
最後に、「私たちの希望」というテーマに関する出し物が披露されました。
「私たちはシリアの地に、ある苗を植えました。今は私たちのもとを離れていますが、その苗は時が経つにつれて成長し、茎が伸び、葉をつけ、きっと花を咲かせていることでしょう。それは、私たちの希望と同じです。私たちはこれからも成長を続け、花を咲かせるのです。私たちはこの地に、希望の苗を植えます」
この力強い宣言のあと、代表の生徒が中央の花壇に苗を植えていきました。そして、シリアでも特に親しまれている故郷を想った歌「モンテニー」が歌われ、大きな拍手のもと幕を閉じました。しんと静まり返った会場に「モンテニー」の歌声が響き渡り、歌いながら感極まってしまう生徒たちもいるほど、気持ちの入った素晴らしい発表となりました。こうした時間は彼らにとって、それほど大切な時間なのだと実感します。
キャンプという厳しい環境の中でも希望を捨てず、未来の自分に想いを馳せる子どもたち。
彼らの歩みはこれからも続きます。
(インターン生)